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お見舞い
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リラが、アレンの見舞いを許されたのは、あの日から3日後のこと。そして、あの日からリラはずっと、ローランドの家に滞在を続けている。
当然のように、リースとレイも一緒に。エルムは、リラたちの家を保つために残されていた。
一緒にいればリースがリラの魔力を「食事」にしていることも知るところとなるわけで、ローランドは不快感を顕にしたが、その結果、逆にリラの方からそんな反応に対して不興を被ることになる。
その点に関しては同感だったレイにしてみれば第三者の視点からもっと言って欲しいくらいだったが、リラの反応を見ればそれも諦めた。
このような形でしか維持できなくしたのは自分なのだと。次第に慣らしていくしかないのに、むしろこんな状況が不便で不快なのはリース自身なのに、無神経だと本気で腹を立てられれば。
返す言葉など、あるはずもない。
リースが迷惑にも不快にも思うはずがなく、むしろ歓迎している状況なのは、この際本人に知らせる必要はない。
「アレンに?」
夕食時にその話をリラが持ち出せば、男たちの眉間に皺が寄る。難しい顔をする男たちの反応は気にする様子もなく、安堵した様子でリラの顔には微笑みすら浮かんでいる。
「やっと、会いに行っていいって許可が出たの。明日から昼休みと仕事帰りにシオン兄さんの部屋に寄って会って来るわ。全部落ち着いてから自宅に帰ると言っていたから、まだ片付いていないのね」
そう簡単に片付くわけがないだろう、とは言わず、ローランドはため息をついた。
「ならば、俺も一緒に行こう」
当たり前のように言う男を、リラは不振げに見上げる。
「なぜです?見舞いに行くのに、アレンに気を使わせたくありません。ロー様は、アレンと面識がありませんよね?」
「むしろ、なぜ君1人で行かせると思えるんだ?他の男のところに、1人でなんて行かせるわけがないだろう」
しかも、相手はあのアレンディオなのだ。心中穏やかであるはずがない。
「兄もいます」
この言い合いは放っておいても妥協点はないと見てとり、リースはため息をつく。どちらの言うことももっともなのだ。
そして兄は、おそらく勝手に入れとリラとアレンを2人にするだろう。それは正直、リースにとっても避けたいことで。
ただ、先日は止むに止まれずそこに立ち入ったが、王宮になど近づきたくもない。だからこそ、出仕していないのだから。
「レイ、お前が一緒に行け。リラの言うことも副団長殿の言うことももっともだ。昼は、ライアスを誘っていけ。いいな、リラ」
有無を言わせぬ弟の家長としての言葉に、リラが不満げに頬をわずかに膨らませるが、そんなものが通用するはずもなく、無言でリースが片眉を上げて見せれば、リラは不承不承頷くしかない。
自分が同席できないことにローランドは顔をしかめながらも、自分が同行するとは言い出さなかったリースを不思議に思う。顔に出たわけではないだろうが、リースは皮肉な笑みを口元に浮かべた。
「あんな場所、近づきたくもない。あそこに毎日出仕するリラの人の好さに呆れるよ」
言い終える前に、腰を浮かしたリラが手を伸ばし、そっとリースの頬に触れる。
心地よさげに一瞬目を細め、それからそれを隠すような眼差しをリラに向ける。この家に滞在し始めてから、リラからの魔力譲渡は繋いだ手からになっている。その方法で可能であるということにローランドなどは驚いていたが、リラにしてみればずっと毎日繰り返してきた時間だ。
頬に触れた手が条件反射のように魔力を帯びるのを感じ、リースはその細い手首を掴んで離す。
「今はいらない。後にしてくれ」
「あ…ごめんなさい」
魔法を使うことも魔力を外に出すこともできないくせに、リースに対しての魔力譲渡だけは無意識にしてしまう。意識しているわけではないから所構わず。
そんなやりとりの翌日。
結局その日の昼休みは、リースに言われたことをライアスに伝えに行くことに終始してしまい。何せ、事情をある程度伝えなければいけない。しかも、途中でローランドが当たり前のようにやって来て同席するからリラの眉は情けなさそうに下がってしまう。
ライアスは、ずっと気にかけていた幼馴染みがようやく解放されたと喜んだけれど。ただ、言葉を濁して伝えられた内容には顔をしかめた。夕方、レイと行った時に、ライアスが来ても良いか本人に聞いてくれ、とリラに頼む。その状況では、まだ人と会うことを喜ばない可能性が高いから、と。
無骨な外見のライアスの、いつもと変わらない暖かさにリラが微笑めば、不機嫌な視線が向けられ、ライアスは背筋に嫌な汗が伝い。勘弁してくれ、と、リラの後ろで仁王立ちしている男を眺めるのだった。
そしてようやくアレンに会えたリラは。
レイが首根っこを捕まえ損ねるほどの勢いでアレンに駆け寄り。
まさか抱きつく!?
