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___タッタッタッ…___


「ユーリィッ!」

「フィル!」

ユーリは僕を助けた事がきっかけで次々と功労していき、すぐに見習いの騎士から正式な騎士となり爵位までもらえるほど強くなった。
最初は離れると不安だったが、友達になるという約束を義理堅く守ってくれたユーリは休暇の日になると時々顔を出してくれた。
でも、王宮騎士団はそんなに暇ではない。
次第に彼の休暇がこちらの都合が合わなくなり…手紙でやり取りばかりの数年後、僕は学園を卒業して王宮魔術師団の所属が決まった。

先に王宮騎士団に所属したユーリがお祝いに何が良いかと聞かれて「久々に夜通したくさん話したい」と、お願いしたら、騎士団長に休暇を交渉してくれて僕の屋敷に来てくれる事になった。
春になればフィルのいる近くの寮で過ごせるのは分かってるんだけど……会いたかったのと今の姿を早く見せたかったのだ。

そして、僕の気持ちを伝える!

王宮所属の者達が暮らす寮は、騎士団寮・魔術師寮・従者やその他の仕事を担う寮がある。
特に騎士団寮は第1~第4まであってそれぞれのメイン業務先の近くに存在し、王族専属の第1と戦闘能力の高い者が集まった第2騎士団の寮はすぐに王宮へ駆けつけるように王宮のそばに建っていた。
ユーリのそばで働けるように魔術と勉強を頑張った僕は、見習いを飛び越えて正式な所属となり無事に王宮に一番近い魔術師寮となった。
将来有望な者が多く集まってる分、イジメはないし第2騎士団の実力のお陰で王宮近くの寮はみんな和気あいあいと過ごしているらしい。
連携を取るために合同訓練が多いせいか、この3つの寮のメンバーは他の寮と違い気軽に行き来しているという。

「待ちきれないから門まで迎えに来ちゃった。」

執事から部屋で待つように言われてたけど、こっそり抜け出したらフィルが馬車から降りたのを見つけて走ってきてしまった。

「ホントにフィルか⁉︎」

「うん、僕だよ。」

「あの小さなフィルが……フフッ、大きくなったなぁ…」

あの大きかったユーリが僕と同じ目線にいる。
ガッシリとして見えた身体は僕とそう変わらない姿…ゆったりと揺れる尻尾はフサフサで小さな頃はよく撫でさせてもらったな。
あぁ…抱き締めたら腰が壊れてしまいそうだ。

「入団、おめでとう。」

「…っ…ありがとう。」

ユーリが僕の大好きなヒマワリの花を持って来てくれた。
夏に咲く花。
昔ユーリとヒマワリ畑へ行った時、あまりにもユーリの笑顔とその背景にあるヒマワリが印象的で大好きになった。

「今でもヒマワリが好きって、手紙にあったからさ。あのヒマワリ畑で貰ってきたんだよ。」

「そうなの?」

ユーリが微笑むと空気が変わり、僕の寂しかった心も一瞬で溶けていってしまう。

「…フィル?」

「…ゴメンッ、あまりに嬉しくて。」

「そうか?あ…このヒマワリの種、食べられるって知ってたか?」

子どもの様に楽しそうに話すユーリ……あぁ…駄目だ…抱きしめたい。

「ユーリ…」

「ん?」

___ガシッ___

「い゛っ!」

「失礼致します。フィル様、いくらご友人のユーリ様とはいえ大はしゃぎでお出迎えなさるとは…ハァ…成人された方の行動ではございませんね。」

「ア゛…ランンッ!」

アランは僕が小さな頃、王宮騎士団で功績を挙げていたが魔獣討伐中に大怪我をして引退した。
実家は弟夫婦が既に家督を継いでいた為、気を使ってどこかの田舎で余生を過ごすと言うのをもったいないと父が引き留めた。
元々魔獣討伐で、王宮騎士団との繋がりがあった父は前々から色々とそつなくこなすアランに目を付けていたらしい。
実際、執事の仕事をさせたらかなり優秀な仕事が出来たので、今の使用人達はアランは元騎士団所属で怪我をきっかけにこの屋敷へ来たと知っている者は少ない。
戦闘力は屋敷の中では1番だ。

