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いつまで経っても僕が来ないからと第1騎士団の人がわざわざ探しに魔術師の研究室へ迎えが来たとかで、その時に居合わせたハナ様が力を発動し鼻息荒く『迎えに行く!』と言い出したので『あ、そういえば王様への報告が』と、引きずりながらもニールにこの茂みに行けと言ったらしい。
「シィー…ごめん、ケイリー様は今ハナ様が行ってるんでしょ?それなら迎えに行ったついでに、僕は改めて謁見に伺うって言ってくれるかな?」
「んなもん出来る訳がないだろっ。元々フィルの方が先に謁見だったんだろ?」
「……ん…ぁ…っっ…あぁっ!ゴメンッ、俺っ!」
___ガバッ!___
「起きた?」
残念、もっと撫でていたかったのに。
「あ~…俺、かなり寝てた?」
「ううん、でも目の下の隈は少し取れたかな。」
指先で欠伸で少し溢れた目の端に浮かぶ涙を拭う。
耳がピコピコして可愛いな。
「凄いなぁ…ユーリさん。」
「ん?」
「こんな時もカッコいいんですね。」
「そうか?」
「少し眠そうな、気怠い姿って…そりゃモテ…」
___ヒュォォォ…___
「……?…急に風が…」
「………」
「何で?俺、思った事言っただけ…って…ハイッ、黙りますっっ!フィル、ハナ様が謁見の後に来て欲しいって。ユーリさんは団長がお呼びっす。」
「分かった。じゃあ、俺行くよ。フィル、王にお咎めを受けそうならすぐに言ってくれよ?」
「大丈夫だよ、気にしないで。もしお咎め受けるならニールのせいにするから。」
「酷すぎるっ!」
僕はユーリを見送り、ニールと一緒にケイリー様に報告しに行き「調べ物で時間が掛かった」と話すとすんなり納得してくれた。
バッテリーに関しては、ハナ様はスマホに差し込む紐が必要と言っていたけど、小さな石板に魔法陣を描きその上にスマホを置けばエネルギーを充填出来るような作りにする事を報告。
スマホの仕組みはまだまだ研究が必要だが、魔法陣はいくつか検証する必要があるが完成は間もなくだろう。
ニールは引き続きハナ様の報告があるとかで緊張しながらもそのまま残ったので、僕だけ退出の挨拶をして研究室に戻るとハナ様が鼻息荒く待っていた。
「お帰り。」
「お帰り!さっ、報告してちょうだいっ!」
「……何を?」
あ、敬語忘れちゃった。
「決まってるでしょ!貴方とユーリよっ!イベントあったでしょ⁉︎」
「イベント……あ。」
「ユーリを茂みに連れてったんでしょ?で、キスしたのっ?」
「腐女子の人って凄いよね。こういうのも分かるなんて。」
確かに。
腐女子の力…?腐女子って感が鋭いんだなぁ。
ダニーの話じゃ天啓が降りてきたみたいな雰囲気だったらしいけど。
あ、でもゲームの世界って言ってたよね。
「それが、急に頭の中にふっと降りてきて…イベントの内容とタイトルが鮮明に分かるのよ。でもゲームでは全くない事ばっかりなのよね…って、そんな事はどうでも良いのよっ!結局どうなったの?」
「………いや…」
「いや?」
「……耳が…その……可愛くて……っっ…撫でてました…」
「出来なかったんだ。」
___ゴオッッ!___
「あ゛だだだだっ!」
「痛たたたっ!…で…ハナ様っ、何度も言うけど…アンタ…聖女なんだからねっ!」
聖女にアンタとかって…
冷静になったら吹雪いていたのが落ち着いた。
「茂みに連れてったんでしょ?寝かせたんでしょっ?そこはブチュッと、一発かましなさいよぉっっ!」
「ブチュッ、てっ…」
「ハァ…何故か分からないけど、今回もラブイベントよ。ユーリを膝枕して寝かせたんでしょ?」
___ボンッ!___
「何故それを⁉︎」
___ビョオオオオッッ!___
「い゛だだだだだっ!」
「痛い痛い痛いっ、これ…前にやった…少しは学習しなよっ!」
恥かしくて部屋中に吹雪きが吹き荒れる。
あ…王宮に提出用の書類が…そう思った途端、吹雪はピタリと止んだ。
「ん~…っ、レパロ!」
___パッ!___
今回はハナ様が復元の呪文を唱えると一気に荒れた部屋が少しだけ元に戻った。
「惜しい。」
「見てなさいっ、次は完璧にするから。」
「次があっちゃ困るんだよ、ハナ様。他の修復で練習しましょうね。フィル、直して。」
ダニーに言われて呪文を唱え一気に部屋が元に戻る。
僕達は片付いた椅子に座り直す。
「相変わらず凄い魔力よね………ハッ…じゃないっ!えっ、結局撫でくり回してただけなの?」
「撫で……」
「……やっぱり受コースまっしぐらね…」
「えぇ⁉︎」
「だよねぇ。」
ダニーも何で頷いてるのかな?
