BLゲームのお助けキャラに転生し壁を満喫していましたが、今回は俺も狙われています。

mana.

文字の大きさ
上 下
2 / 21

1

しおりを挟む
___目が覚めたらそこは異世界だった___

うんうん、分かるよ。
今は大流行だよな、俺も大好物だ。
昨日も録り溜めていたアニメを1日かけて観てたよ。
アニオタの休日はこんなもんだ。
え、そりゃ筋トレはしてるよ?
推しのコンサートで思い切り腕振って、本を買いに会場での競歩なウォーキング。
オタク資金を貯めるための日々の粗食で今年の健康診断の問題はギリギリクリアだ。

そんな俺が、ある日目を覚ますと…

『…おめぇ誰だ?』

思わず某アニメの主人公のすっとボケた声で鏡に向かって言ってしまった。
実写になると理解に時間が掛かったが部屋の装飾やノートに記された名前、同室の幼馴染の名前を見て察した。
ふぉぉ…俺も転生者の仲間入りじゃん。
しかもBL恋愛ゲームのお助けキャラ。
推しの主人公を間近で拝めるのかぁ。

そこから何度も赤ちゃんか主人公と出会う前からスタートし、高校で攻略のアドバイスをして何度もクリアしては壁としての美味しいシュチュエーションを堪能しましたでゴワス。

「…マコ?」

「ひゃんっ!」

___ビクッ!___

俺の推しの声が耳元で囁く。
ダミヘ経由じゃない耳元は反則だと思う。
おかしい…今までただの幼馴染兼お助けキャラだったのに、何故か今回は俺に絡んでくる。

「…っ……プッ…クスクス、何て声出してんだよ。」

「え…あ…ゴメン、何?」

前回、ユキが前回の攻略対象について泣き言を言ったんだけど、久々に泣いた姿に驚いて思わず抱き締めて慰めてしまった。
元々ハッピーエンド・バッドエンドは無限大と言われたこのゲーム。
さぞかし声優さん達の収録は地獄だっただろうと思うが、ユーザーからしたら神ゲー以外の何ものでもない。
前回までは小学校入学式以外は泣かないヤツだったのに、今回は出会った時からよく泣いていた。
ま、流石に中学入る前には落ち着いたんだけどな。

「これ、母さんがマコとお揃いでって。」

「わぁ、これ肌触り良いんだよなぁ♪」
 
手渡されたのはモコモコした部屋着。
生まれ変わる前は似合わなかったけど、今の顔は似合わなくもないから気にせず着る事が出来る。
ま、高校生だしな!
でも……

「ユキ…」

「何?」

「叔母さん、間違えて買ったのか?短パンなんだけど?」

ユキのを見たら長ズボンだ。
何故だ?

「この色は短パンしかなかったんじゃない?それに、マコは長ズボンは暑くなって布団蹴っちゃうでしょ?」

「まぁ、そうだけどさ。」

確かに今回、寝る時の部屋着は短パンではあったが…俺、もう高校生だよ?
ゲームでこの服見た事あるけど、夜は上半身しか画像無くて下は分からなかったんだよな。
今回のこの服…前回までは「もう高校生だし」って、下は長ズボンになったんだけどなぁ。

ユキと俺の母親同士が小学校~大学までの一貫校で仲が良かったので、今も家族ぐるみの付き合いだ。
ユキはBLゲームの主人公にしては身長も高く、ルート次第ではリバもアリなんだよね。

「叔母さんにお礼言っといて。」

本当の名前は由樹ヨシキだけど、女の子みたいな呼び方を小学校高学年から嫌がって今は家族と俺しか呼ぶ事を許していない。
特別な呼び名…攻略対象もこの呼び方になれば攻略した事もすぐに分かるのは有り難いよね。
ちなみに俺は別に呼ばれても全く気にならないのでみんなから『マコ』って、呼ばれている。

