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騎士団長からの呼び出しだったのは、知りませんでした
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午前中。朝イチで昨日の夜処理を済ませた書類の山をあるいは決裁にまわし、あるいは同僚への回覧にまわし、あるいは関連部署にながし、あるいは外部機関に依頼をし…といういつも通りの仕事を片付けてしまい、ようやくお茶を淹れて一息つこうとしたところで、背後に気配を感じた。
振り返ってリラは、微妙な顔になる。それを見下ろして、おいおい、と、主任であるスレインは苦笑いを浮かべた。
「そんな顔するなよ」
「主任のせいで、この間家に帰ってから怒られたんで。も少し逆恨みします」
「自分で逆恨みって言ってるし。なに、また執事サンに怒られたの?」
子どもの頃ならいざ知らず、いい大人が執事…つまり使用人にそうそう怒られねぇよなぁ、とは思っていても口にしない。どうやら、本気レベルで叱られているらしいのは、一緒に働くこの何年もの、その言葉の端々から窺い知れる。
「連絡しなかったことと、迎えを呼ばなかったことと、普段着で行ったこと、怒られました。普段着よりちゃんとした服だったのに。仕事に来ている服だったから」
「いや、お前の不服なとこ、そこかよ」
ぶはっと、吹き出しながらつい突っ込んでしまう。これは、怒りがいのないお嬢さんだろうなぁ、と常日頃からその執事殿には同情を禁じ得ないのだが、話を聞く限り、そっとしておく。執事殿の、お嬢様への執着は、若干ではなく度を超している。
「その上、なんだか目立つ方のお手を煩わせた上に昨日も会ってしまいましたし」
「ああ、そうだった」
それで思い出す。
スレインは手にしていた書類の束をリラにほい、と差し出した。この子のいいところは、差し出されたものにとりあえず、手を出してしまうところだよな、と。自覚はあるようだが、直らない。
「は?」
「これ、ちょっと騎士団長のところに届けて来てくれ。急ぎの決裁文書だ。あそこは、置いてくるといつになるか分からないから、決裁もらって持ち帰って来て欲しいんだけど」
「はあ」
でも、なんでわたし?という顔をして書類を見ていたリラは、深く考えずに立ち上がる。
だって、急ぎだと言うし。
「ちょうど手が空いたの見つけるなんて、人使いの荒い主任は、目ざといですよね」
「あー、そうだなぁ」
まさか、リラの手が空くタイミングを見計らっていたとは、言わない。決裁文書を回すと連絡をしたら、なぜか、団長からリラの指名があったのは、もちろん伏せておく。
歳の頃合いから行けば、リラとあのローランド副団長であればちょうど良いのだけれど。ただ、と、少し遠い目をする。
ローランドが本気であるのなら、まあ、苦労もすればいろいろと、壁も多かろうと。幼なじみからひどい時には狂犬扱いをされる執事やら、何気に過保護なこの部署の同僚たちやら、その幼なじみやら。家族との関係は聞いたことはないけれど、そこもそれなりに、だろうし。
きれいな姿勢で、女性とは思えない速さで歩いていくリラを見送ってから、ま、かわいい部下が幸せになるなら、手は貸すけど、と、裏を返せばそうでないなら仕事を増やしてでも邪魔をする気満々なのは、本人も自覚はない。
騎士棟に入ると、その中の緊張感がやはり違うな、と思いながら、入り口に立つ当番騎士に聞かれるまま、行き先を告げる。当たり前のように、一方の騎士が流れる動作でリラの手から荷物である書類を受け取って案内をしてくれるその所作に、一瞬ぽかん、としてから慌ててリラはその後に続いた。
この扱い、やっぱり慣れない。同じように働くのだから、そのようにどこかのご令嬢に対するようにしなくて良いのに。とも思う。まあこれが、完全な部外者が持ち込んだものであれば、安全性の確認を含めて一旦預かるのだろうが、身内とも言える他部署の人間でも、それかな、とふと思う。
思っていることが顔に出るとよく言われるが、また出ていたらしい。案内していた若い騎士が、不意にくすくすと笑った。