「今回のイベントは多分『膝枕』よっ。こんなにイベントがあるなんて、ストーリーが変わってるのかしら?あ、そんな事よりユーリの傷痕とか…爆睡してたら触り放題じゃないっ。」
「触り放題って…この前も言ってましたよね。」
「確かに、誰もいなかったんでしょ?こっそりキスとか出来たよね。」
この2人言いたい放題だよね。
「…っ…じゃぁ、ダニーはどうだったんだよっ!」
「僕?…僕は…」
___キラッ!___
「どうだったのっ‼︎」
「ハナ様…近い。」
僕ばっかり言われて、よくよく考えたらダニーだってニールを攻略する立場なんでしょ?
僕より進んでないんだったら笑ってやる。
「キスしたの?」
「したよ。」
「え?」
「え♡」
「あの茂み…俺が副団長の仕事と聖女護衛の仕事が立て込んでる時にニールに無理矢理連れられて来たんだよ。その時に膝枕されて…寝惚けた振りして告白して…」
「キスしたんだ。」
「うん。その先は…秘密♡」
「いやぁぁぁあん♡」
___ブシュッ___
「あ、ハナ様。鼻血。」
慣れた手つきでハナ様の鼻にハンカチを当てるとみるみる鮮血に染まる。
「今日は貧血に良い食事をお願いしましょうね~。あ、そんなに首降ったら血が溢れる。」
ブンブンと幸せそうに頷くハナ様。
「フィル、確か…告白…は、したんだよね?」
「うん…でも、返事はまだもらってない。」
「ユーリさんが忙しかったのは分かるけど、うやむやにしたくなかったら早く聞いた方が良いと思うよ。」
確かに…
あの後ニールに呼ばれて行ってしまい、僕も王様への報告やらでお互い話が出来なかった。
もうすぐ夏の休暇が始まる。
ユーリに休みを一緒に取ろうとお願いしてどこかへ出掛けてみようかな。
「ウフフ…夏のイベントはねぇ…盛りだくさんよっ。頑張ってね、フィル!」
……スマホ…返すのが遅くなりそうな予感がした。
「シィー…ごめん、ケイリー様は今ハナ様が行ってるんでしょ?それなら迎えに行ったついでに、僕は改めて謁見に伺うって言ってくれるかな?」
「んなもん出来る訳がないだろっ。元々フィルの方が先に謁見だったんだろ?」
「……ん…ぁ…っっ…あぁっ!ゴメンッ、俺っ!」
___ガバッ!___
「起きた?」
残念、もっと撫でていたかったのに。
「あ~…俺、かなり寝てた?」
「ううん、でも目の下の隈は少し取れたかな。」
指先で欠伸で少し溢れた目の端に浮かぶ涙を拭う。
耳がピコピコして可愛いな。
「凄いなぁ…ユーリさん。」
「ん?」
「こんな時もカッコいいんですね。」
「そうか?」
「少し眠そうな、気怠い姿って…そりゃモテ…」
___ヒュォォォ…___
「……?…急に風が…」
「………」
「何で?俺、思った事言っただけ…って…ハイッ、黙りますっっ!フィル、ハナ様が謁見の後に来て欲しいって。ユーリさんは団長がお呼びっす。」
「分かった。じゃあ、俺行くよ。フィル、王にお咎めを受けそうならすぐに言ってくれよ?」
「大丈夫だよ、気にしないで。もしお咎め受けるならニールのせいにするから。」
「酷すぎるっ!」
僕はユーリを見送り、ニールと一緒にケイリー様に報告しに行き「調べ物で時間が掛かった」と話すとすんなり納得してくれた。
バッテリーに関しては、ハナ様はスマホに差し込む紐が必要と言っていたけど、小さな石板に魔法陣を描きその上にスマホを置けばエネルギーを充填出来るような作りにする事を報告。
スマホの仕組みはまだまだ研究が必要だが、魔法陣はいくつか検証する必要があるが完成は間もなくだろう。
ニールは引き続きハナ様の報告があるとかで緊張しながらもそのまま残ったので、僕だけ退出の挨拶をして研究室に戻るとハナ様が鼻息荒く待っていた。
「お帰り。」
「お帰り!さっ、報告してちょうだいっ!」
「……何を?」
あ、敬語忘れちゃった。
「決まってるでしょ!貴方とユーリよっ!イベントあったでしょ⁉︎」
「イベント……あ。」
「ユーリを茂みに連れてったんでしょ?で、キスしたのっ?」
