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【番外編】その他

バレンタイン2023 《1》

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「ねぇねぇ、シオン。」

「おぅ、何だ~。」

今日はクロバイとカヤはローズを連れて屋敷へ。
オークは子ども達と姉さん達を連れ、精霊の森の奥に住んでいる精霊達との交流に行っている。
オークが精霊達にか…大丈夫だろうか?
姉さん達もいるから大丈夫だよね?
でも折角久々にライと2人きりになったし、ゆっくりしようと庭にある椅子に腰掛けてハーブティを飲んでいた。

___チチチチ…___

「ハァ…穏やかだねぇ~。」

「全くなぁ~。」

ここに来てからというもの必ず誰かがそばにいる。
大丈夫と言っても聞かないんだもんなぁあの3人、また魔力上がったし…今では魔王レベルなんじゃないかと思う。
そんな魔王城みたいな場所に踏み入れるチャレンジャーなんていないだろ?
そして俺達にも子どもが出来て更に賑やかになってるし。
こんなに鳥の囀りが微笑ましく聴こえるのなんて何年振りだろう?

「…でさ、もうすぐバレンタインだよね…何か考えてるの?」

「えっ…バレンタイン…あ…そっか、そう…だな…アハハ…そうだなぁ~…」

いかんいかん、物思いに耽ってて内容聞いてなかった。

「……シオン……」

「はい…」

「…子ども達が生まれる前のハロウィンの時にも思ったけど、まさか…」

「そうだよ、考えてないっ。」

「えぇ⁈バレンタインだよっ⁈」

「だってネタも浮かばんだろうがよっ⁉」

そうです、バレンタイン。恋人達の日です。
日本じゃ毎度チョコでも良いけど、ここは異世界。
海外テイストな贈り物チョイスにオヤジな俺にはネタは即尽きた。

「もぅっ、今までどうしてたの?」

「いやぁ~、花とか…花……とか………花………とか……だな。」

「花しかないじゃん!」

基本クロバイは2人に自慢するタイプではない。
ハロウィンの時も偶然目撃をして2人が知ったくらいだ。
毎年色々趣向を変えて贈り続けているライは本当に偉いと思うけど…

「…なぁ…ネタに困らない?」

「ネタ?お笑いでも狙ってるの?」

「いや…そうじゃないけどさぁ…」

カカオの木も作ってもらったもののチョコを渡すだけってのも味気ないし、だからって…

___俺を…食べて…♡___

「……とか、思ってるでしょ?」

「おわっ!な゛っ……俺、声出てた⁈」

呆れた顔のライがこちらを見て言った。

「顔に出てるよ、本当には…」

たまに出る
昔を思い出してちょっと懐かしくなる。
昔は敬語だったけどな。

「どうせ転生前にバーのママから『それくらい言いなさい』とか言われたんでしょ?あ…それとも…当時の恋人に…」

「わぁあっ!いいい言う訳ないだろっ‼︎」

「あ、言ってもらったのか。」

「違うわっ!」

「アハハ、シオンは面白いなぁ。」

そしてライは昔バーのママから教わったという、バレンタインの贈るお菓子の意味を教えてくれた。

「チョコは日本じゃ定番だったよね?」

「あぁ、俺も会社の子からよくもらった。」

「俺も貰ってたけど、シオンはモテてたもんねぇ。」

「お前と違って、俺は義理チョコや友チョコだぞ。」

「えぇ~、シオンには本命もあったよ?知らなかったの?」

「えっ、マジか⁈」

「チョコはね、『あなたと同じ気持ちです。』って意味。そう考えると、本命で送った子からしたら友チョコや義理チョコと思って受け取ってたシオンの気持ちは同じじゃないけどね。」

