可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

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ベリルの国だけに咲くバラは、昼は薄いピンクのバラで夜になると星のような輝きと共に濃いピンク色に染まる。
俺の国だけに咲くバラは、ベビーブルーのバラでたくさん花びらが特徴だ。
香りも柔らかく、バラなのにラベンダーのような鎮静効果もある。
俺が提案したバラは、2つが掛け合わせた花びらの多い薄いラベンダー色で、夕方に近付いてるせいかゆっくりと色が濃くなりながら仄かに輝き始めていた。

「何となくこれって思ったけど…うん、選んで正解かも。夜の妖精の庭にちょうど良いんじゃないかな?」

「でもこれ…品種改良で、明らかに持ち出し禁止の雰囲気があるけどな…」

「1株くらいなら良いんじゃないか?そこそこあるじゃないか。」

「…でも、俺が分けてもらった時より少ない。」

メインは王宮だからと甘くみてたけど…環境を考えてここで作ってる場合もあるよな。
バラって繊細だもんなぁ…

「ドライアドに相談してみるか。」

「そうだね、それが良いかも。」

「じゃぁ、ロードに聞いてダメだった時のために他のバラも見てみないか?」

「そうだな、じゃぁ…あ、これはどうだ?」

……ちょっ…これ、ドラゴンの花だよね?

「ダメでしょ?」
「ダメだろ?」
「そうだな、ダメだな。」

「えっ!何でだよ⁈」

「ベリル、ドラゴンの生息地にあるバラってそう気軽に行って気軽に『もらうね♪』って言って『良いよ♡』と、バラをくれる場所でもないよ?」

摘みやすい場所はあってもたくさん取ったら、いくら温厚なドラゴン種でもキレるだろ。

「レッドドラゴンは流石に難しかったけど、他のドラゴンの時は気軽にくれたぞ?」

「嘘っ⁈」

マジか⁉︎初めて聞いたぞ、そんな話。

「俺、結構昔から魔獣に気に入れれやすくて…王子じゃなきゃテイマーを目指したかも。」

「スゲェな…」

でも、ハーピーは特に…だったような…

「全ての魔獣じゃないと思うぞ、それにハーピーは女神だろ?」

「あ、顔に出てた?」

ベリルに指摘されて思い出した。そっか、ハーピーは神族だった。

「小さな頃は使役するほどまだ魔力も安定してなかったし、向こうもそれを見越して契約を言ってこなかったしな。今は学園で学んである程度の安定はしたし、そろそろ契約したいから帰ったらロードと森へ行ってみようかな。」

「そんなピクニック感覚で良いのか?」

「まぁ、最初は小さな魔獣からと思ってるからそんなもんだ。」

「じゃあ、俺も行きたい。」

「あ、オニキスも来るか?お前も来てくれるならもう少し上をねらえそうだな♪よし、ロードが来たら相談しよう。」

魔獣かぁ…ゲームやアニメの世界では当たり前だったけど…ここでは現実に当たり前なんだ。

「リオは、ハーピーが魔獣みたいなもんだから大丈夫だな。」

「えっ⁉俺も行きたいっ!」

「お前は戻って、少ししたら妃教育だろ?」

あぁぁ…あったねぇ…
戻って10日は城にいるけど、終わったら勉強だよなぁ。

「クスクス、ここにいる間に色々と契約すれば良いじゃないか。お前は妖精や精霊に愛される資質を持ってると思うから。」

「そうなのか?」

「あぁ。」

ベリルがそっと俺を抱き締めた。

「ユニコーンとはもう契約できないけど…心清らかなお前なら、妖精や精霊と契約できるだろ…チュ。」


___……ユニコーンと……___


「………ハッ!それってっ!」

「…クスクス…あんなに俺を受け入れてくれるお前を、例えユニコーンが契約に来ても渡さないけどな。」

___カァッ‼︎___

俺は午前中のバラ園での出来事を思い出して顔が熱くなった。

「チュッ。リオ…可愛い。」

「可愛い言うなっ!」

「…ジルコン、俺だってユニコーンに奪われそうになったら戦います。」

「…お前、何ムキになってんのかな?俺は男も女も知り尽くしてる。ユニコーンと契約したけりゃ本気で取…いや、契約しに行くだろ?奪われることはまずない。」

…今取りに行くって言ったよね?
ジルコンなら本気で欲しくなったら可憐に女装してでも取りに行きそうだ。

「それにお前はお前だろ?リオの顔見りゃ十分すぎるほどベリルに愛されてるのは分かるけど、愛し方は人それぞれだ。お前はお前なりの愛し方をすりゃ良い……と…何だよ?」

「貴方は俺の愛を受け取ってくれてるんですか?」

「……ここで言う話じゃない。それにここでは妖精と精霊の契約に専念することになっただろ?」

いや、参考になりそうだからここで言って良いよ。

「リオ、顔に出てる。」

「あれ?」

「そこも可愛いんだけどな。」
「可愛い言うなっ。」

「ハイハイ、そこのバカップルは放っといて。」

「バカップルって俺達のこと⁈」

「…ハァ……オニキス…俺は…その…ちゃんと分かってるけど…」

「俺なら…いくらでも待ちます。」

オニキスがジルコンの両手を掴んで自分の口元へと持って行った。

「いや、待っててもらわなくて結構だ…身体の相手ならすると言っただろう?…もぅ…この話は堂々巡りになるな、やめておこう。」

…待たなくて良い…そう思うなら、そんなに辛い顔でオニキスを拒むなよ…

お互い見つめ合いながらそれぞれの気持ちが交差する。
ジルコンを止めている原因は俺にもあるんだよな。

「なぁ、ジルコン。」

「何だ?」

ジルコンがゆっくりとオニキスの手を離して俺に体を向けた。
いつものジルコンの顔…でも…ほんの少し悲しそうな顔が見え隠れする。

「…バカップル…って思われないくらい…強くなりたいから、べリルにちょっかい掛けられたら反撃出来るように特訓して。」

「リオッ⁈」

「プフッ!何それ⁈…フフッ…訳わかんないけど、まぁ良いよ。」

ゴメン、ちょっと誤魔化した。
でも、俺…本当に強くなるからさ…だから、ジルコンも幸せになってよ。
話がそれて雰囲気が穏やかになったので、俺はそのまま森へ行ってドライアドに相談しようと提案した。
オニキスはまだ何か言いたそうだったけど…今のジルコンに何を言ってもダメだろう。
なら、心配の種である俺とガーネットが落ち着いた姿を1日でも早く見せれば良いだけだ。

俺達は今度作るオニキスの妖精の庭の準備の相談や妖精と精霊の話をジルコンに聞きながら妖精の森へと向かっていった。
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