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翌日の昼にモルダ様が戻り、聖女が拘束されたことを知った。
本人は自分の魅力でロードを振り向かせたと言い張っているので無自覚だろうが、学園の生徒達に色目を使っていたことも判明した為、裁判が終わるまで城の塔に幽閉されるらしい。
「無意識なチャームはとても厄介よ。彼女は覚醒してしばらく経つし、封印にも時間が掛かるわね。高度の防御魔法を持ち合わせた魔術師と魔術にも特化した騎士団がいるから警備はそちらに任せてきたわ。ところでガーネットは?」
「…それが…」
あれからファーストキスのやり直しをしたらしく…その後は一応別々に寝たそうだが、早朝ロードが部屋を抜け出してガーネットの部屋へと忍び込み、一緒に寝ていた所をロードを探し回っていた王宮の給仕の人が発見。
ひと悶着あったようだ。
ガーネットに腕枕してスヤスヤ寝ていた王子がいた…と。
「………こりゃ…ヤッ…ムグッ。「ないですぅぅぅっ!ガーネットは純粋な子ですぅっ‼」」
ベリルの言葉を最後まで言わせないようにオニキスが咄嗟に手を口に抑え、俺は口を大にした。
「……王妃様…ここはロードを信じましょ?」
モルダ様を見ると般若の顔になって、拳を鳴らしていた。
「…フフッ…優しいのね、コーラル…それに、私のことは『モルダ様』で良いのよ?貴方達もね。」
「「「……ありがとうございます。」」」
「貴方達はお茶でもして…待っていて頂けるかしら…ちょっと…ロードの様子を見てくるわ…フフフフッ…」
般若が笑うとああなるのかぁ…
モルダ様がバキバキ鳴らしながら部屋を出ていった。
「怖ぇぇぇ…」
「ったく…ベリル、王子様がそんなこと言っちゃ駄目じゃん!」
「ゴメン…」
「だけど、確かに…」
「「「「……ヤッ「てませんっっ!」」」」」
信じてるのは俺だけかっ!
結局ロードに問いただしたところ、約束通り手を出してはおらず、初めてのお泊りにテンションが上がって喋って寝たそうだ。
俺達は安全が確認された上でそれぞれの屋敷へと戻った。
「お帰り。」
「ただいま、ジルコン。」
ジルコンの笑顔に安心する。
___パタパタ…___
「お嬢様っ!」
「パール、ただいま。」
フニャッ…と、パールを見た途端にガーネットが本来の雰囲気に戻った気がする。
パールはジルコン同様、俺達が小さな頃から一緒にいたから幼馴染のようなものだ。
「大変でしたね!さぁ、お風呂にお湯をはっておきました。ゆっくり疲れを取りましょうね!」
「えぇ…じゃあ、兄様…また後で。」
パールがガーネットの手を取り引っ張っていく。
年上なのに小柄で童顔なパールと、年下なのに大人びた顔に落ち着いた雰囲気ガーネット。
仲の良い姉妹のような幼馴染であることには変わりはないが、傍から見たら年齢は逆に見えるだろう。
「お前は大丈夫か?」
「あ、うん。俺は大丈夫。ロードも無事に目を覚したしな。それより、何で俺には効かなかったんだろう?」
「あぁ、それは…これのお陰だ。」
俺の部屋へと移動中にジルコンが俺が付けていたネックレスを指差した。
「これ?防御魔法が掛かってんだっけ?」
「うん、話しに聞いて少し嫌な予感がしたからさ。古代魔法の簡易的な防御魔法を掛けといた。メス猫避けに良いのがあったからさ。お嬢は同じ女同士だから、聖女には怖い印象を与えてたかもな。」
「古代魔法⁉お前使えるの?」
「いや、簡易的なのしか出来ないよ。基本は母から学んだ…気がする。」
「お前、よく従者を選んだよな。」
「だから堅苦しいの嫌なんだって。俺は今の生活やお前のご両親に仕えているのが楽しいの。」
