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甘い
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ローランドは身を任せるようにリラが自分の腕の中で力を抜いたのを感じ、どうしようもなく嬉しくなる。いつも身を固くしていた人に身を委ねられ、そのことがこんなにも嬉しいものなのかと驚き呆れるけれど。
思わず腕に力がこもり、苦しげに身動ぎされる。
少し体を離し、大きな手をリラの後頭部に添えて自分と目が合うようにする。
戸惑った目を覗き込むローランドの目には熱が籠もっていて。その熱に当てられたようにリラが少し体を硬らせるのが伝わってくるのだけれど。
真っ直ぐに目を覗き込んだまま、ローランドはリラと額を合わせた。
「リラ」
少し掠れた声にリラの視線は戸惑ったように泳ぐ。けれど、後頭部を押さえ込まれ、至近距離で覗き込まれれば視線を外すことはできなくて。
「キスしたい」
息を飲んだのがわかった。
今まで、何も言わずに勝手に、蹂躙するようにローランドからキスをされたことはあった。魔力譲渡かと思おうとしたのに、違うとただされたりもした。
ただ、乞うように、その熱を告げられたことはなくて。
お互いに望んでしたいといやでも告げてくるその声と視線に、リラは言葉を失って。
許さない、と言うように背中に添えられたローランドの手が促すように撫でていく。
「俺と触れ合うのは、嫌か?」
反射的に、首を振る。押さえられているから僅かな動きになるけれど。
緊張するし、どうしていいかわからない。でも、嫌ではない。どきどきして、ふわふわする。思考回路が解けるようで、まともに考えることを強引にやめろと言われているようで落ち着かないけれど、そこに身を委ねたい気もするのだ。でも、それも怖い。
多分、リラは自分を今追い込んでいるこの、致死量の色気をだだ漏れにしている美しい騎士団副団長を好もしく思っている。もっと言うなら、自分でもさっさと素直にその手を取ってしまえと思っている。
でも、怖いのだ。この人が惹かれるような自分の魅力が自分でもわからない。からかわれているのではないかと思ってしまう。また、手を伸ばしたら離れていってしまうのではないかと。どうしてそんな言葉を信じる気になれたのと笑われるのではないかと。
そんな風に思うこと自体が、この人が真剣に言ってくれているのであればあるほど失礼なのだとわかっているのに。
「リラ」
思考の海に潜り込みそうなリラを呼ぶ。
「余計なことは考えるな。理屈じゃなくて、感情で答えろ。キスしていいか?」
後頭部に手を添えているからわかった程度の微かな頷き。
ローランドは、指先から伝わるその動きを頭で認識する前に、額を合わせたままの顔を僅かに動かし、さらうようにリラの唇に触れるだけのキスをする。
少しだけ唇を離して、思わず笑みが溢れる。幸せすぎて、心臓が止まりそうだ。でもここで心臓が止まるなんて、勿体なさすぎて死にきれない。
「魔力譲渡じゃないからな?」
「ん」
「やっと、一緒にキスができた」
啄むようなキスの合間に、嬉しげな声が囁くけれど、その息遣いも至近距離に感じて、リラの思考を蕩していく。
一緒にキス。
確かに今までは、一方的なキス。
自分でも同意したキスは、やっぱり恥ずかしいけれど、でも苦しいくらいに、嬉しいようなむずむずした気持ちが湧いてくる。
逞しい腕に支えられ、抱き寄せられているけれど、ふわふわとしていく体が不安で、恐る恐る手を伸ばしてローランドの腰のあたりの服を掴む。大きな体は、手を回してみようと思えばなおさらその逞しさがわかって、なおのこと脳味噌が沸騰しそうだ。
逃げるのではなく、自分に掴まったことに気づけば、ローランドはなお嬉しくて細い体を引き寄せ、背中に回した手をまさぐるように本能的に動かしてしまう。
緊張するのが伝わるのを宥めるように長めのキスをして、顔を見たいと少し離れれば、思いがけず、追いかけてきたリラの唇が触れるだけのキスをローランドに与える。
触れて離れていくのを追いかけ、耐えきれずにローランドは舌を割り込ませ、本能的に咄嗟に逃げを打つリラの舌をからめ取り、こすり合わせる。
鼻から抜けていく息と一緒に漏れる甘い声と、先ほど食べたチョコレートで甘い口の中に、酔いそうになる。
抱き寄せたことで当たる胸の膨らみに触れたい、このまますぐ側にある寝台に運んで組み敷いてしまいたい。
その欲を抑えるのに、強引に理性を引き摺り出して、リラの唇を解放する。
新鮮な空気に大きく息をつきながら、体から力が抜けた様子のリラを見て、名残惜しく耳を食む。
「これ以上は、また今度だ」
耳に流し込まれた声に、リラの肌が粟立つ。
