可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

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___コンコン___


「……開けて良いか?」

ん?いつもはノックしたらすぐに入ってくるベリルが入って来ない。
あれから何度もイかされて陰茎が擦れて痛くなってしまい、慌てたベリルにヒールの魔法を掛けてもらったのだが、流石に反省したのかそこからクリーンの魔法もかけてもらい部屋も魔法で整えた。
俺も出来るんだけど、ベリルほど綺麗に出来ないしベリルがさせてくれない。
ベッドでイチャイチャはしてたけど、入っても大丈夫なんだけどなぁ。

「うん、大丈夫だよ。」

___カチャ___

「失礼致します。ヘリオドール様…この度はご婚約、おめでとうございます。」

…ジルコン敬語だ、何か寂しい。

「……と、挨拶終わり。おはよ、リオ。昨日は泣かされてねぇか?」

___ボッ!___

「泣か…っ!」

「…目が赤いし…縁が腫れて………殿下…俺…言ったよな…」

「いやっ!違っ…‼︎」

「フフッ…冗談だよ。泣く程よくしてもらったんだな。最後まで「わぁぁぁああ!」…ないか。頑張ったな、殿下。」

「リオが大事だからな。」

「安心したよ…任せたぞ。」

「あぁ。」

…何2人で語ってんの?
俺…嫁に出るの?…あ、出るのか。

「氷水に浸けた布だ。殿下の着替えの間に目に乗せとけ…では、殿下、先にお着替えを。」

手慣れた手つきでベリルの着替えをジルコンが手伝う。
終わった後は俺も着替えたんだが…

「ふぅん…」
「い゛にゃぁぁあああっ‼︎」
「……っ!」

俺の身体はキスマークだらけだった。

「このケダモノ。」
「見るなぁっっ!」
「…本当に…すまないと…思っている。」

朝日に浴びる俺の身体のキスマーク…

「まぁ…殿下の背中の引っ掻き傷といい勝負じゃん。親には内緒にしておくよ。」

「「……っ!」」

ジルコンが人差し指を自分の唇に当てて笑った。
…うぅ…ジルコンには一生頭が上がらない。

___コンコン___

「失礼致します。」

服を着替え終わった後にパールがガーネットと聖女を連れてきた。

「ごめんね、の目がまだ落ち着いてないからこちらで食事をどうかなと思って。お父様達には話しているわ。ベリーにはもう1泊してもらおうと思って。」

「じゃぁ、俺も「殿下は白馬の馬車で王子が迎えに来るから勉学に励め。」」

容赦ないな、ベリル。

「なぁ、ガーネット…ベリーって…」

聖女のことだよな?

「あぁ、聖女様のことよ。昨日パジャマパーティをしたの♪」

ガーネットと聖女が手を繋ぎ、姉妹のように笑って見つめ合う姿は本当に信頼し合っているんだな。
パールも一緒だと…おかしい…パールが年長者なのに、1番幼く見える。

「えぇ、とても楽しかったです。まるで…に戻ったような…」

___日本___

この子、日本人なんだ。
パールとジルコンが食事のセッティングをしてみんなで席に着く。

「フフッ、日本なんて言葉はここにないですよね。私…実は転生者なんです。」

「あ…っ…あぁ…転生者…なんだ。」

「兄様、知ってたの?」

「え?」

「反応薄いから。」

「え…あっ!いやいやいや‼︎驚いてるよ!驚きすぎて反応出来なかったの!」

…うん、何となく気付いてた。
でも、『転生者』という言葉も『日本』という言葉も今は文献の中での話だ。

「…?…天…せい…2本…?意味が分からない。」

ジルコンのような反応が普通だよな。

「転生者、他の世界の者が生まれ変わってこの世に誕生することだよな。」

「ベリル、知ってるの?」

「あぁ、文献でな。確か前の転生者は…100年前の冒険者だっけ?その冒険者も日本からだったよな。」

「えぇ、私も王宮に来て教えられました。その冒険者は私が記憶している時代と同じくらいだったと思います。」

100年も離れてるのに同じくらいの時代なんだ。

「これ以上は長くなるので省きますが、この世界にいると覚醒した時…私は転生前の14歳に戻っていました。孤児院で暮らしていた不便でも当たり前というストロベリーの記憶と、日本にいた時の便利で当たり前の記憶が混乱して…私は王宮に来た時は何としても孤児院へ戻りたくないと思ってしまいました。」

お金が掛かるが、蛇口を捻れば消毒された綺麗な水が豊富に流れ、今の日本では心配しなくてもいい病気にも罹らない。
孤児院では味わえなかった日本を感じることができる。
愛されて育ったと聞いてはいるけど、乗り物は昔でも日本の環境に近い王宮や貴族の暮らしぶりには懐かしさを感じることもあっただろう。

それに…

「それに…この世界は…私が知っている世界でした。」

ゲームか小説の世界なんだろう。

「俺達を知ってたの?」

「えぇ、ベリル殿下、ロード殿下…アウィン・コーラル・オニキス…貴方達はヒロインの恋愛対象者。そして…ごめんなさい、ガーネット…貴女は『悪役令嬢』」

「フフ…何度も謝らないで。貴女の前の世界でのお話でしょ?」

「えぇ…でも、私は貴女に失礼な態度をとったわ。」

「そして…貴女は…そのヒロイン…だったのよね。」

「そうなの。私…学校に行けなくなって色々な病院で検査を受けているうちに重い病気も見つかって…そのまま…だったと思う。記憶が曖昧で。でも、このゲームは…大好きだったから。」

ゲーム…そっか。
ゲームかぁ。

「ゲーム?」

「あ、ごめんなさい。この世界ではボードゲームが主流よね。何て言えば良いのかしら…」

「そうだわ、今度コーラルのお父様とかにお願いして映し出す鏡を作ってもらいましょう!」

「え゛っ…それは…その…」

ん?聖女が急に口籠ったな。

「いえ…そうね、意志で調節出来るなら…良いかもしれない。あと……ヘリオドール様!」

「はいっ!」

今まで俺に目を合わせなかった聖女が真っ赤な顔でガーネットの手を握りしめて俺を見つめた。

「私……そのゲームの中で……貴方が1番…私の……推しでした!」

「押し?」
「お…何?」

ベリルとジルコンが『推し』について混乱している横で、事情を聞いているガーネットとパールの2人は微笑ましく笑っていた。
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