可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

文字の大きさ
上 下
15 / 105

14

しおりを挟む
城下の噴水広場では、チラホラと王宮でもしっているラフな服装の騎士の人達がいた。
比較的顔の穏やかな面子を集めたのか、ラフな服装で結構普通の人に溶け込んで、傍から見ると観光客のようだ。
何で分かるって?王宮の剣術で何度か会ってる人達もいるんだよね~。

「わぁ…大きいな。」

「うん。結構大きいだろ?」

転生前の大昔にやっていた映画の何処かの国の休日ってタイトルだったか…お忍びで街にいった王女様が一般人と恋をする…だったかな?
記憶が曖昧だけど。
ここはその場所によく似ていた。
この噴水もコインを投げる風習がある。

「後ろ向きに立って硬貨を投げると願いが叶うんだよ。」

「…モルダ様から聞いたのとは、ほんの少し違うな。」

「そう?」

「あ、あの水飲み場で水は飲めないのか?」

「『愛の水』だな。水を飲んだ恋人や夫婦は永遠に別れることなく、幸せになれるって言われてんだって。俺達は恋人同士じゃないし、今飲むのはお前の将来の婚約者に悪いだろ?俺、可愛い婚約者が出来たら一緒に飲むんだ~♪」

「…そうか…」

残念そうにベリルがシュンとした。

「お前なら男女どちらでも可愛い婚約者に恵まれそうだし、決まったらまたここに来たら良いんじゃないか?モルダ様とダイヤ様は婚約者時代にここに来て飲んだらしいぞ。」

「…決まったらな。」

「そんなに喉が乾いたなら、何か買ってこようか?」

「いや…違っ…!」

「あ、今日は暑いよな。飲み物じゃないけど、オススメのアイス買ってくるっ。」

俺は噴水広場のそばに出店していたアイスクリームの店に行ってベリルの分と2つ買って戻り、木陰のベンチに腰掛けた。

「ここに座って食べようぜ。」

暑い日にはアイスは格別だよな~♪

「ん、美味い。」

「だろ?俺、ここのアイスは昔から好きなんだよ。」

覚醒前の記憶だが、親に小さな頃に連れて行ってもらって初めて食べたこのアイスの味はしっかりと残っているほど俺は大好きだ。
アイスを食って、一息着いたらコインを投げて…って、今でも街へ出るとやっちゃうんだよな。

「なぁ、コインは持ってきたか?」

「あぁ。」

「じゃぁ、こっち行こうぜ。」

ベリルが食べ終わったのを確認して噴水広場に戻ってくると少し人が空いていたので、俺は見本を見せてからベリルにも勧めてみた。

「そうそう…後ろを向いて…ハイッ、投げる!」

「…っと、こうかっ?」


___カンッ!……ポチャンッ!___


おぅ!ベリルが後ろを向いてて良かったぜ!
投げたコインが軌道を逸れてるのを見て、警護の騎士の1人が剣の鞘で噴水へと弾いてくれたっ!