と、アレン本人も、レイも、そしてとりあえずその部屋に通したシオンも固まる目の前で、アレンが休んでいる寝台に両手をつき、その勢いのまま寝台脇に両膝をついてアレンの顔を下から覗き込んだ。
「アレン、ごはん、食べてる?まだ痩せたままだし…あ、でも、顔色は随分良くなったし、肌の様子も良くなったし…。でもやっぱりまだ」
「お嬢」
そのままの勢いでどんどんアレンとの距離を詰め、至近距離でアレンの様子を観察するリラに、地を這うような執事の声が背後からかかる。
「マナーがなっておりませんね」
その声には、リラと一緒に、リラの勢いにどんどん赤面を酷くしていたアレンまで背筋を伸ばして固まる。
ちら、と、恐る恐る視線だけ振り返るリラに、レイは婉然と笑って見せるが。
それが怖いのよ!と、リラは目をアレンに戻す。ただ、確かに、顔を見ることができた安心感で勢いに任せてしまった自覚はある。
ようやく一息ついたところで、レイが寝台脇に椅子を置き、そこにリラが腰を落ち着けて話し始める。
ライアスのことを聞けば、もう少し待ってほしいと言われ。せめて、もう少し元気に見える姿になってから、と。
そんなことを言うならとリラはアレンに甲斐甲斐しく食事の世話をするのだから、アレンは素直に喜べずに困惑をリラの背後の執事に向けるのだが、そちらはそちらで番犬モード。かえって緊張を深めてしまうことになり。
そして、一息ついたところで、リラは穏やかにアレンを見つめる。
「アレンに、1人で10年も、いろんなことを抱え込ませてしまった。前のように行き来をして、様子を見ていればこんなことになる前に気づけたのに。あなたへの罪悪感で、わたしの我が身かわいさで、避けてしまって」
ごめんなさい
泣きそうな声で、それでも小さく言葉にしながら、リラは痩せたアレンの手を両手で包み込み、その手に額を当てて伝える。
違う。
違う違う。と。
アレンはその手を引くけれど、リラは首を横に振るばかり。
リラは今回のことでもう1人、きちんと会って礼を言わなければいけない人がいる。兄たちを呼んでくれた、楽士の君。でもまずは、アレンに昔のように笑顔でいてほしい。
「アレン。ライに会うのが元気になってからなら、リースともその時に、会ってね?やっぱり王宮は、嫌いなんですって。あなたがいても」
アレンは、その言葉にそうだろうな、と思う。ここにリラが幽閉でもされない限り、あの男は足を踏み入れたがらないだろう。先日のあれは、兄弟が揃ったからこその強行手段。
アレンの手を握ったまま、リラは寂しそうに笑った。
「レイ」
背後にいる執事に声をかける。
昨日、リースは言ったのだ。あそこに毎日出仕するリラの人の好さには呆れる、と。
リースもリラも、王宮を避けたい理由があることを、承知しているからこその言葉。
「リースが、わたしを忘れているなんて、嘘ね。嘘をついてまで拒絶したいほど、リースに嫌われちゃった…」
思い巡らし、レイも同じ言葉に思い至る。
そして、リースへの仕置きが足りないと爪が食い込むほどに拳を握り、リラの背中に声をかけようとしたところで、先手を打つようにリラが立ち上がった。
「アレン。シオン兄さんに、あなたに帰りがけに少し魔力を補給してやるように言われているの。いい?」
え、と、絶句しながらも、アレンは反射で茫然と頷く。
自分でできないから、アレンが持っていってね?と笑って言われ、触れるだけの、魔力譲渡のための口づけをされる。寝台に座ったまま、アレンはその心地よい魔力が体の中の毒を凌駕していくのを暖かく感じていた。
当然のように、リースとレイも一緒に。エルムは、リラたちの家を保つために残されていた。
一緒にいればリースがリラの魔力を「食事」にしていることも知るところとなるわけで、ローランドは不快感を顕にしたが、その結果、逆にリラの方からそんな反応に対して不興を被ることになる。
その点に関しては同感だったレイにしてみれば第三者の視点からもっと言って欲しいくらいだったが、リラの反応を見ればそれも諦めた。
