上 下
99 / 145
【17歳】

【17歳】40 オークver.

しおりを挟む
生徒会長の一件からシオンはよく眠るようになった。
カヤに聞くと食欲はある様だが、日に日に寝る時間は増えていく。
心配になってヒイラギに王宮の仕事の調整を頼んで仕事をセーブした頃、クロバイに話があるとシオンの屋敷の精霊の樹の下に呼ばれた。

「待たせたな。」

今日のクロバイの服は執事服ではなく、魔術講義の服装だ。
日々忙しいクロバイに「ちょっと世間話でも」なんて事ではないのは承知していたが……

「おはようございます。朝早くに申し訳ございません。実は……」

クロバイからシオンの転生前の詳しい話を聞いた。
シオンが7歳の魔力覚醒の暴走を封印するのにかなり力を消耗してしまい、それからカヤの魔力は徐々に戻っているが100%ではないという。

シオンの魔力はその時に後から部屋へやって来たクロバイが魔力を封じる宝石を作りカヤがその中に封じたが、カヤ自身は生まれたばかりで魔力が安定してなかったのもあって、シオンのそれまでの記憶もいくつか封印してしまったらしい。
前に魔力循環をした時のカヤとシオンだけでは不十分と感じた時に俺との相性を見て3人で…と、やってみたらクロバイの中で訓練次第と判断したようだ。

「……シオン様の覚醒はまもなくかと。ですので、大変申し訳無いのですが…今日から王宮の仕事を……」

「あぁ…元々シオンの体調も心配だったから仕事を少し控えるようにはしていた。明日以降の件はヒイラギとも話してあったから大丈夫だ。」

「ありがとうございます……あ…」

俺からの視線が外れ、クロバイの視線を追うとシオンとカヤの姿があった。
……あぁ…今日は元気そうだ…良かった…

「おはよう、シオン。」
「おはようございます、シオン様。」

クロバイがシオンに魔力の覚醒の話をする。
精霊の樹が夢の中で話した事と、本人も身体の異変もあるから薄々分かっていたようだ。
クロバイは今日から魔力循環の訓練をすると言った途端

「他に方法は無いの?」
「無いですね。」

あの時の感覚を思い出すと……フフ……訓練も悪くねぇな。

「……まぁ……しょうがないな………♪」

真剣な話だ……ここは真面目に返答しておかないとな。

「………お前ら……言葉と表情が全く噛み合ってねぇぞ……」

……あれ……王宮じゃぁ最近「大人の顔になって」とよく言われるんだがな?

「それでは、時間も無いことですし…取り敢えずは少量の魔力から行いましょう。……では…3人手を繋いで……そう…では…最初は両方への魔力循環ではなく右手は流して左手は受け止めましましょう…くれぐれもですよ?で、お願いします。」

俺達は手を握り目を瞑る。

「始めて下さい。」

言われて少しずつ流し始める。
あぁ……シオンの手……相変わらず細くて折れそうで……閨の最中に手にキスをしたり指を舐めると擽ったがるんだよなぁ……

「「「……くっ!」」」

………何だっ…寒っっ……身体の芯から冷えるこの感覚っ!

「熱い熱い熱いっ!」

……あれ?シオンは熱いのか?

「…熱いですか?俺はかなり擽ったいです。」

「……俺は凄く寒い…」

カヤはシオンから魔力を受け取ってんだよな?
アイツ……羨ましいっ。

「……前とは少し違いますね。それぞれが成長して少し状態が変わっているかもしれませんね。3人共、思うままに魔力を流してます。相手への思いで魔力を出していると思いますがカヤとオーク様は弱めて。そしてシオン様……真面目にやって下さい。」

今回の魔力循環は、俺→シオン→カヤからの俺になっているんだが……魔力属性から来ているのか?
じゃぁ…俺は…火か。
気持ちで左右されるのはまだまだなんだが……

「難しいな……シオンへの思いが強すぎて…」

「難しいですね……オーク様への(日頃の)思いが強すぎて……」

クロバイにもう一度と言われて流してみる。

「あぁんっ!」
「ブフゥッ!」
「あ゛ぁ゛んっ⁉」

___バチッ!!___

繋いだ手に電気の様な衝撃が走ってその場にしゃがみ込んでしまった。

「加減しろ!馬鹿者がっ!!」

クロバイからキツく注意されたけど…されたけどさぁ……

「オーク……お前……なんて魔力流すんだよ………」

いや…シオン本当にゴメン…でも、気持ちは抑えられない。
それより……

「……ん゛っ………はぁ……シオン様こそ……なんて魔力流すんです…俺笑い死ぬかと思いましたよ……」

「カヤ…お前……俺を消す気で来ただろ⁉なんて魔力流すんだよっ!!」

喧嘩売ってんだろ⁉さっきのクロバイの言葉で魔力強めやがったな!

「…そもそも…シオン様の事を考えたら、優しく温もりのある魔力を流せるんじゃないでしょうかねぇ?」

「お前こそ……さっきは俺への含みのあるだったと思うが……日頃の鬱憤でも晴らしてんのかよ?」

「フフフフ……まさか……そんなそんな……」
「フフフ……俺のシオンへの気持ちはお前みたいな生易しい気持ちじゃねぇしな。何ならお前が味わうか?」

「受けて立ちましょう。」

「「フフフフフ……」」

カヤと睨み合って手の平に魔力を込める。

「お前達……」

「……カヤッ、オークッ…後ろ…」

「「何だ?」ですか?」

___ゴンッ!___

「2人共……シオン様とはでちゃんとしなさい。しないなら…………シオン様抜きで2人で一緒のベッドで寝てもらいますよ。」

「「頑張りますっ!!」」

父にも拳で殴られたこと無いのにぃぃ!
頭に鈍い痛みが走る。
そこからは真面目に練習をして当日はシオンを守ると言いながら一緒のベッドに寝た時は、寝ている間に抱き締めたり出来たら……と、思っていたのに横になった途端に深い眠りについてしまった。


そして数日訓練を行い、ある程度形になってきたと思った矢先……シオンが目の前で倒れた……
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

処理中です...