「ああ、失礼しました。あまりに手にとるように考えていることが透けて見えて。さすがに、あなたを疑いはしませんよ。シェフィールド嬢。女性に持たせたままでは、格好がつかないでしょう?」
にっこりと笑って、片目まで瞑って見せる若い騎士に、リラははあ、と、間の抜けた返事をしてしまう。だって、この人、いや、この子とあえて言いたい。わりと結構、年下よね?と。
さすが騎士様。偏見かもしれないけど。女性の扱いに慣れていらっしゃる。というか、言葉を選ばないなら、女たらし。という感想は、当然ここ2日ほどのローランドの評価にも直結するわけだけれど。
「…あの、本当になにを考えているのかとても分かりやすいので、そんな目で見ないでいただけますか?誤解です」
「あら、なにも言ってませんよ?」
平然と返せば、困ったような顔で笑われた。まあきっと、この距離感が、部署は違えど「同僚」なのだろうな、とリラは勝手に納得をする。実際は、リラ自身は人見知りがわりと酷いのになぜか、周囲からは妙に気安く話しかけやすい雰囲気をもつという、人見知りな本人にしてみれば嬉しくない特性の結果なのだけれど。
ユラン、と名乗ったその若い騎士は、最後に人好きのする笑顔をリラに向けてから、その大きな扉をたたき、表情を引き締めて取り次いでくれた。
中にいる別の騎士に手にしていた書類を手渡して去ろうとする背中に、リラはやわらかく声をかける。それは、人見知り、とかは関係なく、当たり前の挨拶だから抵抗なくできること。
「ユラン様、ありがとうございました」
振り返り、きれいな仕草で返礼をしたユランを見送ってから、中から促されるままにリラは団長の部屋に入った。
決裁文書と思われるものの山に埋もれたとても大柄な人が、立ち上がった。その動きで山が崩れるのではないかと不安になる。その脇にローランドがいるのを認め、じゃっかんの居心地悪さを浮かべながらリラは腰を負った。
「ハッブルズ騎士団長、お忙しいところ申し訳ありません。急ぎの決裁があり、お持ちしました。お時間をいただき、ご確認いただけないでしょうか」
「連絡は受けている。わざわざ持って来てもらって申し訳ない」
預かってくれている騎士に手を伸ばす騎士団長との間に入り、リラは一旦、その文書を受け取ることにした。説明を加えよう、と。が、その途端に視線を感じて目をあげれば、ローランドの蜂蜜のような目がまたこちらを見ている。
なんだろうな、と首を傾げながら、気にするのをやめて団長に歩み寄るのだが。
ディラン・ハッブルズ騎士団長と、その場にいた若い騎士にしてみれば、思わず、詐欺だろ!と叫びたくなる状況だった。騙されるな、とも。ユランに声をかけた時も、今、書類を受け取ろうとした時も、こうして歩み寄ろうとしている時も。リラが他の者に(男性限定なのか、他の者なら全てなのかは、謎だけれど)話しかけ、接触しようとすると背筋が凍るような威嚇する視線を向けてくるやつが、一瞬でそれを消し去るって。ないだろう!と。
「団長様?」
「ああ、いや」
怖いから、やなんだよな、こいつ、と思いつつも、実は面白がってもいるディランは、気を取り直して歩み寄って来たリラを見下ろした。ほっそりと華奢な様子を見て、目を細める。程よい距離感で、全く媚を見せない視線は、まっすぐにこちらに向けられている。不思議そうな目をしていて、正直、心配になるほどに、考えが透けて見える。
だが、そんな観察をされているとは知らないリラは、気にしないことにして本題に入った。
「お時間をいただいて申し訳ありません。簡単に説明をさせていただいた上でご覧いただいた方が効率が良いかと思いますので」
前置きをして、概略だけを説明する。書類作成の段階である程度関わっていた案件で、だからこそ説明ができる。そうでなければ、人にうまく説明するのが苦手なリラでは要領良く説明するために、一度自分が理解する時間が必要になってしまう。まあ、だから主任は自分に来させたんだろうな、と、そこでも納得をした。違うのだけれど。
説明に、分かりやすいな、とつい引き込まれながら、ディランはくぎりがついたところで頷く。
「さすが、シオンの妹。頭の回転が違う」
