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ある日、ハナ様からバッテリーを作ってくれているお礼に…と、お茶会に誘われた。
ダニーやニールは先にお礼はしたとのことで、今回は2人でお茶会らしい。

「ありがとう、用事があれば呼びますので2人にして下さい。」

「かしこまりました。」

王宮にある小さな湖のそばにセッティングされたテーブルセットにお茶とお菓子が置かれて、本来お世話を侍女がそばにいるものだけど、自分で出来るからとハナ様は侍女を下がらせた。

「フィルさん、今回お礼としてお呼びしましたが近々初回イベントが発生します。」

「初回イベント?突然ですね…えっと、ハナ様のお披露目パーティのこと?」

「そう。聖女…あ、私か。その私のパーティの時に偶然空いていた窓からバルコニーにユーたんを連れてってキス出来るイベントがあるの。」

「バルコニーへ続く窓って当日は全面鍵が掛かってるはずじゃ…」

「フッフッ…それがねぇ…フィルフィルが解錠の魔法をかけちゃうの♡」

「いやいや…僕、解錠魔法って知識はあるけど使った事ないよ。」

10年前のこともあり、癒しの魔法や攻撃魔法は使えるようにはなってるけど…開錠ねぇ…

「物語ではフィルフィルが珍しく酔っちゃってね、無性に風に当たりたくなってこっそり人の目を盗んで魔法をかけちゃうの。そこに警備を終えたユーたんが気付いて一緒にバルコニーに出ちゃうのよ。」

確か当日は交代制でユーリは前半の警備だったよな…じゃぁ、後半ってことか…

「誰にも気付かれずにこのイベントは発生するみたいなんだけど…」

まぁ、全ての騎士団が交代制で強固の守りを固めているし、余程はめを外さないと大丈夫か。

「内容は…っ……んんっ。」

「ハナ様?」

急にハナ様の口が閉じて口をパクパクしている。

「ハナ様っ、大丈夫ですか⁈」

「…ぁ…だから…んん~っ…もうっ、何なのよっ。」

どうやら内容を話そうとすると思うように話せなくなっているらしい。

「僕に詳細を言えないようになってるんでしょうね。分かりました。頑張ってみます。」

当日はハナ様の披露パーティで専属のニールとダニーはハナ様のそばにいる。
僕のバッテリーを作っていることは公にされていないから第1魔法師団として参加しているからどちらにせよ話すことは出来ない。
今回は初回イベントという事ならまだまだ先のイベントもあるんだろうし、酔ってしまっても眠くなるくらいだからバルコニーでユーリと一緒に星を眺めて早々に寮に戻ろうかな。

「プハッ…こっそり覗けたら覗きに…」

___ヒュォ…___

「ハイッ!ご報告お待ちしております‼︎」

ニールがハナ様への扱いがぞんざいになってた気がするけど…僕も大概そうだと思う。



*********************************



___披露パーティ当日___


たくさんの来賓客、その中にハナ様が会いたいと言われて参加している騎士団・魔法師団の団員もチラホラ…
警備や仕事の合間に参加している。

「オッ…フゥゥ……鼻血吹きそ…」

「吹かないで下さい。」

「大丈夫っす!今日はこの通り、ハンカチ大量にご用意しております‼︎」

トランプの手品でも始めるのかと間違えそうな程、手入れが施されたパリッとしたハンカチがニールの指の間から綺麗に顔を出した。

「いざという時のために…」

パチンッ!

「こちらにっ。」

第1騎士団の見習いの子が大量のハンカチが入ったバスケットを片手に持っていた。

見習いの団員と正式な団員の違いはマントだ。
見習いの団員は短く、正式な団員は少し長い。

「フィリップ様っ、お初にお目に掛かりますっ!私は第1騎士団見習いのリッキー・ネザーウッドと申します!この度は聖女ハナ様から何故かご指名を賜り…」

真っ赤になりながら僕に挨拶をしているこの子…どっかで見た事があるなぁ…

「フィルの学園の後輩君だよ。」

「…あ、そういえば…」

学園にいた頃、飼育されたドラゴンの騎乗の見本を見せて欲しいと先生に頼まれて授業で見せた事があったっけ。
その時に先生と2つのチームに分けて教えた子の1人だった気がする。
僕が小さな時、魔獣討伐の際に親とはぐれたり親が魔獣に殺されている子どものドラゴンを保護し、国のドラゴン保護施設に送っていたので扱いは慣れていた。