「……カンッ…?」

「あ~、無事入ったみたいだぞ。良かったなぁ。」

「じゃぁ、行こ「いや、もう1枚投げたい。」」

「ん、もう1枚?」

「うん、もう1枚。」

ニッコリ笑ってベリルがすでにコインを手に持っていた。

「何か変な音したしな。今度は変な所に当たらずに入れたいから。」

そっか、騎士がフォローしたのは気付かなかったんだろうけど、何処かに当たったのは気付いたんだな。

「確かになぁ~、分かるっ。俺もそうだった。じゃあ、何なら何回でも良いぞ。投げるか♪」

「フッ、次の1回で良いよ。じゃあ、投げるか。」

___ヒュッ!ポチャン!___

早ぇぇ……コインが見えなかった……
無事入って良かったけど、騎士の人達も見失ってフォローできなかったぞ。

「この噴水は願いが叶う者が多いのか?」

「あ~…どうだろ?まぁ…叶ってるのかなぁ…」

俺は、可愛いを沢山吸収できますようにって、覚醒してからよく願っているけど……

「ん~…俺は…叶ってる…かな?」

限定の可愛いものを結構ゲット出来てるし。

「そうか。」

「どうした?何か叶えたい願いでもあるのか?」

「いや、まだハッキリとしてないんだが…今日で分かりそうだ。」

穏やかに笑うベリルは最近少し大人な顔になっていて、俺はちょっとズルいと思った。

「次は、お前の気になっている硝子工房に行こうか。」

「行って良いのか?行ったらしばらく動かねぇぞ?」

「良いよ。硝子細工はこの国の特産でもあっただろ?ベリル様に見せて頂いた硝子細工は、ウチの銀細工に負けないくらい素晴らしいものだった。お前の好きな店でぜひ買いたいと思ってな。お前に選んで欲しい。」

「そうか?俺で良ければ喜んで。」

ガラス工房は噴水広場の近くにあったのですぐに到着した。
工房自体は暑いが、商品を置いている部屋はひんやりとしている。


___チリンチリン…___


「こんにちは~。」

「いらっしゃいませ…あら?今日はお連れ様も一緒………ハッ!」

店員のローズが肩に精霊を乗せて出迎えてくれた。

「もしかして……キャァッ♡おめでとうございます!」
「…って、違うからねっ!」

ハイテンションに勘違いするローズに俺は叫んでしまった。

「あまりにお似合いで勘違いしちゃいました。いらっしゃいませ…えっと…」

「初めまして。私は隣国からやってきたベリルと申します。以後、お見知りおきを。」

「……隣国…ベリル…ハッ!!もしかして王子様っっ⁉いやぁぁぁ!誠に、申し訳ございませんっ!!」

「アハハ、大丈夫ですよ。この国にはイチ留学生としてやって来ました。警備の関係で王宮にお世話になっていますが、俺にはこのリオ同様に対応して下さい。」

「……リオさ~ん…」

「フフ、良いんじゃない?ベリルもそう言ってんだし。俺も最初は少し緊張したけど、今はこうだよ?」

「最初は?…今は?」

「フフッ、どうだろうな。」

ベリルが俺の腰に手を回して聞いてくる。
スキンシップの好きなヤツのようで、最近やたらと触ってくる。
最初は驚いたけど、今は慣れてきた。

「……ねぇ、リオさん…本当に婚約者とかじゃ無いの?」

「ん、仲の良い友達だよ?なっ、ベリル!」

「……そうだな。」

「ほら、ローズもこんなこと聞くからベリル困ってんじゃん。あ、そうそう!例の限定の細工ある?」

俺とベリルの話しを早々に切り上げて、限定の硝子細工について聞いた。

「フフッ、鳥の細工ね。来ると思ってこっそり取っておいたわ。じゃぁ、裏に取りに行くから他の商品を見て待っててくれるかしら?」

「了解!」

ローズが限定商品を取りに裏へ行った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

Estrella

碧月 晶
BL
強面×色素薄い系 『Twinkle twinkle little star.How I wonder what you are? ────きらきらきらめく小さな星よ。君は一体何ものなの?』 それは、ある日の出来事 俺はそれを目撃した。 「ソレが大丈夫かって聞いてんだよ!」 「あー、…………多分?」 「いや絶対大丈夫じゃねぇだろソレ!!」 「アハハハ、大丈夫大丈夫~」 「笑い事じゃねぇから!」 ソイツは柔らかくて、黒くて、でも白々しくて 変な奴だった。 「お前の目的は、何だったんだよ」 お前の心はどこにあるんだ───。 ─────────── ※Estrella→読み:『エストレージャ』(スペイン語で『星』を意味する言葉)。 ※『*』は(人物・時系列等の)視点が切り替わります。 ※BLove様でも掲載中の作品です。 ※最初の方は凄くふざけてますが、徐々に真面目にシリアス(?)にさせていきます。 ※表紙絵は友人様作です。 ※感想、質問大歓迎です!!

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

処理中です...