目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【番外編】普通な日々 ユズver.

9 【最後の日】

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人生に終わりが近付いている時、人は子どもに返っていくと聞いたけど…本当にそうだよね。
歩くのも食べるのも、子ども達や使用人に頼まなきゃ出来ない。
フフ…最近僕が目を瞑れば夢の中で人生を振り返るのは…もうすぐ僕もオリーの元に行けるという事なのかな……


オリー、君は最期に言ってたね。
「普通なんてものはこの世に存在しなかったんだな。」って…確かにそうだったよね。


あれからまた子どもが出来て8人になったよね。
シオン兄様は「スエヒロガリ?で、縁起がいいんじゃないか。」って、言ってたよね。
オリーは去年、天に還ってしまった。
僕と兄様達、子どもや孫達みんなで見送る事が出来た。

最後に何度も「楽しかった…」って。
うん、僕もそう思うよ。

___バタバタバタ…___

「おじいちゃま!」

「…どうしたんだい?」

1番小さな孫、マーガレットが花を持ってやって来た。

「おじいちゃま、今日のお花は…タ…タタタ……何だっけ?」

「クスクス…タンポポだよ、マーガレット。」

「シオン兄様。」

公爵の屋敷で、僕はオリーと過ごしたこの寝室で…最期を待っている。
最近は起きている時間も…目を開けている時間も減って、夢の中でオリーと精霊の樹の下で過ごすとこが増えたなぁ…

「マーガレット…ママとパパを…呼んできてくれる?」

「うん、お水かな?分かった!」

パタパタと走るマーガレットの足音…フフッ、サクラの小さな頃に似てきたな。

「…兄様…」

「…ん…?」

変わらず綺麗なシオン兄様。
オーク兄様とカヤと…ずっと歳を取らず…妖精王クロバイから代替わりで更に長生きをしていく…

「僕…そろそろ…かな…」

「あぁ…そうかもな。」

サラリと、子どもの時の様に頭を撫でてくれる。

「フフッ…兄様…僕…もうお爺ちゃんだよ?」

「いや、可愛い俺の弟だよ。」

「天に還るって…怖いのかなぁ?」

「いや、大丈夫じゃないか?だって、オリーは戻ってないじゃないか。」

「そうか…フフッ…迎えに行くって言ってたもんね。」

___コンコン___

「失礼します。」

「父様…」
「父上。」
「おじいちゃま~!」

ゾロゾロと家族が入ってくる。
最後を…声を出せる時に話したいと…僕がこの前お願いした。
そして…息を引き取る時は精霊達に看取ってほしいと。

「ぅ…ヒックッ…父…様ぁ…」

「フフッ…情けない…次の当主だろ…頑張りなさい…」

振り絞って手を伸ばし、当主となった息子の頭を撫でる。
そっか…兄様、こんな感じなんだね。
大人だけど…僕の…僕達の特別な愛する子ども達。

「父上…僕…まだ…薬草…えっ…教わってないっ…」

1番下の子が僕に縋り付く。

「すまんな…でも、サクラがいるだろ?」

サクラももうすぐ天へと還るだろうけど…ミズキもいるし、上の兄弟達で大丈夫。

「フフッ…こんなに子どもが出来るなんてなぁ…ビックリだ。」

「確かになぁ…精霊達もお前が大好きだったからなぁ。」

精霊に愛され、強い加護を持つローズウッド家。
沢山の加護に、沢山の愛をもらった。

「おじいちゃま、どっか行くの?」

「…あ…うん…すまないね、僕…オリーおじいちゃまに会いに行くんだ…」

「オリーおじいちゃま、帰ってないよ?」

「うん、だから一緒に向こうで住もうと思って…」

「…う…うぇ…ヤダ…ッ…」

…あ、眠くなってきた…

「……そろそろ、ユズが眠そうだな。みんな、部屋を出よう。」

「うん…父様…どうか…お元気で…」

「父様…愛してる…」

1人…また1人…僕の手を握ったり、頬にキスを落としていく。
最後の1人が僕の手にキスをしたと同時に僕は眠りについた。



************************************



目を開けると、あの日…オリーに初めて最後まで抱かれた閨の晩の様な月明かりが部屋を灯していた。

「……あ…」

「…起きたか…?」

「…シオン…兄様…」

横を見ると微笑むシオン兄様と…オーク兄様、カヤ…クロバイ…そしてその子ども達。
ママと姉様、精霊達が僕の周りを浮遊している。

「兄様…抱っこ…して…?」

僕は兄様に手を伸ばした。子どもも孫もいないから…甘えたって良いよね。
もう大人っぽく振る舞う必要もないんだ。
昼間は力が出なかったのに、何故か今は少し身体が軽いかも。

「良いよ…フフッ…可愛い。」

そんな事ないよ。もう…ふっくらしたあの頃と違って骨張って…ガリガリだよ?

「ユズ…俺の弟に生まれてくれて…ありがとうな…」

「うん…ねぇ…兄様…」

「何?」

ゆっくりと頭を撫でてくれるシオン兄様の指先を…段々と感じられなくなってきた。

「…兄様…僕…眠い…」

「ん…そろそろだからな…」

___ポゥ…___

精霊の光の中で、1つだけ…輝きが違う光がそばに来た。

「…何…?」

「お迎え…かな?」

___フヨッ___

クルクルと回った光は、ゆっくりと僕の胸の中に消えていった。

___トクン…___

「あぁ…灯火が…消えるね…」

「兄様、みんな…僕…楽しかったよ…」

「うん…」

「俺達も…楽しかったよ。」

「兄様…僕ね…」

「…う…ん…グズッ。」

「フフッ…笑ってよ…兄…様…」

「ユズ…ごめんな…一緒に…歳…取れなくて…」

段々と自分が幼い頃に戻っていく…良いんだよ…兄様…だって兄様、幸せそうだもの。
今は泣いてるけど…僕、兄様の笑顔…好きだよ。

「にぃさま…だ…ぁ…い…好き…」

「俺も…俺達もだよユズ…愛してる…お休み…良い夢を…チュッ…」

兄様が僕の額にキスをすると、冷えていくはずの僕の身体が温かく軽くなっていく…
兄様…こんな力…持ってたっけ?

___ユズ…___

…あ…この声…

___迎えに来たぞ___

オリー…
スルリと身体が抜ける感覚があると、目の前がパァッと輝いて見える。
下に見えるのは…兄様達…みんなが僕にキスをしている…

___還ろうな___

光と共に僕は昔の姿に戻る。
1番楽しかった時の姿だ。

___オリー…待った?___

___いや、大丈夫だ___

___フフッ…楽しかったね___

___あぁ、確かに___



そして…僕らは抱き合い…風に乗って天へと登り、深い眠りについた。




End.


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