ジルコンは俺の部屋に着いて、着替えを手伝いながら話を続ける。
「チャームは精神力の強い者にはかなりのストレスでしかない。軽かったとはいえ、気を許して術が掛かりやすい状態ではなかなか抜け出せなかっただろうな。」
「うん、かなり辛そうだったよ。」
「このネックレスの石は術を掛けようとしている者は近寄り難い雰囲気に受け取る様にしていた。簡易的な物だから、本格的にされると駄目だったけどな。役に立って良かったよ。」
だから聖女にはガーネットがキツく見えたのか。
「ジルコン、ありがとう。」
「どういたしまして。」
「「フフッ。」」
目が合って、思わず笑顔が溢れる。
今回の件でガーネットの悪役令嬢の評判が少しでも緩和されると良いのだが。
「ガーネットのことに関しては聖女がいなくなれば術も解けるし、ロードが回復してからどうにかしてくれるだろう。」
「なら良いんだけどね。」
「…これを機に、結婚式が早まったりしてな。」
「ありえんっ!お兄ちゃんは認めませんからねっっ!」
「ブハッ!お兄ちゃんは…って…冗談に決まってんだろ。確かにお前まだ婚約者すら決まってないもんな。ダイヤ様とモルダ様は在学中には結婚させないと思うぞ。」
「冗談でも言うなっ…バカ!」
兄様、兄様と、カルガモのように付いて回った可愛い妹は早々に婚約し、今やファーストキスでさえも先に越されてしまった。
「どんどん大人になってくよなぁ…」
俺はどんな恋愛をするんだろうか?
「お前は意外に男の方が良いかもしれないな。」
「俺が⁉」
「うん、何となくだけど。」
俺もベリルじゃないけど恋愛の視野を広げたほうが良いのだろうか…いや…初志貫徹。
男でも可愛いがオープンなこの世界。
折角だから可愛い女の子とキャッキャウフフと街で可愛い探しをしたい!
俺は今回の件が落ち着いたら婚約者探しに力を入れようと心に決めた。
本人は自分の魅力でロードを振り向かせたと言い張っているので無自覚だろうが、学園の生徒達に色目を使っていたことも判明した為、裁判が終わるまで城の塔に幽閉されるらしい。
「無意識なチャームはとても厄介よ。彼女は覚醒してしばらく経つし、封印にも時間が掛かるわね。高度の防御魔法を持ち合わせた魔術師と魔術にも特化した騎士団がいるから警備はそちらに任せてきたわ。ところでガーネットは?」
「…それが…」
あれからファーストキスのやり直しをしたらしく…その後は一応別々に寝たそうだが、早朝ロードが部屋を抜け出してガーネットの部屋へと忍び込み、一緒に寝ていた所をロードを探し回っていた王宮の給仕の人が発見。
ひと悶着あったようだ。
ガーネットに腕枕してスヤスヤ寝ていた王子がいた…と。
「………こりゃ…ヤッ…ムグッ。「ないですぅぅぅっ!ガーネットは純粋な子ですぅっ‼」」
ベリルの言葉を最後まで言わせないようにオニキスが咄嗟に手を口に抑え、俺は口を大にした。
「……王妃様…ここはロードを信じましょ?」
モルダ様を見ると般若の顔になって、拳を鳴らしていた。
「…フフッ…優しいのね、コーラル…それに、私のことは『モルダ様』で良いのよ?貴方達もね。」
「「「……ありがとうございます。」」」
「貴方達はお茶でもして…待っていて頂けるかしら…ちょっと…ロードの様子を見てくるわ…フフフフッ…」
般若が笑うとああなるのかぁ…
モルダ様がバキバキ鳴らしながら部屋を出ていった。
「怖ぇぇぇ…」
「ったく…ベリル、王子様がそんなこと言っちゃ駄目じゃん!」
「ゴメン…」
「だけど、確かに…」
「「「「……ヤッ「てませんっっ!」」」」」
信じてるのは俺だけかっ!
