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第4話·薔薇咲くリリス
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牢獄に閉じ込められた2ヶ月間、しかしそれは予想外に静かで平和な生活だった。貴族専用の牢獄のため、庶民のように働かなければ食物さえもらえないようなことにもならずに済んだ。 毎日時間通りにバランスの整った食事が運ばれてきて、 それを食べてしまうともうやることが一切なくて、ただ漠然と過ぎ去る時間を凌ぐだけのこと。
この間、好きだったカシリア王子殿下、異母姉のエリナ、父上のカスト、メイドのロシナ、生徒会副会長のロタシル、かれらも私を見舞いにやってきた。
けど、会う資格も、覚悟もなかった私は、いろんな下手な理由をつけて、身勝手に断ってしまった。
どうしても断り切れないときは、眠ったふりをして、牢獄のベットでピクリともせず、何を話しかけられても、返事も一切しなかった。
本当は、話を聞くだけでも体が抑えきれずに震えて、相手の顔を見ることもできずに怯えていた。
怖くて怖くて。
みんなの期待を裏切って、許されることのない大罪を犯した自分に、厚かましく彼らの善意を受け取る資格などない。
自分だって、自分のことを許せない。
ならば私は、どうやって残りの人生を過ごせばいいのか。
庶民の牢獄生活と比べればきっとここは天国のように居心地のいいところ。悩むこともなければ求めることもなく、ただ公爵令嬢だった私は、どうして罪人に堕ちてしまったのかを思い出そうとし、それを懺悔するだけ。
いつから、どこから、どうして過ちを犯したのかを。
看守兵に頭を下げてお願いし、なんとか手に入れた紙と羽根ペンで、「公爵令嬢・リリス」としての過去を書き綴ろうとする。
走馬灯のように頭を過ぎ去る幸せだった日々。
母上のサリスと父上のカストは王家学院高等生のとき恋に落ち、やがて結び付いた。愛し合った父上と母上の愛情の結晶である私が生まれた。
子供だった私は、暴飲暴食でとても太っていて、友達も一人も作れない醜い貴族だったが、父上と母上と私の三人で幸せな家庭生活を送っていた。
しかし幸せというのは、御多分にもれずお伽噺のように永遠に続いていけるものではなかった。
私が9歳のころ、祖父と祖母、そして母上が事故に逢ってしまい、祖父と祖母がその場で亡くなり、幸いに生き残った母上も大けがで下半身付随となり、歩くどころか、まともな生活すらできなくなってしまい、社交界のバラと呼ばれた母上は、ベッドから家の庭当たりまでしか行くことができなくなってしまった。
必死に母上のために医者を国中探し回った父上と、何も役に立たず、ただ毎日黙って泣くこと以外何もできなかった私が、母上を取り囲む世界のすべてになった。
事故後、父上も変わらぬ愛を母上に注ぐつもりのようだったが、家に閉じこもり、世界が可哀想なほどに縮んでしまった母上は、昔のように社交界や周りの情報を知るすべもなく、何度も何度も繰り返し聞いた話題にはやがて飽きて、いつの日か、父上との話題が尽きてしまった。
三人家族幸せに送った人生が幻想のように消えて、色褪せた世界を三人で無言に送るような日々になった。
枯れ落ちた花は二度と咲かないように、それが今後も永遠に続くだろうと、誰もかれもそう思っていた。
そんな中、ある日、母上が私を優しく励ましてくれた。
本当に、ささやかな一言かもしれなかったけど、私には何よりも深く響いた。
あの日から、私は立派な公爵令嬢を目指して、誰よりも頑張って様々な知識を勉強しようとした。
必死に頑張って、努力に努力を重ねた果てに、いつの間にか先生に褒められるようになってそれをきっかけに、父上も母上とまた会話ができるようになり始めた。
多少大変だったけど、私が努力すれば、きっと父上と母上の関係は元に戻ると信じて、私は無我夢中でただ毎日上へ這い上がろうとした。
実際に、私はなんらかの成績を取ったら、父上と母上も大喜びで、家族の笑顔さえあれば、私はどれだけ苦しくとも、頑張っていける気がした。
されど人間というものは、どうやら変哲なものには飽きやすいようで、一つの分野だけでは、その成績が優秀であっても、たとえそれがトップだとしても、結局はそれが普通になってしまい、次第に興味が失われた。
もっと他の分野でも成績を出そう、もっと頑張らなくてはと・・・・・・
二年前、母上が病で亡くなってからも、悲しみと苦しみを心の奥に隠し、笑顔だけを表に出し、ただひたすら進もうとした。
大好きな父上と母上のために、私は最も優秀な公爵令嬢を目指して、すべてを犠牲にして、すべてを手に入れようとした。
家族愛、名誉、権力、愛情など・・・・・・
ありとあらゆるすべてのものが、私のものになるはずだった。
一体どうして?
