可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

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毎回スイーツ巡りは行けるのに、可愛い店に行くのを誘っても何故かコーラルの予定が入っているので約束通り可愛いもの巡りはベリルだけの特権となった。
可愛いものに触れていると心がワクワクする。
「可愛い可愛い」と触れている横で「確かに可愛いな、本当に…可愛い」とベリルも呟く。

「お前、俺ばっかり見て…楽しいのかよ?」

「あぁ…可愛いものを見て目を輝かせるお前が可愛くて…」

日々、可愛い可愛いと言われていると感覚が麻痺していくのか、2年生になる頃にはそれが当たり前になっていた。

「なぁ、ちょっと行ってみたい所があるんだけど。」

「良いよ。」

2年生も同じクラスになったベリルが、教室で週末の話をしている時に提案してきた。
最近人気が出ているゴンドラでのデートコースだ。
そういや、この街は水路が元々多かったけどここ数年あちこちで観光用のゴンドラが出来てるよな。

「ゴンドラ初めて。」

「そうなのか?」

「うん、ゴンドラは何となく気が向かなかったんだよなぁ…」

…ゴンドラじゃないけど某アトラクションでサメが出たり…数カ国の歌が聞こえたりしたら楽しいけどさぁ…いや、そこまで求めちゃいけないんだけど…観光向けに作られたのがここ数年のせいか、ゴンドラに乗ってると注目を浴びやすいんだよな。
1人で乗ってるのも楽しくないし、スイーツ巡りは徒歩や馬車で十分だからな。

「じゃあ、ゴンドラ巡りは俺にコースを考えさせてくれ。あ、もう行かなきゃ。また後でな。」

ベリルがウインクをして席を立ち、入れ違いにコーラルがやって来た。

「あれ、ベリルは?」

「コーラル、今入れ違いに出ていったよ。ロードと別件での授業みたい。多分帝王学の関係かな。」

「そっかぁ。」

「リオ、次の授業だが…」

「……あ…アウィン…」

「…コーラル…」

……ん?2人の雰囲気が…その…

「…あっ…その…リオ、僕ちょっと用事を思い出したから…行くね。」
「コーラル!」

走ろうとするコーラルにアウィンが手を掴んだ。

「離してっ。」
「離さない…ゴメン、リオ。コーラルの顔色悪いからちょっと救護室行ってくる。」

「……あぁ…うん、分かった。」

何だこれ…何か聞き覚えのあるフレーズだな。

「…行くぞ、コーラル。」
「離してよっ!わぁっっ!!」

「顔色が悪い、今にも倒れそうだ……暴れると…落ちるぞ。」

ひょいと横抱きにされてコーラルが暴れようとするが、アウィンの言葉に大人しくなった。

……これは…パールが参考資料にと、渡された小説で読んだような…

もしかして、アウィンとコーラルは…付き合ってる…⁈

「リオ、どうかしたのか?」

騎士の特別訓練に参加していたオニキスも戻ってきた。
オニキスは2年生から騎士志望の中でも将来王宮専属の騎士を約束された選抜のメンバーになった。

「お疲れ様、オニキス。今日の昼食は一緒に食べられそう?」

「あぁ。」

2年生になってから、1年の時のように剣術の授業の後グッタリすることも無くなった。

「なぁ、オニキスは相手は見つかったのか?」

「突然だな…でも、まぁ…気になる人なら…いる。」

元々ロードとベリルは昼食が取れないのは分かっていたが、授業が終わってもコーラルとアウィンは戻って来なかったので、学園の食堂で2人で食べることにした。
ガーネットは他の令嬢に呼ばれて最近は別行動だ。

「そうなんだ!どんな人?」

「そうだな…落ち着いていて…」

「うんうん。」

「話も上手くて…」

「うん。それで?」

「魔術も上手くて尊敬できる。」

「それ…俺も知ってる人?」

「……あぁ、知ってるかもな。」

「そうなんだ、同じクラスかぁ…どの令嬢かなぁ。」

「令嬢じゃない。」

「そうなのか?」

「もう、次の授業が始まるな。そろそろ行こうか。」

落ち着いてて、冗談が上手くて…令息?
魔術が上手くて…誰だ??
俺は頭の中が疑問だらけでそのまま休日を迎えた。



*****************



「リオ。迎えが来たぞ。」

「今行く。」

「うん、今日の格好も…可わ…いえ、とっても素敵よ♪」

「…今、可愛いって言おうとした?」

今日の格好は確かに少し後ろの丈が長く、ヒラヒラと…レースっぽい。

「…可愛「もぅっ、ベリル様がお待ちよっ!いってらっしゃいっ!!」」

俺は押し切られてベリルの待つ馬車へ向かうと、振り向いたベリルが固まった。

「やぁ、リ……ォ…」

「お待たせ、ベリル。どうしたの?」

「いや…うん…今日も可…ん゛んごっ…良いなと思って…じゃぁ、行こうか。」

「…う…ん?」

かんごイイ…何の言葉だ?隣国独特の言葉か?地方の言葉みたいなもんなのか??

「……ベリル様。」

「うん、分かってる。」

「泣かせないで下さいね。」

「泣く?今日そんなゴンドラ揺れるのか⁉」

「安心しろ、違うよ。リオ…お手をどうぞ。」

送り出すジルコンと迎えに来たベリルの顔がいつもと違う?
俺はベリルに手を引かれゴンドラ乗り場へ行くと、見た事のないゴンドラがあった。

「これ…」

観光用のゴンドラは屋根が無いはずなんだけど…屋根付きのテントのような作りのゴンドラで、屋根の下に入ると外は普通に見れる。
何かガラスミラーみたいなもん?ちょっとレースな感じで…デザインも可愛い。

「気に入った?」

「うん。よく見つけたな。」

「いや、特注だよ。」

「え?」

「今日ゴンドラを運転する人は、舵を取る訓練を受けた騎士だよ。さ、行こうか。」

「失礼致します。今日は護衛を兼任させて頂きますラリマーと申します。今日はよろしくお願い致します。」

優しい顔のラリマーさん…あれ、この人って…

「フフッ、私は王宮騎士なのですが、ベリル王子がこちらにいる間は専属で付いております。以後、お見知りおきを。」

道理で何となく知った顔だと思った。
街へ出た時にチラチラと顔を見掛けた人だ!
俺達はゴンドラに乗って初めてのゴンドラ観光をする事にした。
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