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朝食の後、理事長室に顔を出したのだが……

「あぁ!君が噂のアキラくんかぁっ!!」

両手を広げながらハグを求める2人目のイケオジ、理事長だ。
ほとんど出ないから名前も「理事長」で紹介されてんだよね。
やっぱりこの世界…イケメンだらけだよな。

「はじめまして。私は理事長の花屋敷 隆之介だ。よろしくね。」


………ん?花屋敷……?


「?!」

思い切り驚いた顔のまま横を向くと、ニッコリと微笑む悠斗が気付いて答えた。

「あれ?そっちでは名前はなかったのかな?そう、父だよ。」

「父でぇ~すっ☆」

爽やかに紹介する悠斗の横でテヘペロなテンションで決めポーズをする理事長。

軽い……ゲームにこんな姿は無かった…残念なイケメンだ…

「昨日、佐奈田から話は聞いたよ。書類はこちらで全て手配済だ。君は元々大学生なんだってね。それなら学力は問題無いだろうし、こちらで3年間の学園生活を満喫して欲しい。」

「でも俺…」

「違った世界から来たと聞いたけど、悠斗の勝手な都合で呼び出したんだ。ご家族から離れて大切なご子息に何かあっては申し訳ない。連絡が出来ない分、こちらで出来る事をさせて欲しい。」

あ、真面目な顔出来るんだ。

「私の父が受け継いだ呪術の本を勝手に書庫から出してきて…いやぁ…もう奥へ置いていたはずだったんだが……」

「花屋敷は呪術が使える家系なんですか?」

「いや…呪術と言うか魔術と言うか……まぁ……そのお話は置いておこうね。こちらでアキラくんの世界へ帰せる方法を調べている所だ。分かったら、また知らせるね。」


「………帰す気はないけどね………(ボソッ)」


……悠斗さん……?今隣で何言いましたぁっ?!

「…ん?アキラ、どうかした?」

ニッコリ微笑む花屋敷の瞳の色がいつもより怪しく光ってる気がする。

「いや…何でもない…」

異世界転生じゃないから帰るパターンもあるけど、帰れないのもあるんだよなぁ…俺はどうなるんだろう…

ま、どうにかなるか。
…切り替え早いな、俺。

取り敢えず、学園を満喫しようと思います!

俺は佐奈田さんに職員室へ連れて行ってもらい、そのまま担任の先生と教室へ向かった。

「今日から編入してきた花屋敷 アキラくんだ。みんな色々教えてやってくれ~。」

担任の先生から軽い紹介があり、そのまま俺の席に誘導されて授業が始まる。
俺は花屋敷の親戚の設定だったが、元々の名字が分からなかったからと同じ花屋敷にしたらしい。
あとはもう1つの理由。


___何かあったら『花屋敷』の名前を出してくれて良いからね___


周りへの牽制も兼ねて…なのか?
セレブは色々ありそうだもんな。

さてさて~、再び高校生かぁ☆
これでも俺、頑張って偏差値少し高めの高校に行ってたし、去年まで習ってた事だから大丈夫だよな~。

さてとっ、教科書教科書~♪

佐奈田さんが準備してくれた制服もだが、教科書やノートとか全て揃えてくれていた。


「…………」


___チ―――――ン___


放課後、授業に付いていくのに必死で燃え尽きた俺がいた。

………騙された…セレブ怖ぇ………

どこが高校生だよ…

経営学ってなんだよ…

心理学…?んなもん高校生が学ぶもんじゃね~だろ…

「…?…アキラ、大丈夫?顔色悪いけど…保健室…行く…?♪」


………悠斗、最後のセリフの後に「♪」が見えたぞぉっ………


「いやっ……大丈夫だ。」

「そう?もし難しいなら補習授業もあるし、なんなら俺が教えるよ?」

一応、俺の学科は経済学部だし大学1年のレベルならどうにか大丈夫と思うが……悠斗に教えてもらったら……俺の身体が大丈夫じゃない気がする。

「ありがとう、悠斗には大変になったらお願いするよ。」

「分かった。じゃあ、寮に戻ろうか。」

ゲームじゃ勉強のシーンはほとんどなくて寮メインだったけど、やっぱりこっちはこっちで現実にあるものだから生活があるんだよなぁ。

校舎を出て、悠斗と話しながら寮へ移動する。
寮は学園の敷地内だが、徒歩で10分は掛かった。
歩きながらも秋の風を感じ、風景も夏から秋へと変わっているのは俺の世界と同じだ。
異世界とはいえ、学園ものだとあまり変わらないかな。


___いや…変わるか___


周りを見ると手を繋ぎながら帰る者、あっちの樹の下じゃあ壁ドン?樹だから樹ドン?されて告白されてるし……

本当にBLの世界なんだなぁ~。

「アキラ?ボーッとしながら歩いてるけど大丈夫?やっぱり昨日の召喚の疲れが出ちゃったかな?そこのベンチで少し休もうか。」

別に疲れた訳でもないのだが、風も心地良いから少し休む事にした。

「俺ね…朝にも話したけど今まで色んな人から恋愛の相談をされてたんだ。あ、ちょっと待ってて。」

そうだな、そういう設定だし。

悠斗は近付くに設置された自動販売機で缶コーヒーを買ってきて俺に手渡しながらゆっくりと座った。

「だからアキラと出会えて、今までの相談や話をフル活用してみようと思ってるんだけど……」

「…えぇ~…それは…ちょっと…」


………困る………


ん?

……困る…?……嫌…じゃなくて…?

「アキラはさ…誰かと…その……付き合った事…あるの?」

「あ~、あるよ。」

隣の悠斗がピクッと反応する。

「中学と高校と…何人か付き合って…実はここに召喚されるちょっと前にも振られたんだけど、み~んな同じ理由で別れたんだよねっ。」

「…そう…なんだ…。」

「う~ん、『アキラは誰にでも優しいから』だって~。俺、付き合ってる時にあちこち浮気するヤツじゃないんだけどなぁ。」

「………」

「…エッチ……もぉ…?…優しすぎるぅ…?とか…言われるしさぁっ……アハハ!な~に言ってんだろなっ!恥ずかしっっ!!」


あぁぁぁぁ!どこまで話してんだ俺ぇ!!


サポートキャラの影響力、スゲェな!

「あ~!今の忘れて忘れ……っ!何っ?!」

無言で急に立ち上がった悠斗に腕を掴まれ、早足に寮の部屋に連れて行かれた。
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