上 下
131 / 145
エピローグ【その後】

後編

しおりを挟む
『シオン~!』

「わぁっ!」

『助けてよっ!シオン!!』

「どうした、ツムギ。」

リビングでお茶をしていたら王宮の精霊の樹が泣き付いてきた。

『…っ…あんたの息子が離してくんないんでしょぉっっ!何で僕、精霊の樹なのに腰痛いのさっ!』

「ふあぁぁ…帰すかよ…王様アイツ…お前をヤラしい目で見んじゃん…あ…おはよ…パパ……」

頭をポリポリと搔いてやって来たのは可愛かった双子の片割れのカエデ……昔は俺に半分似ていたのが、今や完全にカヤになった。

……いや…中身は…違うんだけどな…

『愛妻家なのにそんな事あるわけないじゃん!カエデが見える所にいっぱい痕付けるからでしょ⁉…僕っ…今日は王宮に帰んなきゃいけないのにっ…王様…厳しいんだよっ……わぁあ!』

「大丈夫大丈夫♪オークパパがどうにかしてくれるって♡」

ひょいとツムギを抱えて再び自分の寝室へと戻っていった。

「…んな訳あるか!俺を何年前の王族と思ってんだっ!!」

「……流石はオークの血引いて…元気だねぇ…」
「…お前の血しっかりと引いてんだけどなぁぁ…しかも顔はお前ソックリだろうがよっ!」

「止めろよ、2人共~っ!そりゃ見た目はカヤで中身はオークそっくりに育ったけどさぁ…カエデは俺達3人の息子だろ?」

「「………」」

………あ……ヤバい……!

「ふ~ん…して…良いんだ……」
「成る程……見える所に付けて良いんだ……」

「………あの…その……俺……今日…用事で王宮に……」

「あぁ…大丈夫だ…俺が行く………カヤ…俺は夜な……」
「了解……帰りは深夜でも良いからね♪」
「ちょっ早で帰ってきてやるわっ!」

「じゃぁ…シオン……行こ…♡」
「わぁっ!」

俺はカヤにお姫様抱っこをされて寝室へと向かう。

「カヤッ……今日はローズ……」

「あぁ…大丈夫。ローズはローズウッド家に執事見習いの日だから……今日は向こうで泊まりだよ。」

味方…いない…だとぅ⁉

「だから…カエデは明日の昼までは出てこないだろうし…俺とオークで…存分に愛するから……覚悟しといてね…チュッ。」

「んぅっ!」


………あれから1000年の月日が流れた。


あの後、ローズウッド家はサクラとミズキが継いで精霊の祝福で子どもを作り、今も名は残っている。
ローズウッド家にはエンジュとザクロの子孫・ヒイラギとカイエの子孫もいて、顔や性格の名残は少しあった。
あと、アゼリアは…あの後オークの兄弟の1人に嫁いだ。

俺達の子ども3人の内、カエデは何と王宮の精霊の樹に猛アタックし、運命の紐が何故か結ばれて晴れて愛し子となった。
ただ寿命は分からない。精霊王ほど精霊の樹達の寿命は長くない。
精霊王を産むママやローズウッド家の姉さんは特例だそうだが、まぁ…次の樹が生まれるまで俺達と共に生きるんだろう。
「ツムギ」と付けられた王宮の精霊の樹は、主張が出来るまで強くなった。
カエデに相談されて考えた名前だけど、「ツムギ」は「紬ぐ」…人との関係を紬ぐ意味を込めた。

ミズキは寿命が普通だったのか…それとも本人がそうしたのか分からないが…サクラと共に歳を取り、サクラを看取った後に亡くなった。
普段から好んで飲んでいたハーブティを俺達には絶対飲ませなかったから…精霊が早く歳を取る薬か何かを調合していたのかもしれない。