頑張れば頑張るほど、ほしいものは私から遠ざかってしまったの?。
何度も何度も考えに考えたのに・・・
一体どこで間違ったの?
私のわがままが悪かったの?
それとも、何か足りない部分でもあったの?
なんでこんなに努力していた私は、すべてを失ってしまったの?
なんで、何の努力もしていなかったエリナが!
ただ、ありきたりな凡人のように生きてきた彼女が!
ただ、何も知らずに能天気に日々を繰り返したあの女が!
気軽に私の届かない高みに辿り着けたの!?
なんで私のすべてがあっけなくあの女に奪われてしまったの!?
どんなに頭を絞りつくしても、
何一つ答えは思いつかなかった。
羨ましくて、
嫉妬すら覚えて、
苦しくて、
死ぬよりもつらい。
けれど、
私にはどうしようもない。
間違わないように送ってきた自分の人生が、間違ってしまったように、
間違ったように過ごしてきた彼女が、間違ってなかったように、
ただ、あくまでも偶然のようにすべてを手に入れた彼女と、
ただ、あくまでも必然のようにすべてを失った私。
それが神様のいたずらなのであれば、
それは藻掻こうとも、逃げられない宿命かもしれない。
そうであれば、自分自身までも犠牲にして、今まで十数年間、完璧令嬢「リリス」を必死に演じてきた私は、
ただ生きることの意味も忘れた道化ね。
どれだけ考えても、
わかることのない私は、
やがて断念した。
エリナは正しい。
それが運命という名の祝福。
「リリス」は間違ってる。
それが宿命という名の呪い。
気を抜けば、恍惚となり、目に映る世界が色あせてぼんやりになってしまった。白く塗られた牢獄の壁に映った自分の影だけがはっきりと目に入る。
誰。
死人のように真っ白に枯れた肌に、よもぎのように乱れた髪、淡く仄暗い瞳と、永遠に汚れた囚人服を着た私。
そう・・・。
完璧令嬢だった「リリス」はもう死んでいる。
父上と母上に愛されていた「私」は、もう死んでいる。
もう、ここまでにしよう。
疲れ果てたから、
なにもかもおしまいにしよう。
もう夜は深い。
看守兵も今日はもう見回りにこないようだ。
私はこっそりと、とっておきの宝物を取り出した。
それは磨きに磨いた、刃のように鋭い鉄の欠片だった。
血管を切り開くには、十分だ。
私は、ベットに横になった。
鉄の欠片は、月の光を反射して、キラキラと目の前に閃く。
死ぬって、
痛いかな?
苦しいかな?
そう・・・かもしれない。
でも、仕方ない。
私は、みんなを裏切った。
余計なものになった?
