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___カチャ___
「先にすまないな。お風呂一緒に入りたいってあんなに手紙で書いていたのに、本当に良かったのか?」
僕の部屋の隣に簡易のお風呂がある。
家のお風呂は大きくて好きだけど、魔術の研究や剣の訓練で疲れた日は風呂場さえ遠く感じるので学園に入ってから作ってもらった。
小さな頃は大きなお風呂に一緒に入ってくれてたから、また一緒に入りたかったし…しかも、隣のお風呂なら2人でも十分入れるしユーリを近くで…
「う゛っ!」
顔を上げると自分の精神を試される状況となっていた。
あぁぁぁあ……ユーリの頭に付いた愛らしい耳が少し垂れて…上気した頬……それに……
「あ、ゴメン。いつもの癖で、アハハ…寮じゃいつもこうだからなぁ…あっ、何か着たほうが良いよな。」
「うううんっ!…も……もぅ~っ……風邪引いちゃうよっ!」
上半身裸で大きなタオルを首に掛けて戻ってきたのだ。
僕はベッドに腰掛けて思わず顔を反らしてしまった。
「…やっぱり…俺みたいなのが来るべきじゃなかったかな。」
「そんなこと無いっ!」
___バッ!___
「…っ。」
「危ないっ!」
___ドサッ!___
ユーリが心配になってこちらに近付いていた事に気付かず、勢い良く顔を上げたら目の前にユーリがいた。
ユーリが驚いてよろめいたので慌てて引き寄せるたのだが、そのままベッドへと押し倒す形となる。
「……フィル…」
___トクン…トクン……___
「……ユー…リッ…大…丈夫…?」
濡れた髪が…僕を見詰める瞳が……
「フフッ、お前…本当に力が強くなったよなぁ…あと…尻尾が痛い。ちょっと踏まれてる。」
「わわっ!ゴメンッ‼︎」
僕は慌ててユーリから離れた。
「俺…これでも騎士団の中でも強い方なんだけどなぁ。フィルは魔術師じゃなくて騎士になれば良かったのに。」
うん、僕もそう思う。
でも、ウチは魔術師の家系…そういう訳にはいかない。
「同じ騎士になれたら…僕…一緒の寮に入れたのになぁ…」
「ユーリは所属するとしたら第1騎士団だろ?今と変わらないんじゃないか?」
そうだ、ユーリが所属する第2騎士団は獣人やエルフ…でも、一部の人間も第2で所属していると聞く。
「それは元傭兵だったりするかな。フィルは第1だよ。」
…嘘でも良いから「きっとなる」とか言ってくれたら良いのに。
「フフッ、嘘でも良いから言って欲しかった…みたいな顔してるな。」
「えっ、僕顔に出てた?」
「うん、バッチリ。でも、俺ホッとしたかも。だってさ…」
「……っ。」
「こんなに大きくなって、カッコ良くなって…違う世界の人間になった感じだったからさ。変わって無いなぁ…って、安心した。」
………っっ…ユーリッ!
「ユーリッ…僕……!」
___コンコン___
「失礼致します。お休みはまだだと思いましたので…軽いお飲み物とご一緒にお楽しみ頂けるものをお持ちしました。」
アランンンンッ!
「おや、フィル様…そんなに興奮なされてはゆっくりお話も出来ませんよ?」
シレッとした顔してテーブルにワインとチーズや生ハムを乗せた皿が置かれる。
「…わぁ…美味しそう…」
「今年領地で出来たワインです。出来が良いので是非にと思いまして…ユーリ様は普段、エールを嗜まれると思いましたが、こちらは飲みやすいワインですし…こちらのチーズもこの土地限定のものですのでよろしければ。」
「嬉しいです、ありがとうございます。フィル、折角だし飲みながら話そうぜ。」
「…うん…」
コイツ…ワザとだろっ。
「フッ…フィル様…お顔に出ておりますよ。ヘタレが行動を起こすのはお酒の力でも借りなければ難しいかと思いましてね。」
「そんな事しなくてもっ!」
「えっ、何だ何だ??気になる令嬢の相談か?俺、男ばかりの騎士団だからなぁ…役に立つかなぁ…へぇ~、フィルも…もうそんな歳かぁ。」
気になるのは僕の目の前にいる人だよっ!