「腐女子の人って凄いよね。こういうのも分かるなんて。」
確かに。
腐女子の力…?腐女子って感が鋭いんだなぁ。
ダニーの話じゃ天啓が降りてきたみたいな雰囲気だったらしいけど。
あ、でもゲームの世界って言ってたよね。
「それが、急に頭の中にふっと降りてきて…イベントの内容とタイトルが鮮明に分かるのよ。でもゲームでは全くない事ばっかりなのよね…って、そんな事はどうでも良いのよっ!結局どうなったの?」
「………いや…」
「いや?」
「……耳が…その……可愛くて……っっ…撫でてました…」
「出来なかったんだ。」
___ゴオッッ!___
「あ゛だだだだっ!」
「痛たたたっ!…で…ハナ様っ、何度も言うけど…アンタ…聖女なんだからねっ!」
聖女にアンタとかって…
冷静になったら吹雪いていたのが落ち着いた。
「茂みに連れてったんでしょ?寝かせたんでしょっ?そこはブチュッと、一発かましなさいよぉっっ!」
「ブチュッ、てっ…」
「ハァ…何故か分からないけど、今回もラブイベントよ。ユーリを膝枕して寝かせたんでしょ?」
___ボンッ!___
「何故それを⁉︎」
___ビョオオオオッッ!___
「い゛だだだだだっ!」
「痛い痛い痛いっ、これ…前にやった…少しは学習しなよっ!」
恥かしくて部屋中に吹雪きが吹き荒れる。
あ…王宮に提出用の書類が…そう思った途端、吹雪はピタリと止んだ。
「ん~…っ、レパロ!」
___パッ!___
今回はハナ様が復元の呪文を唱えると一気に荒れた部屋が少しだけ元に戻った。
「惜しい。」
「見てなさいっ、次は完璧にするから。」
「次があっちゃ困るんだよ、ハナ様。他の修復で練習しましょうね。フィル、直して。」
ダニーに言われて呪文を唱え一気に部屋が元に戻る。
僕達は片付いた椅子に座り直す。
「相変わらず凄い魔力よね………ハッ…じゃないっ!えっ、結局撫でくり回してただけなの?」
「撫で……」
「……やっぱり受コースまっしぐらね…」
「えぇ⁉︎」
「だよねぇ。」
ダニーも何で頷いてるのかな?
「今回のイベントは多分『膝枕』よっ。こんなにイベントがあるなんて、ストーリーが変わってるのかしら?あ、そんな事よりユーリの傷痕とか…爆睡してたら触り放題じゃないっ。」
「触り放題って…この前も言ってましたよね。」
「確かに、誰もいなかったんでしょ?こっそりキスとか出来たよね。」
この2人言いたい放題だよね。
「…っ…じゃぁ、ダニーはどうだったんだよっ!」
「僕?…僕は…」
___キラッ!___
「どうだったのっ‼︎」
「ハナ様…近い。」
僕ばっかり言われて、よくよく考えたらダニーだってニールを攻略する立場なんでしょ?
僕より進んでないんだったら笑ってやる。
「キスしたの?」
「したよ。」
「え?」
「え♡」
「あの茂み…俺が副団長の仕事と聖女護衛の仕事が立て込んでる時にニールに無理矢理連れられて来たんだよ。その時に膝枕されて…寝惚けた振りして告白して…」
「キスしたんだ。」
「うん。その先は…秘密♡」
「いやぁぁぁあん♡」
___ブシュッ___
「あ、ハナ様。鼻血。」
慣れた手つきでハナ様の鼻にハンカチを当てるとみるみる鮮血に染まる。
「今日は貧血に良い食事をお願いしましょうね~。あ、そんなに首降ったら血が溢れる。」
ブンブンと幸せそうに頷くハナ様。
「フィル、確か…告白…は、したんだよね?」
「うん…でも、返事はまだもらってない。」
「ユーリさんが忙しかったのは分かるけど、うやむやにしたくなかったら早く聞いた方が良いと思うよ。」
確かに…
あの後ニールに呼ばれて行ってしまい、僕も王様への報告やらでお互い話が出来なかった。
もうすぐ夏の休暇が始まる。
ユーリに休みを一緒に取ろうとお願いしてどこかへ出掛けてみようかな。
「ウフフ…夏のイベントはねぇ…盛りだくさんよっ。頑張ってね、フィル!」
……スマホ…返すのが遅くなりそうな予感がした。
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