可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

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ガーネットの話では、毎回集まるお茶会のメンバーは学園に入る前の人脈を繋げるためのものでもあったらしいが、今回1人新しい令嬢が加わったらしい。

「それがね、聖女様なんだけど…何て言ったら良いのかしら……」

俺と王太子のロード、そして年下だが頭の賢いガーネットも飛び級で入学が決まっている。
最近田舎の孤児院で見付かった聖女。
突然力が芽生えたとかで、王宮の魔道士達が見つけて王都に連れてきたらしい。
右も左も分からないなら淑女の見本も兼ねてロードの婚約者で学園に入る前から成績優秀が見込めるガーネットと一緒にさせようと、聖女も入学予定者の仲間入りとなった。

「お前なら勉強嫌いだったロードをあそこまで成長させた事もあるし、大丈夫じゃないか?」

「それが大丈夫じゃないのよ。」

「?」

「彼女、会った事も無いのに『ロードライト様はいつ会える?』って、馴れ馴れしく聞かれたのよ?失礼を通り越して怖いわよ。」

俺が記憶を戻してから知ったのだが、この世界ではたまに転生者が現れるという。
ただ、かなり少ないし本人が言わないから分からないが、この100年いないらしい。
100年前に公表されたのは勇者だった。
一般市民なら…そりゃ隠すよなぁ。俺も隠してるし。
きっと、その聖女は『転生者』だ。
異世界転生を自覚して舞い上がったか?
ロードと俺達は幼い頃から幼馴染の様に育ち「ロードライト」を「ロード」と、相性で呼ぶ仲だ。
だが、流石に聖女でも最初からなぁなぁはダメだろ。


でも…
『ロードライト様は?』


あれ?ここってゲームか小説の世界なのか⁉

「兄様聞いてる⁉」

「あっ、あぁ。聞いてる聞いてる。」

「もうっ!これって聖女の力なのかしら?私の事も知ってたのよ。」

「うん、それは…きっと聖女の力なんじゃないかな?」

聖女と書いて「ヲタク」と言う名に変換されそうだけどな。
ガーネットが不安がってる時に「実は兄もその仲間だよっ☆」なんて言ったら卒倒するから今はお口にチャックだ。
きっと、転生前に小説かゲームで全体の流れを知っていて、攻略対象を見ようとテンション上がって聞いてきたんだな。

「私の事『悪役令嬢』って言うの。私が令嬢なのは確かにそうなんだけど、悪役?私は悪役なんかなった覚えはないわよっ。本当に失礼しちゃうわ。あと…コーリャク?何なのよっ、もうっ!」

あぁ、ビンゴ☆
聖女よ…突っ走ったな。

「聖女もここに連れて来られて混乱したんじゃないのかな?そんなだから王宮もしっかり者なお前に任せたんだろう。まぁ、お茶じゃなく気を鎮めるハーブティでも飲んで落ち着け。ジルコン、入れてやってくれ。」

「了解。お嬢を「悪役」ねぇ…一度顔を見てみたいもんだね。」

苦笑いをしながらジルコンが鎮静作用のあるハーブティを入れる。
ガーネットは幼い頃から良い子だし『悪役令嬢』と呼ばれるような人格でもない。今は『国の生きた宝石』とまで呼ばれる程、しっかりとしたウチの自慢のご令嬢だ。
ガーネットが悪役令嬢と呼ぶなら、ここに来た聖女は…この世界の主人公ってとこか。

……ん?じゃぁ、俺は「悪役令嬢の兄」?

ってことは、俺はモブかぁ♪
こういうのはメインじゃなくて、モブとしてそばで眺めるのが一番楽しいってもんだ。

「今度王宮でパーティがあるんだけど…兄様、に来てよ。」

「最近、身長伸びてきてんだよねぇ。」

そう、微々たるもんだがな!

「だからこそよ。完全に伸びる前に…お願いっ!」

「しょうがないなぁ…」

この世界は男同士の恋愛もアリなせいか、可愛いもの好きな男がいても問題はない。
そのため、記憶が戻って色々と可愛いものを集めた俺は、あまり身長差のないガーネットのドレスをおもしろ半分に着て化粧をしたら思いの外似合い、この世界で女装の楽しさに目覚めて仮面舞踏会などに俺は度胸試しに何度か女装してロードと一緒に参加した。
ロードと一緒ならお咎めも少ないだろうと思ったら、ロードは1回目でバレた。
一気に成長しないとはいえ成長期の俺だ。
そろそろガーネットとの身長差も出始めていたので、この遊びも卒業だと思っていた。

「まぁ、最後って事で。楽しむか♪」

そこそこ大きなパーティでもバレなかったんだ。最後は王宮って何かおもしろいかもな。
学園に入学したら俺も可愛い婚約者とか迎えたらこんな事も出来ないし、しっかり楽しんでおくか♪

俺はガーネットと一緒にドレスを選び、俺の変わりに学園に興味がある遠い親戚が参加という設定でパーティに参加する事となった。


*****************


今日のパーティは聖女のお披露目と学園入学予定の令嬢を中心に集まっている。
少しでも聖女に友達が出来る様にという配慮もあるらしい。
そこに各婚約者達が勢揃いという事もあり、今回はロードももちろん参加していた。

「やぁ、ガーネット。今日も一段と綺麗だ。」

「ありがとう、ロード。貴方も…昨日より更に素敵だわ。」

「あ、やぁ…リオ。今日も一段と…面白…いや、可愛いね。女装としてじゃなくて本当の令嬢にしか見えないよ。」

ガーネットに気を取られ、思い出したように俺に声を掛けた。
今や理想の美男美女カップル。
ここまで甘く無くて良いが、仲の良いカップルは理想だよな。

「ありがとよ。」

お前、今面白いって言いかけただろ。

「あ、もちろん…一番素敵なのは君だよ…」

「ロード…」

ロードライトがそっとガーネットの手を取って自分の唇を寄せた。
ここまで思いを寄せてくれりゃ、兄としては大満足。
こんな2人の仲を裂く聖女……どっちが悪役令嬢なんだか…他を当たれないもんだろうか。

「じゃぁ、行こうか。」

俺達はパーティ会場へと足を運んだ。

パーティ会場は見知った顔もチラホラいたが留学生や婚約者など、全員知った顔ではなかった。
ロードに連れられてガーネットは人混みへと消えた。
俺のする事は、今は取り敢えず壁の花になって、全体を眺めながら雰囲気を楽しむ事かな。
あ、このケーキ美味そう♪


___タタタッ!___


「きゃあっ!ロードライト様ぁっ‼♡」
「…っ⁉誰だ君は!」

「ストロベリー様、突然失礼にも程があるわっ!場所をわきまえなさいっ‼」

___ザワザワ…___

あ~…噂をすれば。結構早かったな。
人混みの中から聞こえた甲高い甘い声に、ガーネットが呼んだ甘い名前…こりゃ、噂の聖女か?

俺も人混みに混ざって近付こうとしたものの、あまりの野次馬に入り込めず、何やかんやとしている間に聖女は警護していた騎士達に連れて行かれてしまった。
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