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第17話・長い夜
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体を洗い、湯船を出ると、そばでずっと待っていたメイドが近づいてきた。
「リリス様、こちらへどうぞ、お召し物を用意してあります。」
メイドは私を衣装部屋に連れて行った。そこには女性用の豪華な王族女性用のドレスがあった。
「これって・・・?」
私は驚いた。一般的には、パーティーを除いて王族の前では、あまり豪奢すぎる服装を着てはいけない。特に殿下が学生の制服を着ているのに綺麗なドレスで現れるのは紛れもなくとんだ場違い。
「リリス様、今学院にはリリス様のサイズに合う新しい制服がなくて、残っているのはこの王家ドレスだけです。殿下のご許可は頂いておりますので、ご安心下さい。」
「そう・・・わかりました、それじゃあお願いしますわ。」
返事をすると、メイドがドレスの着替えを手伝った。
「殿下が既に外でお待ちしております。」
そう言いながら、私を外へ案内する。
不意に壁にかけられた時計を見ると、既に夜の8時。殿下はなぜまだ私を待っているのでしょうか?
殿下やナミスには大変なご迷惑でしょう・・・
はぁ、後で殿下にお会いしたらどう謝ればいいのかしら・・・
しかし考える時間はあまりなく、いつの間にか浴室から出てしまった私は、すぐに優雅な微笑みに切り替えた。今は思考が凄く混乱しているが、何とかして微笑みを作り出した。
「殿下、お待たせしました。」私は裾を持ち、膝を曲げて、優雅に一礼をした。
・・・殿下は私を見たが、何かを考えているらしい。
「そう気にしなくていい、座ってくれ。」
「本日は誠に殿下のご好意に感謝至極に存じます。もし殿下がいなかったら、私は今こうして殿下とお話することも出来なかったのでしょう。」
私が席に着くと、先ずは用意したセリフを言った。
「殿下や護衛の方にこれほどのご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。」
「ああ、それは大したことじゃないので、気にすることはない。国民の安全を守るのも彼らの務めだから。」
上流社会の世辞も、所詮はそれぐらいのものだ。感謝側のセリフも、感謝される側のセリフも、似たり寄ったりだ。
「リリスこそ、怪我はないか?」
「お気遣い頂きありがとうございます。殿下や護衛の方がタイミングよくいらしてくれたお陰で、私は無事なのですが・・・」
ナミスの怪我が心配なので、ここで聞いちゃっても良いのかな?
「ナミスさんが私を助けるために、とても酷い怪我をしてしまったのですが、彼は今どんな様子なのでしょうか?」
「あっ、ナミスのことなら、既に王家の医師に診てもらったので、心配しなくていい。1ヶ月ほど休めば大丈夫だそうだ。」
「そっ、そうなんですか、大事に至らず何よりです」
1ヶ月か・・・1ヶ月を療養するほどの怪我って十分大怪我だよね・・・後でちゃんとナミスにお礼を言わないと。
「そういえばリリス、今日はどうして1人で下町へ行ったのだ?」
「あっ、そっ・・・それは近々ある茶会に出ることになりましたので、そのために最近流行りのアクセサリーを選びに行ったのです。」
殿下が突然投げつけた質問に対して、前もって用意したセリフで対応した。こう答えれば、一緒に行く人がいなくて一人でうろうろしていたことがバレないはず。
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「そうか・・・」本当は「どうして下町へ行った」ではなく「どうして1人で出かけた」のかを知りたいんだが、リリスはそれをわざと回避したらしい。
「最近下町の治安はあまり良いとは言えないから、一人で歩くのはおすすめしない。」
カシリアはゆっくりと話す。こう言っておけば今後リリスはその腰巾着どもを連れて行くだろう。その方が自分を少しは安心させられる。
「はい、それは・・・じ、実に申し訳ございません、全て私の不注意が招いたことです。」
リリスはなぜだか突然緊張してしまい、カシリアから目を逸らして、話も上手く話せなくなった。
おかしい、何か変なことでも言ったのか?彼女をせめるつもりはなかったはずなのだが。
「いや、ただ今後の安全のためにも、護衛をつけたほうが良いと思う。そうだな、この件については私から公爵殿に話を・・・」
「結構です!」
リリスは突然慌てて大声を出して、その目はまるで悪夢から目覚めたかのようだ。そしてすぐ己の失態に気がつき、またいつもの冷静を取り戻した。
「す、すみません・・・、私はただ、殿下を煩わせる必要はないと思っています。私の方から父上に話せば大丈夫です」
落ち着きを取り戻したリリスは、さっき叫んだ者とは全く別人のような穏やかな口調に戻った。
どうもリリスとカスト公爵の間に何かがあったのか・・・?しかしこれまでこの件についての噂は全くなかった。だが今日のリリスは顔色も精神状態もこれ以上話を続けない方が良さそうだ。いったん帰らせた方が良いかもしれない。
