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「1年生のみなさん、ご入学おめでとうございます……」
入学式当日、ゲームの世界のせいか入学式に保護者の参列はない。
いつものように校長の挨拶がありその流れで生徒会長・寮長とくるんだけど、生徒会長は俺が全く知らない顔だった。
しかもこの顔、雰囲気がモブなんだよなぁ。
今回の攻略対象のポジションが変わったと言う事なんだろうか?
近くにいる財前の存在に霞んでゲームをしてたらすぐに忘れてしまいそうな顔だ。
式の前にクラス発表があったのでクラス別に座っているけど、周りを見る限り何度も経験しているので変わったのは生徒会メンバーと寮長・副寮長だけ……ん?
違った。
「1年のみなさん、ご入学おめでとうございます。」
寮長の財前の挨拶で1年の雰囲気が少し色めき立つ中で俺はユキの隣にいるヤツへ目を向けた。
華奢で色素の薄い肌に染めてはいないであろう茶色の髪はサラサラで顔も小さいのに目がデカい。
見るからに受……攻略対象者…だよな?
でも、名前を思い出せない。
___ズキン…___
「…っ…」
少し離れているのにユキが俺の方を向いて心配そうに口がパクパクと動いている。
そんなデカい声出したかな?
俺は大丈夫だから前を見ろとジェスチャーで伝え、落ち着く為に深呼吸した。
う~ん…思い出せない…誰だったかなぁ。
「………です。この学び舎で、たくさんの事を吸収して下さい。」
「それでは、以上を持ちまして入学式を終了致します。」
教頭の締めの言葉を合図に1年のクラス担任が各教室へ移動するように促し、俺達は自分達の教室へと移動した。
ガヤガヤと賑やかな新しいクラスは主人公のユキがいるせいか他のクラスより活気がある。
まだまだ中学生の幼さの残る顔が卒業式前にはしっかりとした顔へと変わるので何度も経験した俺はいつしか親の気分になっている。
「マコ、席離れたね。」
最初の席順は出席番号順でユキは桜庭、俺は平川。
「さ」と「ひ」だから、あわよくば隣の席か近い席…と、思ったんだろうなぁ。
クラスの雰囲気は変わらないものの俺の知らない人間も少しいるせいか俺とユキの席が離れた。
でも、前のユキはそんな事で不安にはならなかったんだけどなぁ。
ま、たまにはこんなイレギュラーも楽しいよな。
今回は先が見えないから初めてゲームした時を思い出してワクワクする。
「もぅ、ユキは寂しがりだなぁ。6クラスもあったのに同じくクラスじゃん。1組と6組で離れてるヤツもいるんだぞ。それに比べたら…って、何?」
「……誰が言ったの?」
ヤベッ、それってモブだけど後で知るエピソードだった。
今回イレギュラーなストーリー展開でウッカリ油断してた。
「…え~…誰だったかなぁ…」
___ギュウ…___
「…痛っ…」
ポリポリと指で頬を掻いて誤魔化していたら、机に置いていたもう片方の手を強く握られた。
「…誰?」
今まで見た事が怖いユキの怖い目に俺は固まってしまったが、不穏な空気の流れを一瞬で打ち消す声に俺は救われた。
「なぁ、お前ら元々仲良いの?」
「「…ハッ。」」
「ゴメン、何か真面目な話でもしてたか?俺、空気読むの下手でさ……あ、俺は西園寺 実咲。俺、引っ越したばかりで寮に入ったからさぁ。あ、お前ら同じ寮組だよな?こないだのオリエンテーションで見掛けてさ、しかも同じクラスじゃん?これは仲良くならなきゃって思ってさぁ♪」
………フォォ…陽キャだぁ…
「あ、おま…君は出席番号次だよな?」
うんうん、いきなり「お前」呼びしないのは好印象だぞ。
そのせいか、ユキもさっきの財前の時とは真逆でいつもの穏やかな表情で返事をした。
「うん、君の後ろの桜庭 由樹。下の名前で良いよ。」
「ん、さっき聞こえたけどユキじゃないのか?」
「あ…ユキって、呼び方は家族以外は違和感あってあまり呼ばれたくないんだ。」
ん~…西園寺くん、初っぱなその選択は駄目だよね。
親密度が下がるぞ。
「分かった、君は?」
「俺は平川 誠。みんなからはマコって呼ばれて…」
___ズッキィィン!___
「うっ…!」
「マコ⁉」
「平川っ!」
「…ゴメン…」
思い出した…コイツ…西園寺 実咲も攻略対象者だ。
「大丈夫か?」
心配そうに西園寺が俺の顔を見る。
確かコイツって結構手強いツンデレだったはずなんだけど、何でこんな陽キャになってんだ?
