可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

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___🎼.•*¨*•.¸¸♬🎶•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪🎼.•*¨*•.¸___

「リオ様、姿勢が崩れておりますよっ!」

「…だっ…て……」

「……リオ…」

流れる音楽に合わせて身体を密着させて踊る。

………踊る………

「……って…顔…近い…っ…」

「…そうか?」

___ゾクンッ___

「…んっ…耳元…喋るなよ…っ…」

大きな音楽が流れているので話す時は耳元で正解なんだろうけど、なかなか会えない状態でこれはちょっと…

「クスクス…リオ、顔が赤い…可愛いな。」

「そんな事ない…っ。」

コイツ、講師の前って自覚あるのか?

「リオ様、腰が逃げてますっ!もう少しベリル様に寄り添って下さい!」

「……だ、そうだぞ?ほら…」

___グイッ___

「んぁっ!」

___ギュッ!___

「痛っ!」
「ゴメンッ…でも、お前も悪いんだからなっ。」

引き寄せられて思わず足を踏んでしまった。
でも、ベリルが必要以上に引き寄せたから悪いんだからなっ!

「ハイハイ、喧嘩をしないっ。ほら、ジルコンとオニキス様を見て下さい。あんな感じで、姿勢良く優雅にお願いしますよ!」

「……オニキス、お前も…顔が近い。」

「…そうですか?いや…本当はこの位…ウプッ。」

___パシッ!___

「……させねぇよ。」

ジルコンが耳元から唇へと近付いてキスをしようとしたオニキスの口を、ダンスをしながら優雅に手を泳がせて塞いだ。

はなたあなたは…ほんほホントに…ふるひなズルイな……」

「フフッ、何言ってんのか分かんねぇよ。」

講師はジルコンとオニキスの関係を詳しく知らないから分からないだろうが、端から見れば俺の友達と侍従イケメン2人が優雅に…そして無駄に色気を振り撒きながらクルクルとダンスをしてる様に見えるが……
実際の所は久々にジルコンに触れるチャンスを逃さない為に、あらゆる手を使ってどうにかジルコンをその気にさせようとするオニキスと、どうにかしてその気を削ごうとするジルコンの攻防を繰り広げながらダンスしてるのが本当の姿だ………俺達はこうはならねぇな…凄い。
俺の相手が今日は体調不良で休んだ為にジルコンに声が掛かったのだが、結局横で聞いてたベリルになり……そして、せっかくだからとベリルが近くにいたオニキスに声を掛けて今回の講義メンバーとなった。

ダンスは舞踏会等で踊る事は必須だが俺は基本男側で踊る事が多かった。
今後ベリルと結婚する事により女側での踊りとなるので少し姿勢も変わってくる。
そして何よりも王族という、周りの視線を一身に浴びる事になるのでダンスも下手な踊りは出来ない訳だ。

ジルコンは侍従の教育により姿勢はかなり良く、元々の器用さも手伝ってダンスも卒なくこなして身をかわす。
オニキスも体幹がしっかりとしているので、ジルコンにちょっかいを掛ける余裕が出来る程上手に踊っている。

俺はと言うと、久々と言っても数日だが触れてくる指や吐息に反応してしまうから頑張って対抗しようにも…ベリルも興奮してグイグイ来るからたまったもんじゃない。

「ベリル様、もう少し手の位置を腰に。それではお尻に当たってしまいます。」

___ボソッ___

「………それが良いんだがなぁ。」

「な゛っ!」

「何かおっしゃいましたか?」

「いや何も、もう少し上だな。」

…お前っ!やっぱりワザとだったのかっ‼
どうりで、ジルコン達が講師の前に出た時に弄られると思ったよっ!


___🎼.•*¨*•.¸¸♬🎶•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪🎼.•*¨*•.¸___


「……リオ…お前に…もっと触りたい……」

「……んぅっ…もっ……ふざけん…なっ…」

隙あらばちょっかい掛けるのやめて欲しい。

「……ふざけてない……今日はお前と過ごしたい…我慢出来ない…そばにいて思い切りお前に触れられないなんて……気が狂いそうだ……」

___カァッ…___

大きな音で流れている音楽に笑顔で話すベリル。
端から見てたら微笑ましい会話に見えるんだろうけど……周りに聞こえてないのを良い事に、何て事言ってんだよっ!
講師は気付いて無いけど、ジルコンは苦笑いしてるからアイツ絶対気付いてるぞっ‼
…ん?オニキスも何か言って……あ、足踏まれた。

___ギュッ!___

「あ、ゴメ~ン。(棒読み)」

「…っ……いえ……」

何言ったんだ、オニキス?

___グイッ___

「こっちに集中…な……チュ。」

「ぁんっ…」

回転と同時に腰を引き寄せられ、掠める様に首筋にキスをされた。
もうっ、こんな事されたら俺…っ…

___パンッ!___

「ハイッ、そこまで!お疲れ様でございました。」

講師の手の合図と同時に音楽が止まり、俺達はダンス終了の挨拶をして講師の元へと行った。

「ありがとうございます。」
「ありがとう…ございます…」

終わって良かった…今日はもう終わりだよな…早く屋敷に戻ろう。
少し落ち着いたけど…まだ身体の奥がジンジンしてる……ヤバいな。

「ジルコンも、今日はありがとうございます。」

「今日は俺はいなくても良かったですね。」

「いえ、良い見本になったと思いますよ。オニキス様もお上手でした、ありがとうございます。」

「いえ…勉強になりました。」

「………おい…離せ…」

___ギュ☆___

「…嫌…です。」

褒められて気を良くしたオニキスがどさくさに紛れて腰を引き寄せ、満足そうに微笑んでいた。

「では、今日の講義は以上となりますね。私はこれから王宮へ戻りますが、ベリル様はいかが致しますか?」

「あぁ、俺は少しリオにがあるので先に戻ってくれ。」

「かしこまりました。」

講師はそう言うと、そのまま王宮へと戻って行った。

「オニキス、リオは俺が送るからジルコンはお前が送ってくれ。」

ん、用事?それに何でオニキスがジルコンを送るんだ?

「承知した。」

んんん?

「何で俺が…っ……おいっ、本当にもう離せっ!」

ジルコンは何か嫌な予感がしているのか、講師もいなくなったので自分の腰に回った手を力を込めて外そうとするがビクともしなかった。
アイツ、また力を付けたんだ。

「リオ…俺達は別の場所にから帰るから。お前も……ベリルと話してから帰ってくれると嬉しい。」

「別の場所に寄る…ゆっくり…?いや……俺は早く帰り……んっ。」

『……そんな顔で帰す訳がないだろ…チュ。』

___ビクンッ___

「あんっ。」

腰を引き寄せられて耳元て囁かれ、耳にキスをされた。
抱き締められて、ダンスで流した汗とベリルの香りが強く俺の鼻を擽り身体を更に熱くさせる。
もう…我慢の限界だ。

___ギュッ___

俺はベリルの腰に手を回した。

「……ベリ…ル…」

「…オニキス、ジルコンを頼むな。」
 
「あぁ。」

「お前らっ!何を考えて…」

「……俺もベリルも…貴方達との時間を大事にしたいと思っているだけですよ…そして…」

「っ!」

「……俺も……我慢出来ません…」

「………しろよっ………馬鹿野郎っ!降ろせっ……降ろせぇ~!」

オニキスはそのままジルコンを抱えるように部屋を出てしまい、ダンスホールには俺とベリルの2人だけとなった。
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