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11 ☆(少し)

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___リーンゴーン…___

交代の時間の鐘が鳴る。
何杯お酒を飲んだだろう…気付けば僕の周りにはテーブルに突っ伏して寝ている者が続出していた。

「おおおおぃっ!おまへわぁ~なんれそんなに強いんらよ~っ!」

あ、よく見たらニールじゃん。

___パタパタパタ…___

「ニール、そろそろ交代…っっ⁉︎何事だよこれっ!交代の時間なのに、ニール使いものになんないじゃんっ!」

「僕が勧めたわけじゃないよ。」

「もうっ、ここにいる第2騎士団の子達も交代なのに。怒られちゃうよ。」

「……あ~…その…ゴメン?」

「聞いてどうするんだよっ。フィルは強いんだから、勝負掛けられても相手しちゃダメって言われてたでしょ?」

「…そういや……」

言われてた。

ニールの代わりに警護に駆り出されるのかと思った時…

___ワァッ‼︎___


入り口付近で歓声が起きた。
ゆっくりと人だかりの道が開き、現れたのは……

「アラン。」

「ご機嫌よう、お坊ちゃま。」

「お坊ちゃま言うな。」

周りは伝説の第1騎士団団長のアランにテンションが上がり…更に。

「フィリップ様、お久し振りでございます。」

横にいる人は、アランと同じ時期に所属していた第1騎士団の伝説の副団長…アランが退団して団長になったが家の事情で退団した。
話には聞いているが、とても穏やかなのに戦場では豹変して鬼神の様な戦い振りだったという。
幼い頃に数回しか会ったことが無かったけど、そのことをよく覚えている。
とても綺麗で穏やかな微笑みは今も健在だった。

「クリス様、どうしてこちらに…」

クリストファー・レイノルズ様。
「クリスと呼んでね。」と言われて「クリス様。」と、言うと凄く嬉しそうに返事をしてくれた。
結婚せず、子どもがいないからととても可愛がってくれたのを覚えている。

「聖女に招待さたんですよ。入り口で偶然アランとも再開致しまして…」

「えぇ…久し振りにお会い出来ましたが…相変わらずお変わりなく…」

「フッ…そっちだって…」

見た事もないアランが優しい微笑みをクリス様に向ける。

……成程…そう言う事か。

今回ハナ様は物語のカップリング…?…の人間や獣人と会いたいと話していた。
恋人同士になる確率が高い人達の雰囲気を見るのも勉強だとハナ様が言っていたけど…
アランのヤツ、クリス様が屋敷に来ても普通に話してたよ?
全く気付かなかった。

「またたくさん酔わせましたねぇ…一番酔わせないといけない人は全く酔わせられないのに……ハァ…しかも、警護に必要な人間まで。」

「最初のは納得いかないけど、最後のは…反省してる。」

「まぁまぁ、良いんじゃないですか。フィルくんに勝負を挑むのが間違えてるんだから。あ、俺達この要員で呼ばれたんじゃない?」

「要員?」

「フフッ、アランは大怪我してもまだまだ強いでしょ?俺達年寄りでも警護の真似事くらいはまだまだ出来ますよね。」

「まぁ…この規模なら。」

「では、フィル様。くれぐれも被害者を増やさないよう、ジュースでも飲んで落ち着いて下さいね。」

「今度、俺とも一緒に飲んで飲んで下さいね。行こうか、アラン。」

「あぁ、クリス。」

この規模と言ってもそこそこな広さはあるが、この伝説の2人にかかればどうって事ないんだろう。
そう言うと2人は嬉しそうに上着を見習いの騎士へと預け、剣を貰って部屋を出ていった。

「さて…俺は別室に控えている見習いを何人か連れてくるから、君はクリス様の言う通りジュースな。」

ダニーは何人かの見習いに声を掛け、酔い潰れた人の介抱を始めた。
僕は何となく居づらくなってしまったので、そのまま壁際へと移動する。

……あ。

壁際で気付いたのは重いカーテンの後ろはバルコニー。
周りは酔い潰れた人の介抱で癒しを得意とする魔術師もバタバタしているし、伝説の団長2人が警備に行ったから彼らを尊敬している騎士は一緒に付いて行った。
あとは警備から戻って気が緩んで食事に夢中になっている。
スルリとカーテンの中へ潜り込んで杖を取り出し開錠の魔法を掛けてみた。