これ以上は、リラの家族からきちんと了承を得てから。リラからも、キスだけではない許しを得てから。いや、リラは素直に頷くとは思えないからと苦笑いになれば、少し冷静さも戻ってきた。
思わず腕に力がこもり、苦しげに身動ぎされる。
少し体を離し、大きな手をリラの後頭部に添えて自分と目が合うようにする。
戸惑った目を覗き込むローランドの目には熱が籠もっていて。その熱に当てられたようにリラが少し体を硬らせるのが伝わってくるのだけれど。
真っ直ぐに目を覗き込んだまま、ローランドはリラと額を合わせた。
「リラ」
少し掠れた声にリラの視線は戸惑ったように泳ぐ。けれど、後頭部を押さえ込まれ、至近距離で覗き込まれれば視線を外すことはできなくて。
「キスしたい」
息を飲んだのがわかった。
今まで、何も言わずに勝手に、蹂躙するようにローランドからキスをされたことはあった。魔力譲渡かと思おうとしたのに、違うとただされたりもした。
ただ、乞うように、その熱を告げられたことはなくて。
お互いに望んでしたいといやでも告げてくるその声と視線に、リラは言葉を失って。
許さない、と言うように背中に添えられたローランドの手が促すように撫でていく。
「俺と触れ合うのは、嫌か?」
反射的に、首を振る。押さえられているから僅かな動きになるけれど。
緊張するし、どうしていいかわからない。でも、嫌ではない。どきどきして、ふわふわする。思考回路が解けるようで、まともに考えることを強引にやめろと言われているようで落ち着かないけれど、そこに身を委ねたい気もするのだ。でも、それも怖い。
多分、リラは自分を今追い込んでいるこの、致死量の色気をだだ漏れにしている美しい騎士団副団長を好もしく思っている。もっと言うなら、自分でもさっさと素直にその手を取ってしまえと思っている。
でも、怖いのだ。この人が惹かれるような自分の魅力が自分でもわからない。からかわれているのではないかと思ってしまう。また、手を伸ばしたら離れていってしまうのではないかと。どうしてそんな言葉を信じる気になれたのと笑われるのではないかと。
そんな風に思うこと自体が、この人が真剣に言ってくれているのであればあるほど失礼なのだとわかっているのに。
「リラ」
思考の海に潜り込みそうなリラを呼ぶ。
「余計なことは考えるな。理屈じゃなくて、感情で答えろ。キスしていいか?」
後頭部に手を添えているからわかった程度の微かな頷き。
ローランドは、指先から伝わるその動きを頭で認識する前に、額を合わせたままの顔を僅かに動かし、さらうようにリラの唇に触れるだけのキスをする。
少しだけ唇を離して、思わず笑みが溢れる。幸せすぎて、心臓が止まりそうだ。でもここで心臓が止まるなんて、勿体なさすぎて死にきれない。
「魔力譲渡じゃないからな?」
「ん」
「やっと、一緒にキスができた」
啄むようなキスの合間に、嬉しげな声が囁くけれど、その息遣いも至近距離に感じて、リラの思考を蕩していく。
一緒にキス。
確かに今までは、一方的なキス。
自分でも同意したキスは、やっぱり恥ずかしいけれど、でも苦しいくらいに、嬉しいようなむずむずした気持ちが湧いてくる。
逞しい腕に支えられ、抱き寄せられているけれど、ふわふわとしていく体が不安で、恐る恐る手を伸ばしてローランドの腰のあたりの服を掴む。大きな体は、手を回してみようと思えばなおさらその逞しさがわかって、なおのこと脳味噌が沸騰しそうだ。
逃げるのではなく、自分に掴まったことに気づけば、ローランドはなお嬉しくて細い体を引き寄せ、背中に回した手をまさぐるように本能的に動かしてしまう。
緊張するのが伝わるのを宥めるように長めのキスをして、顔を見たいと少し離れれば、思いがけず、追いかけてきたリラの唇が触れるだけのキスをローランドに与える。
触れて離れていくのを追いかけ、耐えきれずにローランドは舌を割り込ませ、本能的に咄嗟に逃げを打つリラの舌をからめ取り、こすり合わせる。
鼻から抜けていく息と一緒に漏れる甘い声と、先ほど食べたチョコレートで甘い口の中に、酔いそうになる。
抱き寄せたことで当たる胸の膨らみに触れたい、このまますぐ側にある寝台に運んで組み敷いてしまいたい。
その欲を抑えるのに、強引に理性を引き摺り出して、リラの唇を解放する。
新鮮な空気に大きく息をつきながら、体から力が抜けた様子のリラを見て、名残惜しく耳を食む。
「これ以上は、また今度だ」
耳に流し込まれた声に、リラの肌が粟立つ。
これ以上は、リラの家族からきちんと了承を得てから。リラからも、キスだけではない許しを得てから。いや、リラは素直に頷くとは思えないからと苦笑いになれば、少し冷静さも戻ってきた。
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