「わかった。そうだな、時間も遅いことだし、今日のところはとりあえず護衛に家まで送らせるよ。」
「・・・ご厚意に預かりありがとうございます。それでは私はこれで失礼を致します。」リリスはいつも通りに優雅に礼をし、ゆっくりと下がっていった。
後2日で・・・王家学術能力テストが行われるのだが、リリスは大丈夫なんだろうか。
自分の勝算が増しているのに、微塵も喜べないカシリアがいた。
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「はあ・・・」
私は深くため息をついた。また無意識にひどい失態をしてしまった。
自分が襲われたことは今でも鮮明に目に浮かんできた。わけがわからないまま襲われて、気を失いかけて連れて行かれそうになって、砕かれた骨から吹き出した鮮血が私に降りかかって・・・いくら内心では落ち着かなきゃと思ったとしても、落ち着けるはずもなかった。
これは前世でも現世でも、初めての事故だった。
血が凍り、呼吸が止まるほど抑えきれない恐怖の実感は、今でも消え去ることなく体に刻み込まれている。
緊張、慌て、不安、様々な感情が脳内で混ざり合って、そして・・・いつも私は上手く感情をコントロールしてきたのだが、今日はわかりやすいほどに、まだ事故の混乱から回復できなかった・・・
私としたことが、なんと殿下の御前で大声を出すだなんて、躾されてない平民の子供ですらやらないでしょう。そして、明らかに殿下はすぐに私を追い出した。上流貴族として、なんという失礼極まることをしてしまったのか・・・
「リリス様、こちらの馬車を。」
「ありがとう。」
殿下の護衛は私を皇家の馬車の前に連れてきて、そのまま私を家まで送ることにするそう。本当に殿下の送りがあって少し安心した。そうでもないと私は家に戻る勇気すら持っていなかったかもしれない。そう思いながら、無理に優しい笑顔を見せ、優雅に馬車に乗り込んだ。
そうね、先ずは家に帰ろう、さっきのことはいったん忘れて。
・・・
でも一体私はどうしてしまったのでしょうか?
現世の父にはまだお会いしたことがないというのに、なぜか心の奥底には父に対する恐怖がある。
奇跡的に生まれ変わり、時間も私がまだ過ちを犯していない過去にまで遡っていた。しかし、心の奥には父の私に対する失望の表情が残されていた。
今日起きたことは父に話したくない。父に私が一人で街を歩く能力すら持たない愚鈍なものだと思われたくない。
父が私を疎外し、二度と振り向かないようになるのが怖い、父がミカレンさんやエリナと一緒にいる時の笑顔を見るのが怖い。
でも今となってはもう、その全てから逃れることはできない。この宿命に対して、いくら考えたった何の解決にもならないでしょう。
だって私こそが全ての問題の根源なんだから。私は無言で窓の外の銀色の月を眺めていた。
今日も月は綺麗だけど、私には関係ないよね。
「リリス様、こちらへどうぞ、お召し物を用意してあります。」
メイドは私を衣装部屋に連れて行った。そこには女性用の豪華な王族女性用のドレスがあった。
「これって・・・?」
私は驚いた。一般的には、パーティーを除いて王族の前では、あまり豪奢すぎる服装を着てはいけない。特に殿下が学生の制服を着ているのに綺麗なドレスで現れるのは紛れもなくとんだ場違い。
「リリス様、今学院にはリリス様のサイズに合う新しい制服がなくて、残っているのはこの王家ドレスだけです。殿下のご許可は頂いておりますので、ご安心下さい。」
「そう・・・わかりました、それじゃあお願いしますわ。」
返事をすると、メイドがドレスの着替えを手伝った。
「殿下が既に外でお待ちしております。」
そう言いながら、私を外へ案内する。
不意に壁にかけられた時計を見ると、既に夜の8時。殿下はなぜまだ私を待っているのでしょうか?
殿下やナミスには大変なご迷惑でしょう・・・
はぁ、後で殿下にお会いしたらどう謝ればいいのかしら・・・
しかし考える時間はあまりなく、いつの間にか浴室から出てしまった私は、すぐに優雅な微笑みに切り替えた。今は思考が凄く混乱しているが、何とかして微笑みを作り出した。
「殿下、お待たせしました。」私は裾を持ち、膝を曲げて、優雅に一礼をした。
・・・殿下は私を見たが、何かを考えているらしい。
「そう気にしなくていい、座ってくれ。」
「本日は誠に殿下のご好意に感謝至極に存じます。もし殿下がいなかったら、私は今こうして殿下とお話することも出来なかったのでしょう。」
私が席に着くと、先ずは用意したセリフを言った。
「殿下や護衛の方にこれほどのご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。」
「ああ、それは大したことじゃないので、気にすることはない。国民の安全を守るのも彼らの務めだから。」
上流社会の世辞も、所詮はそれぐらいのものだ。感謝側のセリフも、感謝される側のセリフも、似たり寄ったりだ。
「リリスこそ、怪我はないか?」
「お気遣い頂きありがとうございます。殿下や護衛の方がタイミングよくいらしてくれたお陰で、私は無事なのですが・・・」
ナミスの怪我が心配なので、ここで聞いちゃっても良いのかな?