「あの時のフィリップ様に憧れて…私は魔術師には向いておりませんでしたが、日々努力の甲斐がございまして騎士団に入団することが叶いました。」

「フィルは騎士団でも見込みがあったからな。」

家の関係で魔術師団へと入団したが、学園にいた頃は時々騎士科にも先生の補助として呼ばれていた。

「憧れのフィリップ様とこうしてご一緒にお話も出来るなんて…ハナ様…感謝致します…」

「ハァァン……私こそ…この光景に感謝致しますぅ。」

___タラ…___

「……ハナ様…鼻血が…」

「いやん…つい…」

そっとバスケットからハンカチを取り出してリッキーがハナ様の鼻にハンカチを当てた。
一気に朱色に染まっていく。

「…っ…あぁぁあっっ…ハナ様っ……ダニエル様っ、どうしましょうっ!」

「あ~…いつもより吹き出しが少ないから油断してたねぇ。ニール、個室へ連れてくぞ。フィル、君は今日は警護はなく参加だけなんだしゆっくり食べていきなよね。」

「うん。」

癒しの魔法でハナ様の鼻血を止めたものの、貧血状態だったので個室で少し休むことになった。
僕はユーリの交代はまだ少し先だし…みんなを見送って僕は食事の出されているテーブルへと移動した。
今日は立食ハーティなので、摘める食事は給仕の者がワルツを踊るようにトレーを片手に動き回る。
顔だけ見たら気にならないのに、明らかに給仕が似合わない体型の男が隙間を縫って給仕している。
…あの腕まくりから見える腕…どう見ても騎士だ。

「お疲れ様。今日は会場警備に第3騎士団の見習いの子や若い騎士が紛れているんだよ。」

「クライヴ様。」

「フィル、そろそろ私の事は『さん』呼びで良いと言ってるだろ?」

「まだ『さん』呼びに慣れてなくて…」

クライヴ様が給仕からシャンパンを受け取ると、僕が見ていた給仕係の後ろ姿を見て呟いた。

「それにしても、アイツ…腕を捲るなと言ったのに…どう見ても肉付きが戦闘体系だから気付かれるかもしれんな。」

「今日は騎士の皆さんも交代でこちらに来てますし、良いんじゃないですか?」

「まぁ、そうだな。」

今日はハナ様も希望もあり、披露パーティは王宮内の者中心で公のパーティは後日となっている。
なので、披露パーティというよりは年末の慰労パーティのようだ。

「そう言えば、ユーリは後半に休憩だそうだな。」

「えぇ。」

「くれぐれもユーリに酒は飲ませないように。」

クライヴ様、前に何かあったんだろうか?

「それって…」

「あっ、クライヴさん!」

「じゃ…今日は楽しめよ。早く『様』呼び無くせよ~。」

クライブ様が第2騎士団の人に呼ばれて離れて行く。
改めて周りを見ると……

「フフッ…おいしいね♪」

「お前っ…その顔他のヤツに見せんなよ。」

…ん~…

「ねぇ、俺にも食べさせて?」

「…っ…もぅ…みんな見てるだろ…?」

…って、言いながらもあげてるよね?

「あっ!」

___パシャンッ!___

「あっ、ごめんっ‼︎」

「何してんだよっ、これ支給されて間もないんだぜ⁈」

「急いで脱がなきゃっ、シミになっちゃうよ!」

……と、別室へと移動するヤツ……


………これ、ハナ様のスマホの絵で見た………


このまま発展したら……何だっけ…ハナ様の世界の言葉で…『リア充』って、言うんだけ?

ハナ様の言葉が頭をよぎる。


___『こういう時はね…』___


「リア充爆発しろ。」

確かこうだ。
うん、確かに少しスッキリした。
僕は近くにいたシャンはんを運んでいた給仕係に2杯ほどもらって一気に喉に流し込んだ。
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