「あれ、このハンカチまだ持ってたの?」

「ん~、何か手放せなくて。」

ユキの机の上に見えた思い出アイテム『思い出のハンカチ』

これは小学校の入学式で俺があげたやつだ。

あの日…

『もぅ、泣くなよ。』

『だって…』

ポロポロと泣くユキ。
子どもあるあるとは思うが、入学式で女の子みたいと揶揄われ言い返せない自分が悔しくて泣いてしまった。
あの時は小さくて可愛いくて…女の子に間違えられるくらい目が大きくてキラキラしてたんだよなぁ。
揶揄ったヤツ、絶対ユキの事が好きになったんだと思う。

『ホラ、これで涙拭けよ。』

『グズッ…うん…』

『そのハンカチあげる。これは特別なハンカチなんだぞ。』

一番最初にウッカリ適当にハンドタオルを渡したら『思い出のハンカチ』が『思い出のハンドタオル』となってしまい、薄汚くなってしまってキラキラなエピソードの邪魔になったんだよなぁ。
設定では小さな頃にもらったとか書いてるから、てっきり小学生の誕生日にでもあげたのかと思いきや…まさかこのシーンが思い出のハンカチになるなんて思わないじゃん。
2回目以降は偶然TVで観た特撮のヒーローが手首に巻き付けていたハンカチが商品化されていて、サンタクロースオヤにお願いして買っ…ゲフンゲフン…プレゼントしてもらったんだ。

『…あ…これ、イケるんジャーのハンカチ。』

『そう、これを持ってたら強くてイケメンのイケるんジャーになれるんだぞ。』

『……でも…』

キラキラ目を輝かせながらもユキが渋る。

『俺はもうイケてるから良いのっ!』

グイッと、押し付けるように渡すとユキがはにかんで言った。

『もったいなくて涙拭けないよ…ん…もう、ぼ…俺…泣かない。』

はぁぁあん!思い出しても癒やされるぅ。
僕っ子だったユキがここでになる。
…不安な時は今でもこっそり持ってるんだよなぁ。
ゲームじゃ高校生から始まるもんな。
何度生まれ変わっても記憶はあるけど、毎回可愛いユキが見られる事にニヤけ顔を落ち着かせるのに苦労したもんだ。

いくつかあったストーリーの中で、攻略対象との会話に…

『そのハンカチの代わりに…俺はなれないかな?』

攻略対象から言われるワンフレーズ。
頬を染めて頷くユキのスチルは凄く可愛いんだよなぁ♪

「マコ、さっきからどうかした?」

…ハッ、いかんいかん!ウッカリ妄想に耽ってしまった。

「ゴメンゴメン、何でもないっ。懐かしいなぁ…って、思ってさ。」

「…うん、これは俺にとって大事なものだから…」

大切にハンカチを胸に抱く。
うんうん…嬉しそうにはにかむその笑顔…頂きました。
高校生になってもクッソ可愛いなぁ…俺よりデカくなったけど…
ユキはテキパキと荷物を片して気付けば俺の荷物を整理してくれている。

「ユキ、良いってば!」

「だって、ボ~ッとしてんじゃん。」

おかしい…今回は本当におかしい。   
今までは俺がしっかりしてたはずなのに、テキパキなユキって調子が狂う。
毎回同じ事の繰り返しの中にちょっとある違いはあるものの、これから始まるBL展開にワクワクが止まらない自分がいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました

拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。 昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。 タイトルを変えてみました。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

魅了魔力ほぼゼロなインキュバスの俺ですが、魔族公爵に溺愛されています。

mana.
BL
魔界の生き物は産み落とされた時からある程度の魔力を備え、力のない者は自然淘汰されていく。 偶然魔獣の生体バランスの調整に来ていた公爵が俺を見つけて気紛れで拾われ生き延びた。 インキュバスで魅了の魔力がほぼない俺は、試験に落ちたものの剣の素質はあったので従者として屋敷に留まる事ができた。 ********************* 今回のお話は短編です。 剣術に長けると書きながら、お話には全く出てきません。 楽しんで読んで頂けると嬉しいです。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました

及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。 ※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19

処理中です...