「ナミスさんが私を助けるために、とても酷い怪我をしてしまったのですが、彼は今どんな様子なのでしょうか?」
「あっ、ナミスのことなら、既に王家の医師に診てもらったので、心配しなくていい。1ヶ月ほど休めば大丈夫だそうだ。」
「そっ、そうなんですか、大事に至らず何よりです」
1ヶ月か・・・1ヶ月を療養するほどの怪我って十分大怪我だよね・・・後でちゃんとナミスにお礼を言わないと。
「そういえばリリス、今日はどうして1人で下町へ行ったのだ?」
「あっ、そっ・・・それは近々ある茶会に出ることになりましたので、そのために最近流行りのアクセサリーを選びに行ったのです。」
殿下が突然投げつけた質問に対して、前もって用意したセリフで対応した。こう答えれば、一緒に行く人がいなくて一人でうろうろしていたことがバレないはず。
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「そうか・・・」本当は「どうして下町へ行った」ではなく「どうして1人で出かけた」のかを知りたいんだが、リリスはそれをわざと回避したらしい。
「最近下町の治安はあまり良いとは言えないから、一人で歩くのはおすすめしない。」
カシリアはゆっくりと話す。こう言っておけば今後リリスはその腰巾着どもを連れて行くだろう。その方が自分を少しは安心させられる。
「はい、それは・・・じ、実に申し訳ございません、全て私の不注意が招いたことです。」
リリスはなぜだか突然緊張してしまい、カシリアから目を逸らして、話も上手く話せなくなった。
おかしい、何か変なことでも言ったのか?彼女をせめるつもりはなかったはずなのだが。
「いや、ただ今後の安全のためにも、護衛をつけたほうが良いと思う。そうだな、この件については私から公爵殿に話を・・・」
「結構です!」
リリスは突然慌てて大声を出して、その目はまるで悪夢から目覚めたかのようだ。そしてすぐ己の失態に気がつき、またいつもの冷静を取り戻した。
「す、すみません・・・、私はただ、殿下を煩わせる必要はないと思っています。私の方から父上に話せば大丈夫です」
落ち着きを取り戻したリリスは、さっき叫んだ者とは全く別人のような穏やかな口調に戻った。
どうもリリスとカスト公爵の間に何かがあったのか・・・?しかしこれまでこの件についての噂は全くなかった。だが今日のリリスは顔色も精神状態もこれ以上話を続けない方が良さそうだ。いったん帰らせた方が良いかもしれない。
「わかった。そうだな、時間も遅いことだし、今日のところはとりあえず護衛に家まで送らせるよ。」
「・・・ご厚意に預かりありがとうございます。それでは私はこれで失礼を致します。」リリスはいつも通りに優雅に礼をし、ゆっくりと下がっていった。
後2日で・・・王家学術能力テストが行われるのだが、リリスは大丈夫なんだろうか。
自分の勝算が増しているのに、微塵も喜べないカシリアがいた。
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私は深くため息をついた。また無意識にひどい失態をしてしまった。
自分が襲われたことは今でも鮮明に目に浮かんできた。わけがわからないまま襲われて、気を失いかけて連れて行かれそうになって、砕かれた骨から吹き出した鮮血が私に降りかかって・・・いくら内心では落ち着かなきゃと思ったとしても、落ち着けるはずもなかった。
これは前世でも現世でも、初めての事故だった。
血が凍り、呼吸が止まるほど抑えきれない恐怖の実感は、今でも消え去ることなく体に刻み込まれている。
緊張、慌て、不安、様々な感情が脳内で混ざり合って、そして・・・いつも私は上手く感情をコントロールしてきたのだが、今日はわかりやすいほどに、まだ事故の混乱から回復できなかった・・・
私としたことが、なんと殿下の御前で大声を出すだなんて、躾されてない平民の子供ですらやらないでしょう。そして、明らかに殿下はすぐに私を追い出した。上流貴族として、なんという失礼極まることをしてしまったのか・・・
「リリス様、こちらの馬車を。」
「ありがとう。」
殿下の護衛は私を皇家の馬車の前に連れてきて、そのまま私を家まで送ることにするそう。本当に殿下の送りがあって少し安心した。そうでもないと私は家に戻る勇気すら持っていなかったかもしれない。そう思いながら、無理に優しい笑顔を見せ、優雅に馬車に乗り込んだ。
そうね、先ずは家に帰ろう、さっきのことはいったん忘れて。
・・・
でも一体私はどうしてしまったのでしょうか?
現世の父にはまだお会いしたことがないというのに、なぜか心の奥底には父に対する恐怖がある。
奇跡的に生まれ変わり、時間も私がまだ過ちを犯していない過去にまで遡っていた。しかし、心の奥には父の私に対する失望の表情が残されていた。
今日起きたことは父に話したくない。父に私が一人で街を歩く能力すら持たない愚鈍なものだと思われたくない。
父が私を疎外し、二度と振り向かないようになるのが怖い、父がミカレンさんやエリナと一緒にいる時の笑顔を見るのが怖い。
でも今となってはもう、その全てから逃れることはできない。この宿命に対して、いくら考えたった何の解決にもならないでしょう。
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