目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【番外編】普通な日々 ユズver.

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___ ……………… ___


「にぃたま~っ!」

これは…夢…だよね…ヨチヨチ歩いていた僕を両手を広げて待っているシオン兄上。
とっても綺麗でとっても強い、僕の大好きな人…

「ユズ~♡」

フワリと香る優しい香りと優しい声は俺の大好きな兄上、シオン・ローズウッド。

「にぃたま…っ…きゃあっ♡」

___ぽふっ…___

「あぁぁああっ!ユズ~~っ‼︎可愛いっ!」

「にぃたま!しゅきっ‼︎」

頬をスリスリと擦り寄せてくれる僕だけの特権。
本当に大好き。
ずっと一緒にいてくれたけど…カヤとオーク兄様によく連れて行かれたな。
そんな時…オーク兄様に連れられた第4王子のオリーブと出会ったんだ。

「ユズ、ご挨拶頑張ってみようか?」

「はいっ!えっと…お初に…お目にかかります。ユズ・ローズウッドと申しましゅ!」

___カァァァ…___

間違えちゃった…

『う゛っ…可愛い…っ!』
『オーク…顔…緩んでる…』
『お前だってっ!』

兄様達が何か言ってる…怒ってなさそうだけど…第4王子…なんだよね…兄様とちょっと離れてる?

「初めまして、僕はオリーブ。僕と兄上と歳が離れているのは間にもう1人いたんだ。お腹の中にいた時に天に還ったんだって。」

「…あ…知らずに申し訳ございませんっ!」

「良いんだよ。公にしてないから今の君と同じ顔になる人が多いんだ。なかなか兄様の次の子か出来なくて、もう3人いるから良いかって話になった時に俺が生まれたんだって。」

「そうなんですね。」

「ユズ、俺に敬語はいらないよ。同じ歳なんだよね?兄様達みたいに仲良くして欲しい。」

そう言うと、オリーブは手を差し出した。

「は…うん…よろしくね。」

「俺の事は呼び捨てで良いからね、あ…兄様達みたいに『オリー』でも良いよ。」

「…っ!そんなっ…おそれおおいです!」

「……シオンに無いしおらしさだよな…」

「…悪かったな…相手が相手だったからだよっ。」

「……っ…じゃあ…呼び捨て…で…オリー…ブ………恥ずかしい…っ。」

「「ん゛う゛っっ!」」

「………っ…ん゛んっ……よろしくな、ユズ。」

僕はその手を握ると、兄上にぎゅっとしてくれた時とは違ったドキドキがあった。

「オリーって…オークの時と違ってって感じの風格があるよなぁ…将来が楽しみだ♪」

「オリーを褒めてくれるのは嬉しいが、その言葉は聞き捨てならねぇな。」

うん、僕と同じ歳なのに喋り方もしっかりして…凄いよね。
それから父様が僕の自慢をした…?…のと、オリーブの話を聞いたのがきっかけで、何度かシオン兄様や父様と一緒に王宮へ遊びに行く事が増えた。

ある日、王宮の庭にある大きな樹の下で一緒に読書を楽しんでいた時にオリーブに聞かれた。

「……ユズ…ユズは…その…婚約者は…いるの?」

「…どうしたの急に?別にいないよ。兄上みたいに綺麗じゃないし、サクラみたいに賢くもないしね。」

サクラは小さな頃から聡明だった。
絵本も3歳からしっかりと読み始め、今ではもう僕と同じ内容の本を読んでいる。

「ユズは…ローズウッド家を継ぐのかな?」

「僕は…う~ん…そうだね、シオン兄上のことを考えると…婚約者候補のままだけど、きっと王宮に嫁ぐよね。」

小さな頃は薄っすらとしか自覚をしてなかったけど、僕は…ローズウッド家の中では平凡な顔立ちをしている。
兄上やサクラは綺麗だ、可愛いと言ってくれるけど…自分の事はちゃんと理解している。


___僕は…平凡で……普通なんだ。___


そんな僕が、父上の跡を継ぐというのも…何か違和感があるんだけどね。

「…あのさ…ユズ…もし…俺がユズの事…好きって言ったら…どうする?」

「ん?うん、僕もオリーブの事…大好きだよ?」

「……っ!……いやっ…しっかりしろ…俺…っ!」

「どうしたの、大丈夫?」

オリーブが急に顔を真っ赤にして動揺してる?大丈夫かな??