「兄をご存知なのですか?」
不意に出て来た次兄の名に、さすがに驚いてリラは顔を上げる。
「学園でも、ここでも、同期だ」
魔法省にいる次兄を思い浮かべ、リラはほんのりと笑みを浮かべる。その笑顔にほう、と思った後で、寒気がしたディランはその原因を、もう、見たくはなかった。
「わたしと引き合いに出されては、兄が怒りそうですが。ありがとうございます。持ち帰るように言われているものでどこか邪魔にならない場所で待たせていただいてもよろしいでしょうか」
「あ、ああ。そちらにかけていてくれ。ローランド、すぐに終わらせるから、リラ嬢の話し相手をしていてくれ」
「そんな!お邪魔になるので!」
「承知しました。すぐにと言わず、しっかりと見てください」
リラの断りにかぶせるように言ってきた部下の言葉に、ディランはただただ、目を逸らす。これ、急がないといけない書類なんだが。本当に早くやれば怖い気がしてしかたなかった。
振り返ってリラは、微妙な顔になる。それを見下ろして、おいおい、と、主任であるスレインは苦笑いを浮かべた。
「そんな顔するなよ」
「主任のせいで、この間家に帰ってから怒られたんで。も少し逆恨みします」
「自分で逆恨みって言ってるし。なに、また執事サンに怒られたの?」
子どもの頃ならいざ知らず、いい大人が執事…つまり使用人にそうそう怒られねぇよなぁ、とは思っていても口にしない。どうやら、本気レベルで叱られているらしいのは、一緒に働くこの何年もの、その言葉の端々から窺い知れる。
「連絡しなかったことと、迎えを呼ばなかったことと、普段着で行ったこと、怒られました。普段着よりちゃんとした服だったのに。仕事に来ている服だったから」
「いや、お前の不服なとこ、そこかよ」
ぶはっと、吹き出しながらつい突っ込んでしまう。これは、怒りがいのないお嬢さんだろうなぁ、と常日頃からその執事殿には同情を禁じ得ないのだが、話を聞く限り、そっとしておく。執事殿の、お嬢様への執着は、若干ではなく度を超している。
「その上、なんだか目立つ方のお手を煩わせた上に昨日も会ってしまいましたし」
「ああ、そうだった」
それで思い出す。
スレインは手にしていた書類の束をリラにほい、と差し出した。この子のいいところは、差し出されたものにとりあえず、手を出してしまうところだよな、と。自覚はあるようだが、直らない。
「は?」
「これ、ちょっと騎士団長のところに届けて来てくれ。急ぎの決裁文書だ。あそこは、置いてくるといつになるか分からないから、決裁もらって持ち帰って来て欲しいんだけど」
「はあ」
でも、なんでわたし?という顔をして書類を見ていたリラは、深く考えずに立ち上がる。
だって、急ぎだと言うし。
「ちょうど手が空いたの見つけるなんて、人使いの荒い主任は、目ざといですよね」
「あー、そうだなぁ」
まさか、リラの手が空くタイミングを見計らっていたとは、言わない。決裁文書を回すと連絡をしたら、なぜか、団長からリラの指名があったのは、もちろん伏せておく。
歳の頃合いから行けば、リラとあのローランド副団長であればちょうど良いのだけれど。ただ、と、少し遠い目をする。
ローランドが本気であるのなら、まあ、苦労もすればいろいろと、壁も多かろうと。幼なじみからひどい時には狂犬扱いをされる執事やら、何気に過保護なこの部署の同僚たちやら、その幼なじみやら。家族との関係は聞いたことはないけれど、そこもそれなりに、だろうし。
きれいな姿勢で、女性とは思えない速さで歩いていくリラを見送ってから、ま、かわいい部下が幸せになるなら、手は貸すけど、と、裏を返せばそうでないなら仕事を増やしてでも邪魔をする気満々なのは、本人も自覚はない。
騎士棟に入ると、その中の緊張感がやはり違うな、と思いながら、入り口に立つ当番騎士に聞かれるまま、行き先を告げる。当たり前のように、一方の騎士が流れる動作でリラの手から荷物である書類を受け取って案内をしてくれるその所作に、一瞬ぽかん、としてから慌ててリラはその後に続いた。