もう誰も、私なんか、いらない。
やがて決意した私は、宝物を首の動脈当たりに置いた。
ふっと力を出して、優しいキスをされたかのように、
暖かくて、香ばしいバラが、私の体から咲き乱れるように。
ただゆっくりと、時の流れに身をまかせて、
もう、いつ頃の話だったろう・・・
バラが咲き誇った庭で、
お日様に当たって、
ママの膝枕の上に寝て、
いつも王子様とお姫様のお伽噺を読んでくれた。
銀の鈴のような澄み渡った大好きなママの声を聞いて、
すこし眠くなったみたい。
このまま眠りついたら、
さようならね。
不意に零れ落ちた涙とともに、私は最後の別れを告げようとする。
「ごめんね・・・エリナ」
「ごめんね・・・パパ」
「ごめんね・・・ママ」
「もし・・・私がいなければ・・・」
「きっと、みんなも幸せに・・・」
声が消える際に、
私は暖かい花畑で、
大好きなママのそばで、
幸せのまま眠りについた。
この間、好きだったカシリア王子殿下、異母姉のエリナ、父上のカスト、メイドのロシナ、生徒会副会長のロタシル、かれらも私を見舞いにやってきた。
けど、会う資格も、覚悟もなかった私は、いろんな下手な理由をつけて、身勝手に断ってしまった。
どうしても断り切れないときは、眠ったふりをして、牢獄のベットでピクリともせず、何を話しかけられても、返事も一切しなかった。
本当は、話を聞くだけでも体が抑えきれずに震えて、相手の顔を見ることもできずに怯えていた。
怖くて怖くて。
みんなの期待を裏切って、許されることのない大罪を犯した自分に、厚かましく彼らの善意を受け取る資格などない。
自分だって、自分のことを許せない。
ならば私は、どうやって残りの人生を過ごせばいいのか。
庶民の牢獄生活と比べればきっとここは天国のように居心地のいいところ。悩むこともなければ求めることもなく、ただ公爵令嬢だった私は、どうして罪人に堕ちてしまったのかを思い出そうとし、それを懺悔するだけ。
いつから、どこから、どうして過ちを犯したのかを。
看守兵に頭を下げてお願いし、なんとか手に入れた紙と羽根ペンで、「公爵令嬢・リリス」としての過去を書き綴ろうとする。
走馬灯のように頭を過ぎ去る幸せだった日々。
母上のサリスと父上のカストは王家学院高等生のとき恋に落ち、やがて結び付いた。愛し合った父上と母上の愛情の結晶である私が生まれた。
子供だった私は、暴飲暴食でとても太っていて、友達も一人も作れない醜い貴族だったが、父上と母上と私の三人で幸せな家庭生活を送っていた。
しかし幸せというのは、御多分にもれずお伽噺のように永遠に続いていけるものではなかった。
私が9歳のころ、祖父と祖母、そして母上が事故に逢ってしまい、祖父と祖母がその場で亡くなり、幸いに生き残った母上も大けがで下半身付随となり、歩くどころか、まともな生活すらできなくなってしまい、社交界のバラと呼ばれた母上は、ベッドから家の庭当たりまでしか行くことができなくなってしまった。
必死に母上のために医者を国中探し回った父上と、何も役に立たず、ただ毎日黙って泣くこと以外何もできなかった私が、母上を取り囲む世界のすべてになった。
事故後、父上も変わらぬ愛を母上に注ぐつもりのようだったが、家に閉じこもり、世界が可哀想なほどに縮んでしまった母上は、昔のように社交界や周りの情報を知るすべもなく、何度も何度も繰り返し聞いた話題にはやがて飽きて、いつの日か、父上との話題が尽きてしまった。
三人家族幸せに送った人生が幻想のように消えて、色褪せた世界を三人で無言に送るような日々になった。
枯れ落ちた花は二度と咲かないように、それが今後も永遠に続くだろうと、誰もかれもそう思っていた。
そんな中、ある日、母上が私を優しく励ましてくれた。
本当に、ささやかな一言かもしれなかったけど、私には何よりも深く響いた。
あの日から、私は立派な公爵令嬢を目指して、誰よりも頑張って様々な知識を勉強しようとした。
必死に頑張って、努力に努力を重ねた果てに、いつの間にか先生に褒められるようになってそれをきっかけに、父上も母上とまた会話ができるようになり始めた。
多少大変だったけど、私が努力すれば、きっと父上と母上の関係は元に戻ると信じて、私は無我夢中でただ毎日上へ這い上がろうとした。
実際に、私はなんらかの成績を取ったら、父上と母上も大喜びで、家族の笑顔さえあれば、私はどれだけ苦しくとも、頑張っていける気がした。
されど人間というものは、どうやら変哲なものには飽きやすいようで、一つの分野だけでは、その成績が優秀であっても、たとえそれがトップだとしても、結局はそれが普通になってしまい、次第に興味が失われた。
もっと他の分野でも成績を出そう、もっと頑張らなくてはと・・・・・・
二年前、母上が病で亡くなってからも、悲しみと苦しみを心の奥に隠し、笑顔だけを表に出し、ただひたすら進もうとした。
大好きな父上と母上のために、私は最も優秀な公爵令嬢を目指して、すべてを犠牲にして、すべてを手に入れようとした。
家族愛、名誉、権力、愛情など・・・・・・
ありとあらゆるすべてのものが、私のものになるはずだった。
一体どうして?