「イタタタタ……アラン…ッ…痛いよっ!」

「……フッ…痛くしているのですよ。大人になれと言ってるんです。」

デカい手で頭を鷲掴みされ、ギリギリと頭に変な音が響く。
そこそこ筋肉残ってるから元騎士って分かるはずなんだけど、ウチの屋敷は元傭兵やら元騎士が諸々の事情で使用人となっている事が多く、何だかんだみんな力があった。
王宮付近の穏やかな使用人達の目とたまに眼光鋭くなるウチの使用人の違いは、辺境の地で魔獣退治で培われたものだと王宮の舞踏会で初めて理解した。

「アランさん、お久し振りです!」

「ユーリ様、お久し振りです。私の事は呼び捨てでと何度申し上げれば…」

「また今度手合わせをして頂いても宜しいですか?」

え⁉そんな可愛い笑顔で何言ってるかな?
…っ、ダメだ!そんな可愛い顔でお願いされたら…アランに取られちゃうよっ‼︎

「ユーリ様…それは…今回はフィル様のお祝いでいらしたのですし……後が面倒…いえ、後日手合わせ出来る様に騎士団へお伺いを立てておきましょう。」

「ありがとうございます!」

わぁぁっ、目をキラキラさせて…可愛いなぁっ。

「…フィル様…そんな怖いお顔をせずとも大丈夫ですのでご安心下さい。ご心配されなくてもご一緒に手合わせ出来るように旦那様にお願い致しますから。」

「いやっ…それはっ!」

「本当ですか⁈フィルとも久し振りに手合わせを⁈」

あぁぁぁぁ……アランンンン………

アランを見るとしてやったりな顔をした。

「えぇ、最近魔術ばかりで旦那様も寂しいと申しておりましたからね。春には寮へと住まいが変わりますし…」

___ポンッ☆___

「そうですね、やっぱり1日くらい屋敷での手合わせのお時間を作ってもらいましょう。」

僕は全くよろしくない!
この滞在中にユーリに告白して……キスをして……そして……

「…はいはい、出来れば良いですねぇ。」

「な゛っ!」

えっ⁈…僕、今声に出てた⁈

「どうかしたのか?もしかして急用でも入ったとか⁈」

「いえ…今日はユーリ様とご一緒のお部屋で過ごされたいとの事で、早朝から色々と用事をこなしていたもので、出来れば良いですねぇ…と、思いまして。」

心配そうにこちらを見るユーリにアランがしれっと微笑んで答えた。
…僕、学園じゃ表情を読み取りにくいってよく言われてたんだけど?

「そっか…俺の為に…すまないな、フィル。疲れていないか?…あ…アランさん、俺っ…今日は別の部屋で「いやっ、いつもの通り一緒の部屋で良いからっ!」」

___グイッ___

「わっ。」

___ポフッ___

うわぁぁぁぁあああっ‼︎!

アランの方へ行こうとしたので、思わず自分の元に引っ張ったらユーリがよろめいたので思わず受け止めた。
数年前はユーリの方が力もあって…背も高かったのに。

「力が強くなったなぁ。それに…フフッ、背も大きくなった。」

___ズクンッ!___

「ーーーーーっ!」

「フィル様、今日のお風呂は別々になさいませ。」

「分かってるよっ!」

おかしいっ!
学園にいた頃の僕は氷の魔術師と呼ばれていたのにっ‼︎
ユーリの前ではいつまで経っても子どものままだ。
僕は赤くなった顔を誤魔化しつつ、ユーリと共に僕の部屋へと移動した。
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