結局ロードに問いただしたところ、約束通り手を出してはおらず、初めてのお泊りにテンションが上がって喋って寝たそうだ。
俺達は安全が確認された上でそれぞれの屋敷へと戻った。
「お帰り。」
「ただいま、ジルコン。」
ジルコンの笑顔に安心する。
___パタパタ…___
「お嬢様っ!」
「パール、ただいま。」
フニャッ…と、パールを見た途端にガーネットが本来の雰囲気に戻った気がする。
パールはジルコン同様、俺達が小さな頃から一緒にいたから幼馴染のようなものだ。
「大変でしたね!さぁ、お風呂にお湯をはっておきました。ゆっくり疲れを取りましょうね!」
「えぇ…じゃあ、兄様…また後で。」
パールがガーネットの手を取り引っ張っていく。
年上なのに小柄で童顔なパールと、年下なのに大人びた顔に落ち着いた雰囲気ガーネット。
仲の良い姉妹のような幼馴染であることには変わりはないが、傍から見たら年齢は逆に見えるだろう。
「お前は大丈夫か?」
「あ、うん。俺は大丈夫。ロードも無事に目を覚したしな。それより、何で俺には効かなかったんだろう?」
「あぁ、それは…これのお陰だ。」
俺の部屋へと移動中にジルコンが俺が付けていたネックレスを指差した。
「これ?防御魔法が掛かってんだっけ?」
「うん、話しに聞いて少し嫌な予感がしたからさ。古代魔法の簡易的な防御魔法を掛けといた。メス猫避けに良いのがあったからさ。お嬢は同じ女同士だから、聖女には怖い印象を与えてたかもな。」
「古代魔法⁉お前使えるの?」
「いや、簡易的なのしか出来ないよ。基本は母から学んだ…気がする。」
「お前、よく従者を選んだよな。」
「だから堅苦しいの嫌なんだって。俺は今の生活やお前のご両親に仕えているのが楽しいの。」
ジルコンは俺の部屋に着いて、着替えを手伝いながら話を続ける。
「チャームは精神力の強い者にはかなりのストレスでしかない。軽かったとはいえ、気を許して術が掛かりやすい状態ではなかなか抜け出せなかっただろうな。」
「うん、かなり辛そうだったよ。」
「このネックレスの石は術を掛けようとしている者は近寄り難い雰囲気に受け取る様にしていた。簡易的な物だから、本格的にされると駄目だったけどな。役に立って良かったよ。」
だから聖女にはガーネットがキツく見えたのか。
「ジルコン、ありがとう。」
「どういたしまして。」
「「フフッ。」」
目が合って、思わず笑顔が溢れる。
今回の件でガーネットの悪役令嬢の評判が少しでも緩和されると良いのだが。
「ガーネットのことに関しては聖女がいなくなれば術も解けるし、ロードが回復してからどうにかしてくれるだろう。」
「なら良いんだけどね。」
「…これを機に、結婚式が早まったりしてな。」
「ありえんっ!お兄ちゃんは認めませんからねっっ!」
「ブハッ!お兄ちゃんは…って…冗談に決まってんだろ。確かにお前まだ婚約者すら決まってないもんな。ダイヤ様とモルダ様は在学中には結婚させないと思うぞ。」
「冗談でも言うなっ…バカ!」
兄様、兄様と、カルガモのように付いて回った可愛い妹は早々に婚約し、今やファーストキスでさえも先に越されてしまった。
「どんどん大人になってくよなぁ…」
俺はどんな恋愛をするんだろうか?
「お前は意外に男の方が良いかもしれないな。」
「俺が⁉」
「うん、何となくだけど。」
俺もベリルじゃないけど恋愛の視野を広げたほうが良いのだろうか…いや…初志貫徹。
男でも可愛いがオープンなこの世界。
折角だから可愛い女の子とキャッキャウフフと街で可愛い探しをしたい!
俺は今回の件が落ち着いたら婚約者探しに力を入れようと心に決めた。
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