「…アベルト。」

___ポゥ___

___カチャ___

息を整えて呪文を掛けるとアッサリ開錠した。

本当だ、ハナ様が言った通りだ。
バルコニーへの扉が開き、僕は心地良い風が吹くバルコニーへと移動した。
遠くを見るとアランとクリス様に付いて行ってるだろう騎士たちの声がする。
ガヤガヤと移動したらあんまり警備の意味が無い気がするんだけど。
空を見上げると星が瞬き月も綺麗だ……あぁ、ユーリと見たかったなぁ…

___カタッ___

「こぉらぁ~、なぁにやってんだぁ~。」

「…っ…ユーリ⁉︎」

フラフラとバルコニーにやってきたユーリはシャンパンを片手に僕の前に現れた。

「ふぃるぅ~、ダメだぞぉ。バルコニーへのとびらはぁ~開けちゃ……メッ…なんだぞぉっ。」

___ズキュンッ!___

何っ、この可愛いユーリッ!
可愛く頬を染めてユーリの指先が僕の鼻先をつついた。

「ユーリ、酔ってるでしょ?」

「ん~、だぁって…これぇ美味しいしさぁ…明日は非番だからぁ…飲んじゃった♡」

「飲んじゃったじゃないでしょ?もうっ、僕と一緒じゃない時は飲みすぎないようにねっ。」

「だからぁ~。」

手摺りにグラスを置いたかと思うと、スルリとユーリの熱い手が僕の頬に触れた。

「だからぁ、仲間と飲んでてちょぉっと酔ったから、お前んとこに来たんじゃんっ。フィル、こっそりカーテンに隠れるんだもんなぁ。フフッ、ちびっ子のまんまだ。かくれんぼかぁ?」

「ユーリッ。」

__ギュッ!___

「んっ。」

思わず抱き締めてしまった時に、ユーリの声が漏れる。
どうしよう…このまま…

「ユーリィ~どこだぁ~、勝負ついてねぇぞぉぉ~!」

「あ、呼んでる。おぉ、ここ……んぅっ…」

会場からユーリを探す声がし、それに応えるユーリの口を塞ぐ。
思わずキスをしてしまったけど…ユーリの唇はすごく柔らかくてもっと欲しくなった。

「どこだぁ~……えっ、あっちで見た?ありがとなぁ。」

ユーリを探す声が遠くへ行く。
でも、僕はユーリの唇から離れる事は出来ない。

「……んっ…ぅ…ぁ…フィ……んんぅ…」

確か…ハナ様の絵では…こう…
舌先を唇でなぞり、ユーリの唇が薄く開いた所に自分の舌を入れてみた。
でも、あれ?
……ハナ様から聞いていた話とちょっと違う……いやいや、今はそんな事よりこっちに集中!
えっと…舌は入れたは良いけど…
ヌルリと絡む舌はこんなに甘くて柔らかいものなんだ。

「…んっ……んん~…?…もっ…負けな……んっ!」

「…っ⁉︎」

負け…と、ユーリから聞こえた途端、舌先が僕の口内を蠢き出した。

「…んっ…ひゃっ……んんっ…やっ…ユー……んぅ……ぁんっ。」

歯の裏や舌先を絡められ、口の端から唾液が流れる。
僕がリードすべきなんだろうけど、経験値の差であっという間に形成逆転となった。

「……プッハァッ!どぉぉぉだっ、参ったかぁ♪」

「…ハァ…ハァ……参り…ました…」

「じゃぁ、向こうに戻るぞぉっ!」

「え?」

ユーリに引っ張られて会場へと戻り、先程ユーリを探していた騎士と何故か飲み比べをさせられ、勝って振り向いた時にはユーリは他に潰れた騎士と一緒に眠っていた。
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