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「にぃに…お帰り。」
「……良かった……心配した……」

今回は2日ほど意識がなかったらしい。
目を覚ますと、ベッドの横で手を握るルゥと上から手を添えていたレイがいた。

悠斗は花屋敷家へと謹慎処分となり、黙って従ったらしい。

「にぃに、話したいんでしょ?」

「俺は…話さなくて良いと思う。」

「レイはそうかもだけど、ちゃんと気持ちは伝えなきゃ。」

「……ルゥは……俺に気持ちを伝えてくれてない……」

「…っ!…今そんな話じゃっ…!」

真っ赤になってルゥが怒った。

あれ……?
途中から……痴話喧嘩かな…?

「んんっ!…とにかく!にぃにはアイツと話さなきゃね。」

咳払いして、ルゥが俺の手を優しく握りながら言った。

「でも、アイツは…謹慎処分で花屋敷の家なんだろ?」

ルゥはレイに目配せしてある物を持ってこさせた。
そう、前に佐奈田さんが飲ませてくれた回復薬だ。

「にぃに、これ…覚えてる?」

「うん、前にルゥが手伝った薬だよな?」

「今回は早く回復するように僕とレイでこっそり作ったんだ。でも…」

「………ゴメン…俺達まだ未熟だから…副作用…強いかも……」

あ~………
BLのありがちな…

「「媚薬効果がある」のかぁ…」

ルゥと声が重なり、思わず苦笑いする。

「アイツと話すことは出来るとは思うけど…媚薬効果をなくすのは…」

「エッチするしかないもんなぁ…ハァ…分かった…とにかく悠斗と話せるなら頑張って話すよ。だから、ここに悠斗を呼んでくれる?」

まだ起き上がる気力もないが、前回のように薬をもらったら動けると言うんだし。
俺は手を握るルゥに少し力を込めて握り返した。

「………俺は……反対だ。ルゥの大切なにぃにをこんなにするアイツ…嫌い。にぃには…俺にも優しい。だから俺は…にぃにも守りたい…3人で別の部屋に住んでも良い。俺が…2人を守るから。」

レイがルゥと俺に添えていた手を離して頬に手を当てた。
実際はしっかりとした男の人の手のはずなのだがレイの手は温かく、フクフクのインコの羽根に埋もれた時のような柔らかい優しい手だった。

「フフ…ありがとう。レイ、大好きだよ。でもね…」

「アイツ…好き?」

「うん…だから…」

__伝えなきゃ__

ルゥとレイは分かったと言って部屋を出た。
多分佐奈田さんに伝えに行ったんだろう。
そこからまた俺は寝てしまったらしい。
再び目を覚ましたら…ベッドの横で俺の手を握って寝ている悠斗がいた。

フフッ……睫毛…長ぇ……

伏せた睫毛の下には影があり、その影ではない隈がしっかりと刻まれている。
きっといつものように説教を受けてどっかに飛ばされてたんだな。
小さくクスクス笑いながら、どうにか寝返りを打てるようになった俺は少し体勢を横に変えて空いてる手で悠斗の頭を撫でる。
サラサラの髪が…指から……溢れ落ちる。


___いつでも俺を頼ってくれよな___


そんなキャッチフレーズにぴったりなキャラのはずだった。
………けどなぁ……一緒に過ごせば過ごすほど変態だし…ヤンデレ気味だし……でも…もっと好きになってる自分がいたんだ。

「………んぅ……っ!アキラ!!」

ガバッ!っと、悠斗が目を覚ました。

「あ…残~念…お前……滅多に寝顔見せないから…堪能してたのに。」

「ゴメン……ゴ…メン……」

俯いて両手で俺の手を握って表情が見えないが、手の上にポタポタ冷たい物を感じる。
泣いてる?

「悠斗……聞いて。」

俺の手を包む悠斗の手に、もう片方の手を添える。

「俺は…帰らない…」

「…え?」

「親には…会えなくなるのは辛い…辛い…よ…?でもな………お前と離れるのは………もっと辛い………」

「アキラ………」

「悠斗……そこのサイドテーブルの薬………飲ませて…」

「起きれる?」

「うぅん…お前の口から……欲しい…ダ…メ……?」

悠斗は少し考えるような顔をして「分かった」と、薬を口に含んでゆっくりとベッドに上がり、俺の頬に手を添えて唇を合わせてきた。

「………ん……ぁっ…ん………ふっ…ぅ………」

前回より強めとのことで、薬の色も濃く味も甘い。
チュク…チュク…と、舌を絡めて薬を馴染ませる。
歯列をなぞり、上顎を擽るように舐めてからそっと唇が離れた。

「これ…あの2人が作ったんでしょ?」

「うん…副作用……聞いてる?」

「佐奈田からね…」

悠斗が優しく頬を撫でる。

「あのままだと…また眠ってしまいそうだったから……それに…」


___ドクン…___


…あぁ……来…た………


「ん………ぅ…ふっ………恥ずかしいっ…こと………気に…ぁっ…せずっ……言えるしっ……んんっ………」

悠斗の頬のソフトタッチも感じてしまう。
アイツら………ホントにまだまだだな……でも…言わなきゃ…頑張れぇ…俺っ…
体力が戻り始めて両腕を悠斗の首に回す。
軽く悠斗の唇に触れた後、悠斗の耳元に自分の表情が見えないように…多分聞こえてるだろうが、影に聞こえたくない気持ちで小さく囁いた。



「悠…斗…大…好き……愛…し……てる……」



「アキラ………!!」


___パァァァンッ!___


エッチでお互い高め合った訳でもないのに、キラキラと花びらと光が舞い上がる。
気が付いたら自分の媚薬効果も消えて身体が軽くなっていた。

そして………俺は…気絶してないはずなのだが、またあの白い空間にいた。
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