目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【16歳】

【16歳】9

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結局……学園の1日が終りました…
イベントに…主人公…いませんでした……いや…いたにはいたんだがな……

俺はカヤにお姫様抱っこをされて移動魔法で自分の部屋に戻って来た。

___コンコン___

「シオン様~」

「あ、ザクロ。」

ザクロは王宮とこちらの警護を半々で担当する事になり、移動魔法で行ったり来たりしている。
現在は屋敷の警護と言うよりは、ユズの警護兼世話係だ。

「今日はこっちか?」

「ん~………多分近々こっちに正式に警護の担当になりますね。アッシュ様、あんまり上がるとユズ様の負担になるから爵位はそのままが良いって言ってるし当分はそのままだろうけど、王宮の仕事を本格的に関わるから…多分アゼリアもこっちッス。」

「そっかぁ。」

「バァ!にぃたまさまっ!!おかえりぃっ!」

ザクロの後ろに隠れているつもりのユズが、ひょっこり出てきてた。

「わぁ☆ビックリしたぁ!ユズ!隠れるの上手だなぁ!!」

…あ、ドヤ顔してる♪
ユズのドヤ顔…可愛いんだよなぁ。

「ユズ、今日は何をしてたの?」

「ん?きょうは~カイエとお空とんだの!」

___お空?___

え?「とんだ」って…「飛んだ」の?!

「あ~………チビたん言っちゃったかぁ…」

ザクロがボソリと呟き、ポリポリと頭を掻いた。

「…どういう事、ザクロ?」

「えっと…ですねぇ…どうやら、ユズ様…魔法の才能がかなりおありになりまして………」

マジで空を飛んだらしい。

カイエと簡単な魔法を遊びの導入でしたらしいのだが、やたらと飲み込みが上手いので…冗談で軽く飛ぶ練習をしたら…飛んだらしい。

………俺3年掛かったよ?
今も苦手だから飛ばないけど…
杖もなくて?

俺、泣いて良いかな………?

「……ご心配なく…シオン様は…私が全てお世話致しますので必要ございませんよ♡」

「………いや、それ駄目だろ。」

それアカン、絶対。

「あ、そういやカヤ。」

「はい。」

「クロバイが呼んでたよ。その間は俺とユズ様がご一緒。ねぇ~、ユズ様~。」

「ねぇ~♡」

「……はい。」

………クロバイ…って、事は…オークも呼ばれてるのか。

「夕食前に執務室に来いって。じゃあ、シオン様は俺達と厨房でお茶しましょ~♪」

「しましょ~♪」

「分かった。じゃあ、行こうか。」

着替えも終わったのでカヤは執務室へ向かい、俺達は厨房へ向かった。
てちてちと歩くユズの後ろを俺とザクロが歩く。

貴族が厨房でお茶なんて行儀がかなり悪いが、ここはローズウッド家。
みんな家族みたいなもんだ。
廊下では使用人達が微笑ましく見ながら挨拶をし、ユズも丁寧に挨拶を返す。
俺が小さい頃から厨房を出入りしているので、ユズも当たり前の様に行っているのだ。

「えんじゅ~!」

「おぅ!チビたん!兄様呼んで来ましたかぁ?」

「ん!ざくと連れてきた!」

お喋りも上手になってるよなぁ。
まだザクロはザクオだけど…
少しずつ意識して、昼メシとか…みんなで屋敷でも言葉遣いは直そうとは話してるものの…
ついつい出ちゃうよなぁ…
ユズに影響しないようにしなきゃ。

「は~い!じゃあ、ユズ様はこっちね~。」

ユズ専用の椅子に誘導してザクロが座らせた。
厨房の使用人は調理室で夕食の下準備を始めているから厨房の控え室みたいなここは俺達だけだ。

「は~い、お待たせ!ご飯前だからちょっとな。」

「きゃあ♡」

甘い野菜が入った少し小さ目のスコーンとプレーンタイプのスコーンに手製のジャムだ。
ジャムは砂糖少な目だそうだ。
ユズ…愛されてんなぁ。

「あとは、温かいミルク♪」

「ありがとっ♪」

「シオン様とザクロは紅茶ね~。」

「「ありがとう。」」

ユズの前では「ありがとう」「ごめんなさい」は意識して言う様にしている。
「やってもらう」が当たり前になっちゃうからね。
感謝大事!

俺達も厨房のテーブルについた。

「………今日はクロバイから……話あるんですね?」

「うん。何かは…分からないけど。」

「…あ、ユズ様おねむッスか?珍しいね~。」

ミルクを飲んでウトウトしだしたユズをザクロが抱き上げて自分の椅子に座る。
ユズをザクロ側に向かせて身体をもたれる様にして寝かせた。
コアラ抱き…と、言うんだっけ?

「今日空飛んだんだろ?魔法使って疲れたんだろ。」

エンジュがブランケットをユズに掛けた。
う~ん、手慣れてる。
サクラが生まれて、頑張って「お兄ちゃん」してるみたいだけど…頑張り過ぎては母に心配掛けない様にここでザクロに抱っこされてお昼寝してんだろうな。
…頑張り過ぎてんのは使用人達にはバレてるけどな。
バレてないのは母だけだろう。

「ねぇ……シオン様はさ…」

「ん?」

「カヤと王子……どっち取んの?」

ポン…ポン……と、背中を優しく叩きながらザクロが呟いた。

「…えっ…?」

「王子…マジでシオン様好きッスよ?カヤもね………シオン様はさ……どうしたいの?」

「ザクロ、流石にそれは越権行為だ。」

少し怖い顔でエンジュが嗜めた。

「………っ………アッハ……だよねぇっ。ゴメン!……忘れて?」

「………あ……うん。」

「……シオン様はカヤと王子……どちらを選んでも俺達はシオン様の味方で…家族だからって言いたかったんだと思うよ。」

そう言って、エンジュとザクロを見ると顔を真っ赤にしたザクロがそっぽを向いて呟いた。

「…………ってぇ………事です…はぃ………」

声ちっさ!
でも、慣れてきたら少し荒い言い方するヤツだけど……ザクロはみんなに優しいんだよな。

「ありがと。」

「ん………たださ……相手の気持ちがこっちに向いてんのか分かんない状態で思い続けるっつーのは……なかなか辛いからさ………振るなら…早めにしてあげなね……」

俯いてザクロが言ったから表情が読めなかったけど……どうした?ザクロ、何か昔経験したのか?

「あ~、チビたんの髪の匂い…落ち着くねぇ。俺も眠くなっちゃうわ~。」

あ、いつものザクロに戻った。

「まぁ、まだ何だかんだ赤ちゃんから一歩前に出た様なもんだからな。」

エンジュは行ったり来たりだが、俺達はユズが起きる夕食ギリギリまで厨房でのんびり話していた。
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