「…ありがと、大丈夫。」
「そうか、なら良いんだけどさ。」
「…マコ、寮に帰ろうか?」
「ユキも心配し過ぎ、大丈夫だから。」
「平川…」
「マコで良いよ。」
「じゃあ…マコ、熱は無いのか?」
___コツン___
「…っ⁉」
逃げる間もなく西園寺の額が俺の額に当たり、熱を測られた。
うぉぉおおおっ、睫毛っ…なっげぇぇ‼
瞬きしたら風が起きるんじゃないのか⁉
パニックで動けずにいると、熱は無いねと西園寺が離れた。
「そうか、なら良いんだけど…マコ、しんどかったらすぐに帰るから言ってね。」
「そうだな、それが良い。」
ん~…しかし、この2人はやけに仲が良いよなぁ。
「…西園寺…くん。」
「おぅ、実咲で良いよ。」
「俺も…やっぱりユキで良いよ。」
えぇ⁉もう、ユキ呼び解禁⁉
今回は西園寺モードか??
その後のHRでの自己紹介やら諸々の出来事は全く記憶に残らない程、俺は動揺していた。
入学式当日、ゲームの世界のせいか入学式に保護者の参列はない。
いつものように校長の挨拶がありその流れで生徒会長・寮長とくるんだけど、生徒会長は俺が全く知らない顔だった。
しかもこの顔、雰囲気がモブなんだよなぁ。
今回の攻略対象のポジションが変わったと言う事なんだろうか?
近くにいる財前の存在に霞んでゲームをしてたらすぐに忘れてしまいそうな顔だ。
式の前にクラス発表があったのでクラス別に座っているけど、周りを見る限り何度も経験しているので変わったのは生徒会メンバーと寮長・副寮長だけ……ん?
違った。
「1年のみなさん、ご入学おめでとうございます。」
寮長の財前の挨拶で1年の雰囲気が少し色めき立つ中で俺はユキの隣にいるヤツへ目を向けた。
華奢で色素の薄い肌に染めてはいないであろう茶色の髪はサラサラで顔も小さいのに目がデカい。
見るからに受……攻略対象者…だよな?
でも、名前を思い出せない。
___ズキン…___
「…っ…」
少し離れているのにユキが俺の方を向いて心配そうに口がパクパクと動いている。
そんなデカい声出したかな?