このような形でしか維持できなくしたのは自分なのだと。次第に慣らしていくしかないのに、むしろこんな状況が不便で不快なのはリース自身なのに、無神経だと本気で腹を立てられれば。
返す言葉など、あるはずもない。
リースが迷惑にも不快にも思うはずがなく、むしろ歓迎している状況なのは、この際本人に知らせる必要はない。
「アレンに?」
夕食時にその話をリラが持ち出せば、男たちの眉間に皺が寄る。難しい顔をする男たちの反応は気にする様子もなく、安堵した様子でリラの顔には微笑みすら浮かんでいる。
「やっと、会いに行っていいって許可が出たの。明日から昼休みと仕事帰りにシオン兄さんの部屋に寄って会って来るわ。全部落ち着いてから自宅に帰ると言っていたから、まだ片付いていないのね」
そう簡単に片付くわけがないだろう、とは言わず、ローランドはため息をついた。
「ならば、俺も一緒に行こう」
当たり前のように言う男を、リラは不振げに見上げる。
「なぜです?見舞いに行くのに、アレンに気を使わせたくありません。ロー様は、アレンと面識がありませんよね?」
「むしろ、なぜ君1人で行かせると思えるんだ?他の男のところに、1人でなんて行かせるわけがないだろう」
しかも、相手はあのアレンディオなのだ。心中穏やかであるはずがない。
「兄もいます」
この言い合いは放っておいても妥協点はないと見てとり、リースはため息をつく。どちらの言うことももっともなのだ。
そして兄は、おそらく勝手に入れとリラとアレンを2人にするだろう。それは正直、リースにとっても避けたいことで。
ただ、先日は止むに止まれずそこに立ち入ったが、王宮になど近づきたくもない。だからこそ、出仕していないのだから。
「レイ、お前が一緒に行け。リラの言うことも副団長殿の言うことももっともだ。昼は、ライアスを誘っていけ。いいな、リラ」
有無を言わせぬ弟の家長としての言葉に、リラが不満げに頬をわずかに膨らませるが、そんなものが通用するはずもなく、無言でリースが片眉を上げて見せれば、リラは不承不承頷くしかない。
自分が同席できないことにローランドは顔をしかめながらも、自分が同行するとは言い出さなかったリースを不思議に思う。顔に出たわけではないだろうが、リースは皮肉な笑みを口元に浮かべた。
「あんな場所、近づきたくもない。あそこに毎日出仕するリラの人の好さに呆れるよ」
言い終える前に、腰を浮かしたリラが手を伸ばし、そっとリースの頬に触れる。
心地よさげに一瞬目を細め、それからそれを隠すような眼差しをリラに向ける。この家に滞在し始めてから、リラからの魔力譲渡は繋いだ手からになっている。その方法で可能であるということにローランドなどは驚いていたが、リラにしてみればずっと毎日繰り返してきた時間だ。
頬に触れた手が条件反射のように魔力を帯びるのを感じ、リースはその細い手首を掴んで離す。
「今はいらない。後にしてくれ」
「あ…ごめんなさい」
魔法を使うことも魔力を外に出すこともできないくせに、リースに対しての魔力譲渡だけは無意識にしてしまう。意識しているわけではないから所構わず。
そんなやりとりの翌日。
結局その日の昼休みは、リースに言われたことをライアスに伝えに行くことに終始してしまい。何せ、事情をある程度伝えなければいけない。しかも、途中でローランドが当たり前のようにやって来て同席するからリラの眉は情けなさそうに下がってしまう。
ライアスは、ずっと気にかけていた幼馴染みがようやく解放されたと喜んだけれど。ただ、言葉を濁して伝えられた内容には顔をしかめた。夕方、レイと行った時に、ライアスが来ても良いか本人に聞いてくれ、とリラに頼む。その状況では、まだ人と会うことを喜ばない可能性が高いから、と。
無骨な外見のライアスの、いつもと変わらない暖かさにリラが微笑めば、不機嫌な視線が向けられ、ライアスは背筋に嫌な汗が伝い。勘弁してくれ、と、リラの後ろで仁王立ちしている男を眺めるのだった。
そしてようやくアレンに会えたリラは。
レイが首根っこを捕まえ損ねるほどの勢いでアレンに駆け寄り。
まさか抱きつく!?