「違っ…いや…違わない…えっと…その…あの……ユズッ!」

___ガシッ!___

「はい?」

「…っ…俺と……こんにゃく…して欲しいっっっ‼︎」


___こんにゃく????___


「間違えたぁぁぁぁ…………っ!」

両手を握って真剣に「こんにゃくして欲しい」?……
……こんにゃく……新しい王宮の遊びでもあるんだろうか?
でも「間違えた」って言ってるよね?

「……あの…オリーブ?」

「……あっ…ユズ…その…あの……」

スクッと立ち上がって涙目のオリーブ。
……あれ?体調悪くしちゃったかな?

「…うっ……今日は気分悪くなっちゃったからまた今度遊ぼうっ!カヤを呼んでくる~~~!!うわぁぁぁああああんっっ‼︎!」

「オリーブ⁈」

えっ…⁈何で…泣いて…えっ…⁈
僕が少し途方に暮れているとカヤが来てくれた。

「ユズ様、大丈夫ですか?」

「カヤ…僕…オリーブに何かしたかなぁ?」

「フフ…沈んだお顔も可愛いですけど、大丈夫ですよ。ただの自己嫌悪です。」

「可愛くないよ。でも何で自己嫌悪なの?」

「…それは…また近々オリーブ様が再挑戦してくるでしょうから、ご本人に聞きましょう。」

「…うん。」

カヤは俺にも優しい。
でもそれはきっと大好きなシオン兄上の弟だからだ。

「いつもの愛らしい笑顔を見せて下さい。貴方の笑顔はローズウッド家の宝なんですから。」

「もうっ、いつもカヤは言ってるけど、僕は自分の顔を十分理解してるんだからね!」

「してませんね。シオン様とまた違った愛らしいお姿なのに。全く…ローズウッド家は家族揃って無自覚なんだから。自覚して下さいね。」

綺麗で何でも出来るカヤに言われてもなぁ…
僕はそう思いながら、カヤと手を繋いで父様に先に帰ると伝え、屋敷へと戻っていった。

それから…数年で屋敷はすっかり変わってしまった。
オーク兄様が断罪され、僻地へと飛ばされた先がクロバイとライ兄様の新居だったのは良かったけど。
断罪された後にした兄様達の結婚式は小さな僕でも感動するほど美しく、今でもしっかりと覚えている。
シオン兄様は、2人と喧嘩をしては「実家?に帰らせてもらいますっ!」って、つい最近も気軽に屋敷に戻ってきたからあまり離れている実感はない。
でも気軽に帰る通路のある精霊の森の事、クロバイが精霊王でカヤが次代の精霊王という事…カヤとシオンとオーク兄様それぞれに運命の紐が結ばれ、兄様は両方選んだという事。
あと、少し変わった事と言えば「俺も昔みたいにって呼んで!」と言われて、シオン兄様も「兄様」呼びに戻った事かな。
小さな僕には全く分からなかった出来事。
今は少しずつ聞いては驚き、そしてあの日はそうだったんだと理解する。
突然屋敷の別館に籠って出てこなかったあの日、一生懸命兄様のためにと野菜を収穫してエンジュにも作ってもらった。
そのおかげでほんの少し野菜には詳しくなって、王宮の庭師とお話する機会が増えた。
クロバイはカヤに執事を任せ始め、少しずつ終わりの準備を始めている。
…でも、精霊王の終わりは…僕らの終わりよりもっと先の話なんだろう。
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