目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【16歳】

【16歳】1

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___入学式___

アッハァ~………ハレの日、晴天ですなぁ~。

俺は天を仰ぎ、そして門を潜った。
 
歩く並木は綺麗に整えられ、明らかに新品の制服を着た新入生があちらこちらに歩いている。
まぁ入学式はどこも同じだな。
違ってるのは親が連れ添っていない事と、従者の人達の年齢が一応主人に近い年齢とはいえバラバラだから誰が新入生で誰が上級生か分からない。
ただ分かるのは学科別のネクタイだけだ。

あ、そうそう。母はあれから回復して少し話せるまでになりました。
いやぁ……マジ心配したわ~。
あと、我が家のお嬢様は正式に「サクラ」になりそう。
最初に目を覚ました時に言ったら「その名前が良い。」って喜んでたらしいけど、もう一度ちゃんと相談するらしい。

なので…杖はいずれは持ちますが、カード使って色々やりませんのであしからず……

ハァ………冗談言ってる場合じゃねぇなぁ………

さて…従者のカヤとは入学式会場が違うから別れたし、オークと待ち合わせしてる場所に行くかぁ……

___……タッタッタッ………ドンッ!!___

「うわぁっ!!」

「わぁぁあっ!…ごっ…ごめんなさい!!」

「………ぁ……こちらこそボ~ッとしてて…………」

ぶつかって突き飛ばされた俺は結構飛んだらしい。

………軽く脳震盪起こしたか………ボ~ッと…まだしてるかなぁ……………

心配そうに手を差し伸べるのは…この声…もしかして……主人公……か……?

「………大丈夫…ですか?」

………あ…この顔……主人公だ………

フワフワの髪に愛らしい瞳と優しい声………

………とうとう来たか…………

主人公を見ながら差し伸べられた手を取り起き上がった…が……


………ん………デ………デカ…い………?


おやおやおや~
身重177cmの俺よりデカいよ?
君は確か165cmくらいだったよね?
おかしいなぁ……俺……ちょっと見上げてるよ?

設定………どこ行ったんですかねぇ……?
みんなデカくなりやがって…
あ………ムカついてきた。

「くそっ!何でお前までデカいんだよぉぉぉっ!!」
「ひゃいっ!ごめんなさいぃっっ?」

俺は主人公の胸ぐらを掴んで思わず怒鳴ってしまい、注目を浴びてしまった。

「ハッ!……すまない……君は…悪くないのに…」

俺はバツが悪くなり手を離した。

そうだ………君が悪いんじゃない………

「あ……いえ……」  

悪いのは………この世界だよなぁっ!
どこまでバグるんだよっっ!!

「……じ…じゃあ…急ぐから…失礼する…」

主人公を置いて俺はヒソヒソと周りに言われつつ、急いでオークとの待ち合わせ場所へ向かった。

…………あれ?
俺………今、悪役令息っぽい?

「シオン!」

待ち合わせの方向からオークが走ってきた。

「あ、オーク。遅れてゴメン。」

「いや、そんな事より……お前、服が土で汚れてるじゃないか!どうしたんだ?」

オークが話しながら洗浄の魔術で服を綺麗にしてくれた。

「………あ、そこで主人……いや、新入生とぶつかって……」

「……ここまで酷くなる程ぶつかるなんて……殺そう「駄目に決まってんだろ。」」

あれ?そういやゲームじゃ…入学式で会場まで行けずに迷子になっている主人公とオークが出会って恋に落ちるんじゃ無かったかな?

………何故、君は今ここにいるのかな?

「なぁ、主人……いや、会場が分からず迷った新入生と会わなかったか?」

「あれ?アイツ、また迷ったのか?あぁ、会ったぞ。説明したら分かったって言うからそのまま別れた。」

ん?

「………何で一緒に行かなかったのかな?」

「………何で一緒に行く必要があるんだ?」

あれ?

「……いや……何か…キュン♡…とか……ズキュン♡…とか……ドギャギャン♡…とか………無かった?」

「……何だ?…その…ドギャギャン♡…とか…普通もねぇだろ。…ったく……ねぇよ、そんなの。」

___お前にならあるけどな___

「ん?」

「何でもねぇ。」

う~ん…無いのかぁ………

……ん?……嘘だろ?!無い…だとぉっっ?!

「いやいやいや!新入生とワックワク☆でドッキドキ♡な出会いは無かったのかよっ?!」

「っ?!お前にあったのかっ?!」

「ねぇわっ!バカァッ!!」

あってたまるかぁぁぁっ!

___ザワザワ………___

「ハッ!入学式!!」

注目を再度浴び………俺達は会場へと向かって行った。

「あ!オーク様!」

会場へ着くと受付にいた上級生?の1人が走ってきた。

「何だ?」

「オーク様……あの…新入生代表の挨拶をご辞退されたとか…」

「だって俺、主席じゃねぇし。確か……田舎から来た特待生じゃなかったか?」

「いや………そうなんですが……爵位が……」

………あぁ…下級貴族なんですねぇ………
バカバカしい…

「バカバカしい。んなもん正当なモンにさせるべきだろ。」

あ、俺もそう思った。

「でも……子爵ですよ…?」

この言葉を聞いた途端スゥ…っと、オークの表情が変わった。

「……お前は『人』を見ずに…『地位』しか見ないのか………?」

オークの顔が笑顔だが……歪んだ笑顔だ。

「ヒッ…!いえ……それは…その………」

オークさん?その顔………本家悪役令息の俺より悪役顔になってますぅ……

「フッ……俺はどうやら入学の時期を間違えたらしいな……あ…いや……でしたね?敬語を使わず失礼した。」

「あ……いや……」

先輩泣きそうだよ?
ちょっと可哀想になって来た。

「………なぁ…」

オークのジャケットの裾をクイッと軽く引っ張る。

「…何だ?シオン。」

あ、いつもの顔に戻った。

「なぁ…もうすぐ入学式始まるからさ……行こ?」

「そうだな………では、は挨拶は辞退申し上げておりますので……失礼…」

オークは俺の腰に手を回してその場をあとにした。

………何で俺の腰に手を回す必要があるのかは分からんかったがなっ!

入学式の新入生の挨拶は主人公が代表となり、つつがなく無事に終了した。
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