頑張れば頑張るほど、ほしいものは私から遠ざかってしまったの?。
何度も何度も考えに考えたのに・・・
一体どこで間違ったの?
私のわがままが悪かったの?
それとも、何か足りない部分でもあったの?
なんでこんなに努力していた私は、すべてを失ってしまったの?
なんで、何の努力もしていなかったエリナが!
ただ、ありきたりな凡人のように生きてきた彼女が!
ただ、何も知らずに能天気に日々を繰り返したあの女が!
気軽に私の届かない高みに辿り着けたの!?
なんで私のすべてがあっけなくあの女に奪われてしまったの!?
どんなに頭を絞りつくしても、
何一つ答えは思いつかなかった。
羨ましくて、
嫉妬すら覚えて、
苦しくて、
死ぬよりもつらい。
けれど、
私にはどうしようもない。
間違わないように送ってきた自分の人生が、間違ってしまったように、
間違ったように過ごしてきた彼女が、間違ってなかったように、
ただ、あくまでも偶然のようにすべてを手に入れた彼女と、
ただ、あくまでも必然のようにすべてを失った私。
それが神様のいたずらなのであれば、
それは藻掻こうとも、逃げられない宿命かもしれない。
そうであれば、自分自身までも犠牲にして、今まで十数年間、完璧令嬢「リリス」を必死に演じてきた私は、
ただ生きることの意味も忘れた道化ね。
どれだけ考えても、
わかることのない私は、
やがて断念した。
エリナは正しい。
それが運命という名の祝福。
「リリス」は間違ってる。
それが宿命という名の呪い。
気を抜けば、恍惚となり、目に映る世界が色あせてぼんやりになってしまった。白く塗られた牢獄の壁に映った自分の影だけがはっきりと目に入る。
誰。
死人のように真っ白に枯れた肌に、よもぎのように乱れた髪、淡く仄暗い瞳と、永遠に汚れた囚人服を着た私。
そう・・・。
完璧令嬢だった「リリス」はもう死んでいる。
父上と母上に愛されていた「私」は、もう死んでいる。
もう、ここまでにしよう。
疲れ果てたから、
なにもかもおしまいにしよう。
もう夜は深い。
看守兵も今日はもう見回りにこないようだ。
私はこっそりと、とっておきの宝物を取り出した。
それは磨きに磨いた、刃のように鋭い鉄の欠片だった。
血管を切り開くには、十分だ。
私は、ベットに横になった。
鉄の欠片は、月の光を反射して、キラキラと目の前に閃く。
死ぬって、
痛いかな?
苦しいかな?
そう・・・かもしれない。
でも、仕方ない。
私は、みんなを裏切った。
余計なものになった?
もう誰も、私なんか、いらない。
やがて決意した私は、宝物を首の動脈当たりに置いた。
ふっと力を出して、優しいキスをされたかのように、
暖かくて、香ばしいバラが、私の体から咲き乱れるように。
ただゆっくりと、時の流れに身をまかせて、
もう、いつ頃の話だったろう・・・
バラが咲き誇った庭で、
お日様に当たって、
ママの膝枕の上に寝て、
いつも王子様とお姫様のお伽噺を読んでくれた。
銀の鈴のような澄み渡った大好きなママの声を聞いて、
すこし眠くなったみたい。
このまま眠りついたら、
さようならね。
不意に零れ落ちた涙とともに、私は最後の別れを告げようとする。
「ごめんね・・・エリナ」
「ごめんね・・・パパ」
「ごめんね・・・ママ」
「もし・・・私がいなければ・・・」
「きっと、みんなも幸せに・・・」
声が消える際に、
私は暖かい花畑で、
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幸せのまま眠りについた。
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