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第35話・兆しのない悪意-1
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そのまま三日間休むと、カロリン子爵の言う通り、私は殆ど不調を感じなくなった。体は未だ少しだるいけど、ほぼいつもどおりにまで回復した。
とは言え、今日は敗北者である私には無縁の日。
バツの悪い成績発表会に出ないためにも、私は元気のない振りをしなくてはならない。
せっかくの休みなので、メイドに手伝わせて、ゆっくりと豪華な風呂に入り、連日の疲れをとることにした。
もっとゆっくり浸かっていようと思っていたその時、ロキナが慌ててやってきた。
「お嬢様、カシリア殿下が休憩室にお越しです。なんだか悩んでいる顔をしておられます。他のメイドにお嬢様の体調をお尋ねのようです。今も客室のソファーでお嬢様をお待ちですが、如何なさいますか?」
「殿下が?外で私を待っているの?」
そういえば、この三日間殿下はずっと休憩室に現れなかった。
でも、殿下が私に直接話さなければならない事などないはずよ。
何かあればメイド達に伝言すればいいじゃない・・・
おかしいわ…でも殿下が何を考えていたとしても、私を待っているというのなら、あまり待たせるわけにはいかないわね。
「ロキナ、着替えを用意しなさい。すぐ行くわ。」
そう言って急いで風呂から上がって殿下に会う準備をした。
前世のことをどう思い返しても、今日殿下と何か関わりを持つ理由はなかった。
それに病気ももうほぼ完治したから、殿下の気になることもないはずよ。
疑惑と憂鬱の気持ちを抱えながら、ゆっくりと風呂場から出た。
「ご機嫌麗しゅうございます、殿下」
私は優雅に客室へ入り、ソファーでじっと座っていた殿下に礼をした。
「ああ、リリス、君はその…体調はどう?」
殿下は吃りながら私を労うような言葉を発した。
でもその表情はとても暗く、眉を顰め、目線も泳いでいて、悩んでいるのか不満なのか怒っているのか分からなかった。
殿下のその表情は色んな読み方ができるが、どの読み方でも、それは機嫌がいいという解読結果にはならない。
「…殿下のおかげで、大分元気になりました。」
私は暖かな笑顔を見せたが、心の中ではとても緊張してきた。
いつも殿下は笑顔とは無縁だが、今の心配げな表情の殿下は、何かを考え込んでいて、まるで自分が何かをして、殿下の怒りに触れたかのように、暗い目線でじっと私の方を見ていた。
病気で殿下の前で倒れたから?それはどうしようもないことでしょう。私に怒っても仕方がないじゃない。
それなら休憩室を使ってるから?それは殿下が言い出したことだから、ありえないわね。
ひょっとして、待たせすぎたからかしら?でもロキナは殿下が来た時には既に暗い顔だと言っていたわ…
一体…どういうことなの?どんなに考えても、原因になりうることを何一つ思いつかなかった。
「…」
殿下は直ぐに返事をするのではなく、ずっと暗くて鋭い眼差しで私を睨みつけた。この固まった姿勢から戻るまで、しばらくかかった。
「ああ、すまない、とりあえず座って」
殿下は表情を整えて、見慣れたポーカーフェースに戻った。
くっきりした綺麗な顔ではあるが、薄氷のように冷たい。
何か、嫌な予感がする。
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★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
とは言え、今日は敗北者である私には無縁の日。
バツの悪い成績発表会に出ないためにも、私は元気のない振りをしなくてはならない。
せっかくの休みなので、メイドに手伝わせて、ゆっくりと豪華な風呂に入り、連日の疲れをとることにした。
もっとゆっくり浸かっていようと思っていたその時、ロキナが慌ててやってきた。
「お嬢様、カシリア殿下が休憩室にお越しです。なんだか悩んでいる顔をしておられます。他のメイドにお嬢様の体調をお尋ねのようです。今も客室のソファーでお嬢様をお待ちですが、如何なさいますか?」
「殿下が?外で私を待っているの?」
そういえば、この三日間殿下はずっと休憩室に現れなかった。
でも、殿下が私に直接話さなければならない事などないはずよ。
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おかしいわ…でも殿下が何を考えていたとしても、私を待っているというのなら、あまり待たせるわけにはいかないわね。
「ロキナ、着替えを用意しなさい。すぐ行くわ。」
そう言って急いで風呂から上がって殿下に会う準備をした。
前世のことをどう思い返しても、今日殿下と何か関わりを持つ理由はなかった。
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疑惑と憂鬱の気持ちを抱えながら、ゆっくりと風呂場から出た。
「ご機嫌麗しゅうございます、殿下」
私は優雅に客室へ入り、ソファーでじっと座っていた殿下に礼をした。
「ああ、リリス、君はその…体調はどう?」
殿下は吃りながら私を労うような言葉を発した。
でもその表情はとても暗く、眉を顰め、目線も泳いでいて、悩んでいるのか不満なのか怒っているのか分からなかった。
殿下のその表情は色んな読み方ができるが、どの読み方でも、それは機嫌がいいという解読結果にはならない。
「…殿下のおかげで、大分元気になりました。」
私は暖かな笑顔を見せたが、心の中ではとても緊張してきた。
いつも殿下は笑顔とは無縁だが、今の心配げな表情の殿下は、何かを考え込んでいて、まるで自分が何かをして、殿下の怒りに触れたかのように、暗い目線でじっと私の方を見ていた。
病気で殿下の前で倒れたから?それはどうしようもないことでしょう。私に怒っても仕方がないじゃない。
それなら休憩室を使ってるから?それは殿下が言い出したことだから、ありえないわね。
ひょっとして、待たせすぎたからかしら?でもロキナは殿下が来た時には既に暗い顔だと言っていたわ…
一体…どういうことなの?どんなに考えても、原因になりうることを何一つ思いつかなかった。
「…」
殿下は直ぐに返事をするのではなく、ずっと暗くて鋭い眼差しで私を睨みつけた。この固まった姿勢から戻るまで、しばらくかかった。
「ああ、すまない、とりあえず座って」
殿下は表情を整えて、見慣れたポーカーフェースに戻った。
くっきりした綺麗な顔ではあるが、薄氷のように冷たい。
何か、嫌な予感がする。
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