可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

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書いていた内容は、ガーネットへの愛をつらつらと書き連ねた甘い文章が続き「さて、例の件だが」の後に筆が歪み、ミミズが這ったような文字があった。
ガーネットへの愛を綴る手紙で鍛えられ、綺麗な文字が書けるようになったロードが慌てて書く程の何かがあったのか?
それにしても、1行でもガーネットへの愛を抑えりゃ書けただろ~が。
ったく、ブレねぇな。

「…これ、気を付けろって書いてんじゃないの?」

「うん、俺もそう思う。」

「え、そうなの?」

3人で改めて見直し、きっとそうだろうという結論で落ち着いた。
さて、気を付けろ…何に対してだ?
不可解に思っていた数日後にその答えが分かった。
王都で噂が広まったのだ。


___今度入学する隣国の留学生がある令嬢を探している___


ハイ、来たよ。
片方落としたパンプスを履ける令嬢を探してるとかって、まるでお伽噺だ。
ガラスのパンプスならぶっ壊すのに、ガッツリ革靴なんだよね~。
しかも、中途半端にデカかった。
確か…俺、今は25cmくらいか。
この世界に25cmの令嬢はかなり少ないからしらみ潰しだろう。
逆に俺達の年齢の男で25cmも…きっと少ない。成長期な俺達はもう26cm以上が多いもんな。王宮で訓練してる騎士のみなさんの情報だけどさ。
留学生はきっと足のデカい令嬢と思って探してるはず。

…うぅ…言ってて悲しくなってきた…大丈夫…俺の成長期は…これからだっっ!

___コンコン___

「王都から使いが来てお嬢が呼ばれた。お前は念の為、ここから動くなよ。」

俺は言われる通り動かず、ついでだからと学園入学前の準備をしていた。

___バァァアン! ___

「兄様っ!」

「うぉいっ!」

「うぉいっ!じゃないわよっ!兄様、貴方一体彼に何をしたのよっ!」

王子の対応が終わり、何故か怒ってるガーネットと笑いを堪えたジルコンが戻って来た。

「え?」

「彼のあの目の輝き、ロード様の輝く目にそっくり!魔法でも使ったの?」

「んな訳あるかいっ!」

「…ブフ…そうだよな…そうなら…ククッ…俺がとっくに…かかってる。」

「あら、そうね。」

ガーネットの情報では、留学生は俺に一目惚れをしたらしく、特徴が似ている令嬢の家には一緒に行って探してるそうだ。
見つけたら即嫁に迎えたいらしい。
嫁に?あの短時間で??どこに惚れる要素があったんだ⁉

「何か…最後に自分は男と低い声でをして言い張りウィッグを取った姿は驚いたけど、あれはどう見ても女性だと…」
「ブフゥッ!ワッハハハハ‼」

「ジルコンッ、お前笑い過ぎっっ!」

「だって…ウィッグ脱いで地声で女…って…グフッ……ヤベッ…俺死ぬ…グフフフ…」

「そのまま笑い死んでしまえっ!」

「全く…まぁ、女性と思ってるなら兄様だとバレてないんでしょ?なら当分このまま様子を見ましょ。」

当然なのだが、その後留学生の探しているは見つからず、俺達は入学式当日を迎えた。

「お嬢、リオ。ロード様が迎えに来てるぞ。」

ジルコンが食堂にやってきた。
…なんだ、この懐かしい感じ…


___み~ず~き~くぅ~ん、がっこ行こ~___

___みずき~、お迎え来たわよ~___


あ、これだ。
相手は王子様で、徒歩じゃなく馬車だけど。
朝食を終えて食後のお茶で両親と話していた俺達は挨拶を済ませてロードの待つ馬車へと向かった。

「おはよう、ガーネット。今日も朝日に負けないくらいにキラキラと輝いて綺麗だ。君の前では太陽すらアクセサリーとなって君を引き立ててくれるんだね…チュ。」

「ありがとう、ロード。貴方だってその輝く髪が太陽に当たって…将来を祝福されてるようにキラキラと輝いているわ。」

「ガーネット…♡」
「ロード…♡」

はいはいはい…爆ぜろリア充…

「…リオ。」

「ん?」

朝日に負けないくらいのキラッキラなリア充に目を細めて眺めていると、横からジルコンが小声で声を掛けた。

「何か嫌な予感がする。俺も学園に一緒に行くが、ずっとそばにはいられない。これを渡しとく。じっとしてて。」

そう言うと、ジルコンが俺に小さな石の付いたネックレスを付けた。

「これは軽い防御魔法の加護を掛けてる。咄嗟の魔術に対応してるから付けとけ…あと…このブレスレットはガーネットに渡しとけ。ロード様は常に護衛がいるから大丈夫だろ。」

「分かった。」

俺はブレスレットを受け取り、ロードの馬車へと乗り込んだ。
学園までの移動は馬車で20分程。
俺はブレスレットをガーネットに渡し、ロードに手紙の事情を聞いた。

「…そんな手紙出したっけ?」

「「?」」

「いや、だって…パーティのあの時…」

「あ、今度入る聖女だよな。ガーネット、大変とは思うが色々と教えてやってくれ。」

「え…えぇ…」

「彼女は今まで孤児院だが、人に恵まれたとかである程度の勉強は出来ているらしい。後見人もいるそうだが、王宮のマナーとかは全くだとか。在学中に令嬢達との交流で身に付けられたらとのことだ。」

「……お前、パーティの時に別室で色々聞いたんじゃないのか?」

「別室……っ……」

「ロード?」

一瞬頭痛を訴えるように俯いたがすぐに顔を上げた。

「……あ…何でも無い。気分が悪くて行ったと聞いている。話したが特に何も無かったぞ。」

「お前…「そろそろ到着だな。」」

違和感を覚え、聞こうとしたところで学園へ到着してしまった。

「俺は聖女を迎えに行かなければいけない。すまない、ガーネット…辛いがしばらくお別れだ。」

「国の大切な聖女をお迎えに行くのは、将来を担う王太子の役目よ。私も辛いけど…」

手を取り合って見詰め合う2人。
本当に…ガーネットがねぇ…

「じゃあ、また後で。」

その、色々な事が起きるのだった。
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