「そんな人いないからっ!アランも、もう良いから部屋に戻ってよっ!」
「はいはい、かしこまりました。それではユーリ様…何かございましたらすぐにでもお呼び下さいね。ま、この状況なら大丈夫と思いますけど。」
「はいっ。」
「アランッ!」
アランが部屋を出た後、僕はワインを一気飲みした。
「おっ、ユーリ!飲めるんだなぁっ♪」
「うん、父上や部隊の人達に鍛えられてね。」
成人してすぐ「限界を知れ」と散々飲まされて…そして限界を知った。
僕はどうやら母に似て酒に強いらしく、父も…まぁ、強いのだが、ある舞踏会で母目当ての貴族の令息が母に酒を勧め、逆に母に飲まされて潰れたのを見た時に一目惚れをしたらしい。
父の部隊のみんなを潰し、父を潰したところで記憶がない。
母曰く「そのままバッタリ倒れて寝ちゃったわよ」と言っていた。
変に絡む事もなく寝てしまったのは、学園で聞くキス魔や変に絡んだりしないのは少しホッとした。
だって…ユーリにそんな最悪な姿を見せたくないよね?
「ユーリはさ、酔っちゃうとどうなるの?」
僕の夢の中のユーリはそれは可愛くて…
「ん~…俺は…どうかなぁ…同僚によく飲みすぎるなとは言われるけど…もしかしたら、お前にも絡んじゃう…かな?」
「う゛っ!」
___ギュンッ!___
「フィル?」
「…何でもないっ……でも、今度からその仕草と…僕の前以外でたくさん飲みすぎないでね…」
「おうっ!ん~…これ、本当に飲みやすいなぁ♪」
ユーリがワインを飲むスピードが上がり、すぐに通り酔いが回ったユーリを確認する事が出来た。
「先にすまないな。お風呂一緒に入りたいってあんなに手紙で書いていたのに、本当に良かったのか?」
僕の部屋の隣に簡易のお風呂がある。
家のお風呂は大きくて好きだけど、魔術の研究や剣の訓練で疲れた日は風呂場さえ遠く感じるので学園に入ってから作ってもらった。
小さな頃は大きなお風呂に一緒に入ってくれてたから、また一緒に入りたかったし…しかも、隣のお風呂なら2人でも十分入れるしユーリを近くで…
「う゛っ!」
顔を上げると自分の精神を試される状況となっていた。
あぁぁぁあ……ユーリの頭に付いた愛らしい耳が少し垂れて…上気した頬……それに……
「あ、ゴメン。いつもの癖で、アハハ…寮じゃいつもこうだからなぁ…あっ、何か着たほうが良いよな。」
「うううんっ!…も……もぅ~っ……風邪引いちゃうよっ!」
上半身裸で大きなタオルを首に掛けて戻ってきたのだ。
僕はベッドに腰掛けて思わず顔を反らしてしまった。
「…やっぱり…俺みたいなのが来るべきじゃなかったかな。」
「そんなこと無いっ!」
___バッ!___
「…っ。」
「危ないっ!」
___ドサッ!___
ユーリが心配になってこちらに近付いていた事に気付かず、勢い良く顔を上げたら目の前にユーリがいた。
ユーリが驚いてよろめいたので慌てて引き寄せるたのだが、そのままベッドへと押し倒す形となる。
「……フィル…」
___トクン…トクン……___
「……ユー…リッ…大…丈夫…?」
濡れた髪が…僕を見詰める瞳が……
「フフッ、お前…本当に力が強くなったよなぁ…あと…尻尾が痛い。ちょっと踏まれてる。」
「わわっ!ゴメンッ‼︎」
僕は慌ててユーリから離れた。
「俺…これでも騎士団の中でも強い方なんだけどなぁ。フィルは魔術師じゃなくて騎士になれば良かったのに。」
うん、僕もそう思う。
でも、ウチは魔術師の家系…そういう訳にはいかない。
「同じ騎士になれたら…僕…一緒の寮に入れたのになぁ…」
「ユーリは所属するとしたら第1騎士団だろ?今と変わらないんじゃないか?」
そうだ、ユーリが所属する第2騎士団は獣人やエルフ…でも、一部の人間も第2で所属していると聞く。
「それは元傭兵だったりするかな。フィルは第1だよ。」
…嘘でも良いから「きっとなる」とか言ってくれたら良いのに。
「フフッ、嘘でも良いから言って欲しかった…みたいな顔してるな。」
「えっ、僕顔に出てた?」
「うん、バッチリ。でも、俺ホッとしたかも。だってさ…」
「……っ。」
「こんなに大きくなって、カッコ良くなって…違う世界の人間になった感じだったからさ。変わって無いなぁ…って、安心した。」
………っっ…ユーリッ!