俺は大丈夫だから前を見ろとジェスチャーで伝え、落ち着く為に深呼吸した。
う~ん…思い出せない…誰だったかなぁ。
「………です。この学び舎で、たくさんの事を吸収して下さい。」
「それでは、以上を持ちまして入学式を終了致します。」
教頭の締めの言葉を合図に1年のクラス担任が各教室へ移動するように促し、俺達は自分達の教室へと移動した。
ガヤガヤと賑やかな新しいクラスは主人公のユキがいるせいか他のクラスより活気がある。
まだまだ中学生の幼さの残る顔が卒業式前にはしっかりとした顔へと変わるので何度も経験した俺はいつしか親の気分になっている。
「マコ、席離れたね。」
最初の席順は出席番号順でユキは桜庭、俺は平川。
「さ」と「ひ」だから、あわよくば隣の席か近い席…と、思ったんだろうなぁ。
クラスの雰囲気は変わらないものの俺の知らない人間も少しいるせいか俺とユキの席が離れた。
でも、前のユキはそんな事で不安にはならなかったんだけどなぁ。
ま、たまにはこんなイレギュラーも楽しいよな。
今回は先が見えないから初めてゲームした時を思い出してワクワクする。
「もぅ、ユキは寂しがりだなぁ。6クラスもあったのに同じくクラスじゃん。1組と6組で離れてるヤツもいるんだぞ。それに比べたら…って、何?」
「……誰が言ったの?」
ヤベッ、それってモブだけど後で知るエピソードだった。
今回イレギュラーなストーリー展開でウッカリ油断してた。
「…え~…誰だったかなぁ…」
___ギュウ…___
「…痛っ…」
ポリポリと指で頬を掻いて誤魔化していたら、机に置いていたもう片方の手を強く握られた。
「…誰?」
今まで見た事が怖いユキの怖い目に俺は固まってしまったが、不穏な空気の流れを一瞬で打ち消す声に俺は救われた。
「なぁ、お前ら元々仲良いの?」
「「…ハッ。」」
「ゴメン、何か真面目な話でもしてたか?俺、空気読むの下手でさ……あ、俺は西園寺 実咲。俺、引っ越したばかりで寮に入ったからさぁ。あ、お前ら同じ寮組だよな?こないだのオリエンテーションで見掛けてさ、しかも同じクラスじゃん?これは仲良くならなきゃって思ってさぁ♪」
………フォォ…陽キャだぁ…
「あ、おま…君は出席番号次だよな?」
うんうん、いきなり「お前」呼びしないのは好印象だぞ。
そのせいか、ユキもさっきの財前の時とは真逆でいつもの穏やかな表情で返事をした。
「うん、君の後ろの桜庭 由樹。下の名前で良いよ。」
「ん、さっき聞こえたけどユキじゃないのか?」
「あ…ユキって、呼び方は家族以外は違和感あってあまり呼ばれたくないんだ。」
ん~…西園寺くん、初っぱなその選択は駄目だよね。
親密度が下がるぞ。
「分かった、君は?」
「俺は平川 誠。みんなからはマコって呼ばれて…」
___ズッキィィン!___
「うっ…!」
「マコ⁉」
「平川っ!」
「…ゴメン…」
思い出した…コイツ…西園寺 実咲も攻略対象者だ。
「大丈夫か?」
心配そうに西園寺が俺の顔を見る。
確かコイツって結構手強いツンデレだったはずなんだけど、何でこんな陽キャになってんだ?
「…ありがと、大丈夫。」
「そうか、なら良いんだけどさ。」
「…マコ、寮に帰ろうか?」
「ユキも心配し過ぎ、大丈夫だから。」
「平川…」
「マコで良いよ。」
「じゃあ…マコ、熱は無いのか?」
___コツン___
「…っ⁉」
逃げる間もなく西園寺の額が俺の額に当たり、熱を測られた。
うぉぉおおおっ、睫毛っ…なっげぇぇ‼
瞬きしたら風が起きるんじゃないのか⁉
パニックで動けずにいると、熱は無いねと西園寺が離れた。
「そうか、なら良いんだけど…マコ、しんどかったらすぐに帰るから言ってね。」
「そうだな、それが良い。」
ん~…しかし、この2人はやけに仲が良いよなぁ。
「…西園寺…くん。」
「おぅ、実咲で良いよ。」
「俺も…やっぱりユキで良いよ。」
えぇ⁉もう、ユキ呼び解禁⁉
今回は西園寺モードか??
その後のHRでの自己紹介やら諸々の出来事は全く記憶に残らない程、俺は動揺していた。
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