目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

文字の大きさ
上 下
115 / 145
【18歳】

【18歳】12

しおりを挟む
6月の結婚発表があってからすぐ、クロバイから屋敷の精霊の樹の下に呼ばれた。
そこにはライとクロバイ、ママと姉さん…そして両親がいた。

「今日は……結びの儀式について話しておこうと思う。」

結びの儀式……それは運命の紐を確実のものとする儀式。
精霊王とは命を共にするため、結婚式より絆は確固たるものとなる。

「……今日はアッシュとポーロウニアにも来てもらった。」

最近クロバイも精霊王として振る舞う事も増え、屋敷も口の堅い者を揃えたので口調も精霊の森と変わらない事が増えた。
執事の仕事は癖なのか元々性に合ってたのか、変わらずこなしてくれる。
まぁ、1000年もやってりゃ慣れとかの問題じゃないか。

「………ごめん…父上、母上……」

「何が?」

キョトンとした顔で父が聞く。

「だって……」

いくらユズに後継を任せても……いずれ俺と家族との時間の差がハッキリと出るだろう。

「シオン!」

___ペチッ!___

「あのね、親子は永遠に一緒にいる事は出来ないわ。普通でも私達が先に逝くの。私達がいなくなっても貴方を愛する人がいて、しかも2人もいるんでしょ?それのどこが悲しい事なの?」

はひゃうえははうえ…」

「幼い頃から知っている良い子で最強の2人よ。最強の安心に悲しむ親はいないわ。いくら長くても……貴方達3人だけじゃないでしょ?」

母は俺の頬を両手で軽く挟んで話した後、そっと手を離した。

「……ね…だから…笑いましょう?」

『私達もしっかりと共に見守るわ。』
『私も一緒よ、シオン。』

「ママ…姉さん…」

そうだ…クロバイもいずれいなくなるが、俺にはママや姉さんもいる。

「それで……オーク。」

「何だ。」

「お前も結びの儀式を行うが……お前には選択肢を与える。」

運命の紐で繋がっている俺達。
結びを確実のものにすると命を繋げる事となるから……そっか。精霊王に合わせて俺が生きるなら、俺に繋がったオークもそれに合わせるよな。

そうなると……

「お前は王族だ……長寿の王族は争いを招く。しかもお前は権力争いにもなる人物だ。シオンとも共に生きるなら、王宮はいずれ離れなければいけないだろう…先日王や次期王になるヘイゼルにも話した。お前をちゃんと話したいと言っているから、しっかりと話してこい。」

「……分かった…」

「あと…………ぁ…と……だな………ライ……私には……無理だ……っ。」


___ん?___


厳格な顔をして今まで話していたクロバイが、急にモジモジしだした。

「フフッ……クロバイ……こういうの、苦手なんだね…可愛い……」

クロバイの手をそっと握り、ライが俺達に向き直った。

「結びの儀式をこの屋敷の樹の下で…俺達の結びの儀式……結婚式をしたいと思っているんだ。アッシュ様とポーロウニア様には了承をもらったよ。俺達の事を知っているみんなを呼びたいけど…参加してくれるかな?」

クロバイの顔を見ると顔を赤くして恥ずかしそうにしながらも、ライを見て微笑んでいた。

「うん。もちろんだよ。」
「結婚式……そうか……結びの儀式としか意識がなかった。」

「……結婚式……」

『そうよ、オーク。結婚式。あなたのご両親、ご兄弟も呼べるわ。』
『王宮の精霊の樹は普段から恥ずかしがりやだからなかなか出てこないけど……可愛いあなたの門出なら、きっと顔を出すわね。』

あ、そういや王宮の精霊の樹って見てねぇな。

「あ、そう言えばそうね。私もお会いした事なかったわ。流石に今回はお会い出来ると思ったのに。」

「うん、王と王妃には会ってるみたいだよ。」

精霊は一般人には見えない。
昔はみんな見えていたようだが、今はよほど心が純粋な者か赤ん坊にしか見えていないようだ。
母は愛し子であったローズウッド家の血を受け継ぐ者として、精霊の樹や精霊と見て触れて話す事が出来る。
父は薄っすらと見えていたそうだが、母と結婚してちゃんと見えるようになった。
ちなみにオークは王族なので見えている。

「オーク……」

「俺は……お前を愛している……」

オークの手が俺の頬に当てられて、俺はその手の上に重ねた。

「……分かってるよ。」

「お前達の儀式は卒業後とする。」

話が終わり、オークは早速王宮へと戻っていった。

「……なぁ…ライ。」

「ん?」

「お前は…今の家族は大丈夫だったのか?」

「あぁ……まぁ、俺は三男だからね。貴族の三男は家には不要でしょ?」

「…そうか。」

悪く言えば、貴族の長男は跡継ぎ、次男はスペア。三男以降は…だっけ?

「フフッ、ウチはそんなんじゃ無いよ。田舎の貴族だもん。仲は良いよ……でもさ、田舎貴族だからこそ、家を出るつもりではいたんだよ。」

俺の顔を見て説明してくれた。
あ、そうか。だからゲームでは気にせず王子に嫁げたのか。

「じゃぁ、俺も寮に戻るよ。」

『ダメよ~、あなたはこっち♪』
『精霊の森で準備をするわよ!儀式はすぐだもの♡』

「え?うそっ……クロバイ⁉」

「……すまない……」

『クロバイ、学園と寮に連絡をよろしくね♡』

ママと姉さんがそう言うと、ライを連れて精霊の森へと消えていった。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...