「確かに。」

「それなら『あなたが好き』って意味のある飴を贈る方が良かったかもね。」

「あ、それならあったかも。」

「あったの?」

「あ…いや…まぁ…あの時は…」

確か…『チョコばかりだと飽きますよね、バレンタインらしくないけど…飴細工の可愛いのを見つけて…』って、くれたんだよなぁ。

「策士だね。」

「そうかぁ、結局気付いたの今だぞ?」

「プハッ、そりゃダメだ。」

「あの時は確かにチョコが多かったし、飴細工はどこ食べて良いのか困ったけどチョイスは嬉しかったなぁ。」

「他の物はなかったの?」

「ん~…たまにマカロンとか…マドレーヌとかはあったかな。今考えると、みんな『チョコばかりだと…』って、言ってたな……ハッ…それって…」

「マカロンは『あなたは特別な人』、マドレーヌは『仲良くなりたい』だよ。マドレーヌは友達としても取れるけど、マカロンは本命に近いんじゃないかな。」

「えぇ~…」

「まさか、ホワイトデーにマシュマロなんて返してないよね?」

「え゛っ⁉」

「…返したのか…」

「…返しちゃった…」

ダメなのか…マシュマロは『あなたのことが嫌い』だそうだ。
どうりで半泣きで受け取るはずだ。
せっかく考えてくれたのだからお礼に…って…美味しいし、ココアにでも浮かべて飲むと可愛いなと思ってあげたのに…マシュマロ可哀そう。

「ま、色々言ったけど、こういったのはお互いの気持ちの問題だから好きなら何贈っても良いと俺は思うけどね。」

確かにライの言う通り。
例えばこないだ森に落ちていた葉っぱが綺麗だからと子ども達がくれたが、嬉しくて栞に加工して残している。

「そういや、ライはクロバイに何をあげるんだ?」

「ここ数年はマロングラッセだよ。」

「マロングラッセ…って、あの栗の甘いやつだよな?あれ素人でも作れるのか?」

「うん、手間は掛かるけどね。この世界の栗は少し大きいけど甘味あるし、しかも渋皮がないから剥きやすいよ。」

…栗かぁ…確かにウチの屋敷のはデカかったなぁ。

「あ、シオンの所は発育良いから更に大きいと思うよ?精霊の森のは手入れしてない自然のものだからちょっと小さいくらいかな。今度一緒に拾いに行く?」

ウチのは肉まんサイズの栗だからどうかとおもったけど、転生前のサイズより一回り大きいなら大丈夫だろう。
あの時の皮剥きはかなり辛かった…

「面白そうだけど、何でマロングラッセなんだよ?しかもお前が何年も同じって意外だな。」

「あぁ、それはね…」

「…マロングラッセの意味は『永遠の愛』…だからだ。ただいま、ライ…チュ。」

ライが俺に説明をしようとした時に、突然ライの後ろからクロバイが姿を現してライを抱き締めて頬にキスをし、首筋に顔を埋めた。

「…ん…お帰り、クロバイ。」

「今年もくれるのか?」

「もちろん、凄く甘いのをね。」

「それは楽しみだ。」

ん~…クロバイが戻って来たとなると…こりゃ…嫌な予感がする。
俺達も転移魔法も今では使いこなし、普通なら気配も消しての移動が出来るが急いでいると…


___ブォンッッ!___


「「ただいまぁっっ‼」」

「うひゃぁあっ⁉」

旋風と共に現れた。
それぞれ違う場所にいたのに同時に現れるたぁ…コイツらホントに仲良いと思う。

「どうだ、今日は俺が先に言ったぞっ!」

「違うね、俺だ。」

「えぇいっ!煩いわっ‼」

もっとスマートに『ただいま』が言えんのか?
子ども達にも示しがつかんわ。

「クスクス、2人共お帰り。」

ギャーギャー煩い俺達の横で、クロバイに後ろから抱き締められたままのライが幸せそうに微笑んだ。
こういう雰囲気にいつなれるんだ?

「あ、オーク。子ども達は?」

「あぁ、疲れてたみたいだからそのまま部屋で寝かせた…で、何か胸騒ぎがしたから移動魔法使った。」

「まぁ、正解だったみたいだね。」

「あれ、姉さん達は?」

「あぁ、2人は春の精霊に呼ばれてそっちへ向かった。」

「そっか。」

良かった…姉さん達に聞かれたら何が起こるか分かりゃしない。
……2人にバレンタインの事を聞かれて無いよな…
ギャーギャーと騒ぐ2人を見ながら今年は花以外を送ろうと考えていた。
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