上 下
25 / 79

23

しおりを挟む
ハロウィンイベント翌日、四葉先輩からお菓子をもらった。
………もらったのだが………

「なぁ………これって…」

「あ、シャインマスカットだね。」

朝食を済ませた後に戻って来たら、シャインマスカットがビッチリと敷き詰められたホールケーキがテーブルの上に鎮座していた…昨日のお菓子はどうした?
周りには色々なお菓子も並ばれて、女子がいたら凄くテンション上がるもんばっかりじゃん。
…あ、昨日のお菓子の詰め合わせも申し訳なさそうに端にある。

「隼人がこないだ生徒会の手伝いで姫をしただろ?そのお礼も兼ねてだって。隼人の方には先輩から話が行ってるから、後から来るんじゃないかな?」

今日は休日だから良いんだけどさ。
全部食えねぇだろ。

「あ、これは賞味期限は長いのもあるし、大体1週間分くらいかな。今日中に食べ切らなくても大丈夫だよ。」

俺また顔に出てたか。
よくよく見たら個別包装も多いもんな。

「4人分だしね。流石にケーキは多いから佐奈田と父にお裾分けするよ。父の秘書も四葉先輩の所のお菓子は大好きだからね。」

「そっか。じゃあ大丈夫か。」

そんな話をしている間に隼人が来た。
尚弥は珍しく遅く起きたらしく、隼人は部屋で食べるためのブランチボックスを持っていた。
食堂では、朝起きれなかった寮生の為に昼兼用のお弁当、ブランチボックスを用意している。

「ゴメンね、尚弥が起きれなくて…お菓子は3時頃でも良いかな?」

「………あぁ、大丈夫だよ。3時で…大丈夫かな?」

………ん?何だ?ちょっと…不穏な空気………

「あぁ、大丈夫。アキラも…ゴメンね。」

「いや、俺は良いんだけど。尚弥、体調悪いのか?」

「いや、風邪とかじゃないから大丈夫。もう少し寝かせてあげたいだけだから。」

そっかぁ、昨日ハロウィンイベントで話が盛り上がったのかな?
じゃあ寝不足にもなるよな。

「あまり無理にとは言わないけど、しんどいならケーキは切り分けて持ってくし、言ってくれよな!」

「ありがとう。」

隼人はニッコリと笑って部屋に戻って行った。
やっぱりイケメンの笑顔って絵になるなぁ。

………でも…何か昨日と違うような…何か元々色気のある男だったけど………何だろ…香り?…何か違う………


「………クソッ…先…越された………」


「ん?何か言ったか?」

「ううん、何でもない。」

ん~?どうした、悠斗?
苦虫を噛み潰したような顔して。
あ、そうか!シャインマスカット食べたかったよなぁ。
俺も食べたい!
これ、俺の世界じゃテレビで紹介されてたのは1ピース3.000円くらいしてたぞっ。
これもそのくらいか、それ以上だよな~♪
ウズウズしながらケーキを見ていたら、悠斗がそばにあった生クリームとシャインマスカットでデコレーションしたカップケーキを手に持った。

「これなら、ちょっと多めにあるし、味見しちゃおっか?」

「あ!良いな♪それ!」

そう言うと、生クリームを少し指に掬って俺の前に差し出してきた。

「スプーン取りに行くのは面倒だし、先に味見ね~♪」

美味しそうなお菓子に囲まれ、テンション高めで来られて俺は何も考えずに悠斗の指に食い付いた。

「はむっ………あっ…美味いっ♪」

「はいっ!マスカットも食べる?」

悠斗が今度は半分にカットされたマスカットを取って俺の口に運んだ。

「うん♪ぁ…んっ………んっ……!」

………ん?悠斗の指が口から離れな………

ハッ?!しまったぁぁぁぁあっ!!

悠斗の指で顔が動けないので、恐る恐る上目遣いで見ると、悠斗の瞳がオレンジ色に揺れる。

「…ハァ……アキラ…可愛い……」

クチュ…クチュと2本の指を使ってあちこちと擦らる。

「ん………ふぁっ…んんぅ………」

悠斗の指がゆっくりと動く度、シャインマスカットの甘みが唾液と共に喉を通る。
まるで悠斗の指が甘いんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。
悠斗は満足して指を離し、俺を見つめながらその指を見せつけるように舐めた。

ちょっと…エロい…かも…

「ん…甘い…続きはまた…今度ね。」

「………ハッ!お前っ!お菓子見る度に思い出して食べれなくなったらどうしてくれるんだよっ!責任取ってくれよなっ!!」

「…えっ?!…………責任……取って良いの……っ?!」

キラッキラ…じゃねぇな…ギラッギラさせながら肩掴んで言うセリフじゃねぇっ!

「ちっげ~わっ!このアホボンがぁっ!!」

佐奈田さんのこないだ言ってた「アホボン」をここで使う羽目になるとは…
さっきは不覚にも魅入ってしまった!
次はねぇからなっ!!

取り敢えず悠斗を落ち着かせ、昼食は隼人が持っていたブランチボックスが気になったので悠斗に頼んで持ってきてもらって部屋で食べる事になった。
ボックスを開けるとサンドイッチが入っていて、ハムとチーズが入ったものからアボカドとエビが入ったものまで…パンも茶色いもの?まであって美味しい。

「そういやさ…」

食後のお茶を悠斗が入れてくれていた時にふと思い出した。

「ん?」

「昨日、俺と尚弥に薔薇の本数聞いて嬉しそうにしてたじゃん?あれ…何で?」

「あ~…フフ…あれね。」

お茶をティーカップに入れ終わった悠斗が席に着く。

「薔薇に花言葉があるのは知ってるよね?あと、薔薇を贈る本数によっても意味があるのを知ってる?」

「知らない。」

「心理テストをする時って直感じゃない?だから、本数も直感でどうかなぁ…って、思ったんだ。俺の自己満足なんだけどね。まぁ、隼人も満足したみたいだけど…」

尚弥と俺の選んだ本数は4と3…
尚弥の「4」本は「死ぬまで気持ちは変わりません」

そりゃ確かに聖堂で尚弥は告白したもんな。
その言葉の続きと受け取りゃ、そりゃ嬉しくもあるわな。

で…俺の「3」本は「愛しています」だそうだ………おっふぅ………俺………無自覚に告白してんじゃん……血を吐きそう。

「心の奥にある本音…だと嬉しいな♡」

悠斗が手を握ってきた。
特に何もされてる訳じゃないけど…手の平が…熱い。
俺は……もしかして好きを通り越して、もう愛しちゃってんのか?

「俺は………愛してるよ…」

ボッ!っと、俺は顔が真っ赤になった。

「フフッ、可愛いな。」

「お前っ!可愛い可愛いって言うけどっ!!俺、本当は大学生のお兄ちゃんなんだぞっ!」

「フフフッ…!…可愛い…チュッ。」

不意打ちをくらってキスをされた。
おのれっ!見とけよっ!!
そのうち、お兄ちゃんスキルを見せてやるからなぁ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...