ダフニは突然変異で精霊としての血が濃く出たのか、途中まで不老長寿でいたが700年前に王子と出会ってからは次第に老いていき、偶然同じ日に老衰で亡くなった。
大人のみんなも、ユズもサクラ達もどの子も俺達みんなで看取った。
みんなの最期は口々に「幸せだった」と、微笑んで逝った。


********

……そして…

「あぁ……そろそろだ……」
「フフ…そうだね……少し…力が抜けてきた…」

300年前…

クロバイとライを…ローズが生まれた樹の下で…俺達みんなで見送った。

「…ローズ…おいで…」

「ライ…パパ……やだ……やだよ…」

いやいやと、子供の様に振るローズにライは笑った。

「触れる内に…いつもみたいに…抱き締めさせて…ね?」

泣くのを精一杯我慢するローズにライは手招きをして呼び寄せる。

「……ローズ……シオンと変わってくれて…ありがとう……そして……お前も…俺の…息子だよ……」

「パパッ…!」

最初は俺に一番懐いていたけど、最期はずっとライにベッタリでクロバイがヤキモチを焼く程だった。
それくれらい、ライはローズを愛した。

「ローズ…お前もミズキと同じくらい愛してるよ…どうか…幸せに…生きて…」

「……ぅんっ…!」

…」

俺に伸ばす手が…薄い…

「…ローズを…お願い…あと……俺……スッゴイ…幸せだった…センパイも…もっと…幸せになってね…」

「うん…俺も…今十分…幸せだから…大丈夫だよ…安心しな。」

「ヘヘッ…幼馴染に勝った…ぞぉっ…!」

「フッ…まだ…そんな事を言って……私は生まれ変わっても……ずっと…ライ…例え転生前の世界へ戻っても…私はお前を探して…愛するよ…」

クロバイの足は…もう見えていなかった。

「もう…消えそう…だね…クロバイ…最期まで…キスして…」

「もちろん…喜んで……」

2人の唇が重なり…深くなった時…姿は細かい光となって、小さな光が2つ…空へと舞っていった。


********

不老長寿になっても腰は痛い……
こんな時にサクラやミズキが育ててくれたハーブティは本当にありがたい…
カヤとオークに散々抱かれた俺は、ローズがこちらに戻ってくるまでにどうにか体力を取り戻した。

ローズは今、ある精霊と運命の紐が結ばれようとしている。

「パパ…僕…最近…何か胸がドキドキする…」

「あ、凄いな。お前は分かるんだ。」

俺達は今、家のリビングでお茶をしていた。

……俺は分かんなかったもんなぁ。

カヤとオークが用事から戻ってきた所で話を振った。

「ローズ…これからパパ達と大事なお話をしようか。」

「お話?」

「そう…ローズ、今度一緒に精霊の森へ行こう。」

「行って良いの?」

「うん、会わせたい子がいるんだよ。」

「精霊の樹が生まれたんだ!うん、会いたいっ!」


……そう、生まれたんだよ…次代の精霊王が……


カヤの見立てでは運命の紐はローズに結ばれようとしている。

「会ってみて、嫌な感じとかあったら…すぐにパパに言うんだぞ?」

「え?精霊に怖い子とかいるの?」


いないはずだよ……だって……


「………初めまして……」

「……はじめまして……」

そう…お互いを見詰める目が…俺達と一緒だもん。

さぁ…たった今、次代の精霊王も俺達の愛息に結ばれた。
幸せは分かち合わなきゃね。
さっそく、今日はみんなを呼んで祝福の祝いだ。

みんな、俺達は今も幸せだよ。
きっと俺達が逝く時はクロバイ達みたいにキラキラと綺麗に逝かないのは確実だけど……きっと結婚式のようにギャーギャ―最期まで言い合って終わるんだろう。

「フフッ…」

「シオン?」
「どうかしたか?」

「あぁ…なんでもない。」

時間はまだまだある。
俺達はもっと幸せに、この子達も幸せにしなきゃな。

end.
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)

黒崎由希
BL
   目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。  しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ? ✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻  …ええっと…  もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m .

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

処理中です...