「ユーリッ…僕……!」
___コンコン___
「失礼致します。お休みはまだだと思いましたので…軽いお飲み物とご一緒にお楽しみ頂けるものをお持ちしました。」
アランンンンッ!
「おや、フィル様…そんなに興奮なされてはゆっくりお話も出来ませんよ?」
シレッとした顔してテーブルにワインとチーズや生ハムを乗せた皿が置かれる。
「…わぁ…美味しそう…」
「今年領地で出来たワインです。出来が良いので是非にと思いまして…ユーリ様は普段、エールを嗜まれると思いましたが、こちらは飲みやすいワインですし…こちらのチーズもこの土地限定のものですのでよろしければ。」
「嬉しいです、ありがとうございます。フィル、折角だし飲みながら話そうぜ。」
「…うん…」
コイツ…ワザとだろっ。
「フッ…フィル様…お顔に出ておりますよ。ヘタレが行動を起こすのはお酒の力でも借りなければ難しいかと思いましてね。」
「そんな事しなくてもっ!」
「えっ、何だ何だ??気になる令嬢の相談か?俺、男ばかりの騎士団だからなぁ…役に立つかなぁ…へぇ~、フィルも…もうそんな歳かぁ。」
気になるのは僕の目の前にいる人だよっ!
「そんな人いないからっ!アランも、もう良いから部屋に戻ってよっ!」
「はいはい、かしこまりました。それではユーリ様…何かございましたらすぐにでもお呼び下さいね。ま、この状況なら大丈夫と思いますけど。」
「はいっ。」
「アランッ!」
アランが部屋を出た後、僕はワインを一気飲みした。
「おっ、ユーリ!飲めるんだなぁっ♪」
「うん、父上や部隊の人達に鍛えられてね。」
成人してすぐ「限界を知れ」と散々飲まされて…そして限界を知った。
僕はどうやら母に似て酒に強いらしく、父も…まぁ、強いのだが、ある舞踏会で母目当ての貴族の令息が母に酒を勧め、逆に母に飲まされて潰れたのを見た時に一目惚れをしたらしい。
父の部隊のみんなを潰し、父を潰したところで記憶がない。
母曰く「そのままバッタリ倒れて寝ちゃったわよ」と言っていた。
変に絡む事もなく寝てしまったのは、学園で聞くキス魔や変に絡んだりしないのは少しホッとした。
だって…ユーリにそんな最悪な姿を見せたくないよね?
「ユーリはさ、酔っちゃうとどうなるの?」
僕の夢の中のユーリはそれは可愛くて…
「ん~…俺は…どうかなぁ…同僚によく飲みすぎるなとは言われるけど…もしかしたら、お前にも絡んじゃう…かな?」
「う゛っ!」
___ギュンッ!___
「フィル?」
「…何でもないっ……でも、今度からその仕草と…僕の前以外でたくさん飲みすぎないでね…」
「おうっ!ん~…これ、本当に飲みやすいなぁ♪」
ユーリがワインを飲むスピードが上がり、すぐに通り酔いが回ったユーリを確認する事が出来た。
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