と、アレン本人も、レイも、そしてとりあえずその部屋に通したシオンも固まる目の前で、アレンが休んでいる寝台に両手をつき、その勢いのまま寝台脇に両膝をついてアレンの顔を下から覗き込んだ。
「アレン、ごはん、食べてる?まだ痩せたままだし…あ、でも、顔色は随分良くなったし、肌の様子も良くなったし…。でもやっぱりまだ」
「お嬢」
そのままの勢いでどんどんアレンとの距離を詰め、至近距離でアレンの様子を観察するリラに、地を這うような執事の声が背後からかかる。
「マナーがなっておりませんね」
その声には、リラと一緒に、リラの勢いにどんどん赤面を酷くしていたアレンまで背筋を伸ばして固まる。
ちら、と、恐る恐る視線だけ振り返るリラに、レイは婉然と笑って見せるが。
それが怖いのよ!と、リラは目をアレンに戻す。ただ、確かに、顔を見ることができた安心感で勢いに任せてしまった自覚はある。
ようやく一息ついたところで、レイが寝台脇に椅子を置き、そこにリラが腰を落ち着けて話し始める。
ライアスのことを聞けば、もう少し待ってほしいと言われ。せめて、もう少し元気に見える姿になってから、と。
そんなことを言うならとリラはアレンに甲斐甲斐しく食事の世話をするのだから、アレンは素直に喜べずに困惑をリラの背後の執事に向けるのだが、そちらはそちらで番犬モード。かえって緊張を深めてしまうことになり。
そして、一息ついたところで、リラは穏やかにアレンを見つめる。
「アレンに、1人で10年も、いろんなことを抱え込ませてしまった。前のように行き来をして、様子を見ていればこんなことになる前に気づけたのに。あなたへの罪悪感で、わたしの我が身かわいさで、避けてしまって」
ごめんなさい
泣きそうな声で、それでも小さく言葉にしながら、リラは痩せたアレンの手を両手で包み込み、その手に額を当てて伝える。
違う。
違う違う。と。
アレンはその手を引くけれど、リラは首を横に振るばかり。
リラは今回のことでもう1人、きちんと会って礼を言わなければいけない人がいる。兄たちを呼んでくれた、楽士の君。でもまずは、アレンに昔のように笑顔でいてほしい。
「アレン。ライに会うのが元気になってからなら、リースともその時に、会ってね?やっぱり王宮は、嫌いなんですって。あなたがいても」
アレンは、その言葉にそうだろうな、と思う。ここにリラが幽閉でもされない限り、あの男は足を踏み入れたがらないだろう。先日のあれは、兄弟が揃ったからこその強行手段。
アレンの手を握ったまま、リラは寂しそうに笑った。
「レイ」
背後にいる執事に声をかける。
昨日、リースは言ったのだ。あそこに毎日出仕するリラの人の好さには呆れる、と。
リースもリラも、王宮を避けたい理由があることを、承知しているからこその言葉。
「リースが、わたしを忘れているなんて、嘘ね。嘘をついてまで拒絶したいほど、リースに嫌われちゃった…」
思い巡らし、レイも同じ言葉に思い至る。
そして、リースへの仕置きが足りないと爪が食い込むほどに拳を握り、リラの背中に声をかけようとしたところで、先手を打つようにリラが立ち上がった。
「アレン。シオン兄さんに、あなたに帰りがけに少し魔力を補給してやるように言われているの。いい?」
え、と、絶句しながらも、アレンは反射で茫然と頷く。
自分でできないから、アレンが持っていってね?と笑って言われ、触れるだけの、魔力譲渡のための口づけをされる。寝台に座ったまま、アレンはその心地よい魔力が体の中の毒を凌駕していくのを暖かく感じていた。
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