この扱い、やっぱり慣れない。同じように働くのだから、そのようにどこかのご令嬢に対するようにしなくて良いのに。とも思う。まあこれが、完全な部外者が持ち込んだものであれば、安全性の確認を含めて一旦預かるのだろうが、身内とも言える他部署の人間でも、それかな、とふと思う。
思っていることが顔に出るとよく言われるが、また出ていたらしい。案内していた若い騎士が、不意にくすくすと笑った。
「ああ、失礼しました。あまりに手にとるように考えていることが透けて見えて。さすがに、あなたを疑いはしませんよ。シェフィールド嬢。女性に持たせたままでは、格好がつかないでしょう?」
にっこりと笑って、片目まで瞑って見せる若い騎士に、リラははあ、と、間の抜けた返事をしてしまう。だって、この人、いや、この子とあえて言いたい。わりと結構、年下よね?と。
さすが騎士様。偏見かもしれないけど。女性の扱いに慣れていらっしゃる。というか、言葉を選ばないなら、女たらし。という感想は、当然ここ2日ほどのローランドの評価にも直結するわけだけれど。
「…あの、本当になにを考えているのかとても分かりやすいので、そんな目で見ないでいただけますか?誤解です」
「あら、なにも言ってませんよ?」
平然と返せば、困ったような顔で笑われた。まあきっと、この距離感が、部署は違えど「同僚」なのだろうな、とリラは勝手に納得をする。実際は、リラ自身は人見知りがわりと酷いのになぜか、周囲からは妙に気安く話しかけやすい雰囲気をもつという、人見知りな本人にしてみれば嬉しくない特性の結果なのだけれど。
ユラン、と名乗ったその若い騎士は、最後に人好きのする笑顔をリラに向けてから、その大きな扉をたたき、表情を引き締めて取り次いでくれた。
中にいる別の騎士に手にしていた書類を手渡して去ろうとする背中に、リラはやわらかく声をかける。それは、人見知り、とかは関係なく、当たり前の挨拶だから抵抗なくできること。
「ユラン様、ありがとうございました」
振り返り、きれいな仕草で返礼をしたユランを見送ってから、中から促されるままにリラは団長の部屋に入った。
決裁文書と思われるものの山に埋もれたとても大柄な人が、立ち上がった。その動きで山が崩れるのではないかと不安になる。その脇にローランドがいるのを認め、じゃっかんの居心地悪さを浮かべながらリラは腰を負った。
「ハッブルズ騎士団長、お忙しいところ申し訳ありません。急ぎの決裁があり、お持ちしました。お時間をいただき、ご確認いただけないでしょうか」
「連絡は受けている。わざわざ持って来てもらって申し訳ない」
預かってくれている騎士に手を伸ばす騎士団長との間に入り、リラは一旦、その文書を受け取ることにした。説明を加えよう、と。が、その途端に視線を感じて目をあげれば、ローランドの蜂蜜のような目がまたこちらを見ている。
なんだろうな、と首を傾げながら、気にするのをやめて団長に歩み寄るのだが。
ディラン・ハッブルズ騎士団長と、その場にいた若い騎士にしてみれば、思わず、詐欺だろ!と叫びたくなる状況だった。騙されるな、とも。ユランに声をかけた時も、今、書類を受け取ろうとした時も、こうして歩み寄ろうとしている時も。リラが他の者に(男性限定なのか、他の者なら全てなのかは、謎だけれど)話しかけ、接触しようとすると背筋が凍るような威嚇する視線を向けてくるやつが、一瞬でそれを消し去るって。ないだろう!と。
「団長様?」
「ああ、いや」
怖いから、やなんだよな、こいつ、と思いつつも、実は面白がってもいるディランは、気を取り直して歩み寄って来たリラを見下ろした。ほっそりと華奢な様子を見て、目を細める。程よい距離感で、全く媚を見せない視線は、まっすぐにこちらに向けられている。不思議そうな目をしていて、正直、心配になるほどに、考えが透けて見える。
だが、そんな観察をされているとは知らないリラは、気にしないことにして本題に入った。
「お時間をいただいて申し訳ありません。簡単に説明をさせていただいた上でご覧いただいた方が効率が良いかと思いますので」
前置きをして、概略だけを説明する。書類作成の段階である程度関わっていた案件で、だからこそ説明ができる。そうでなければ、人にうまく説明するのが苦手なリラでは要領良く説明するために、一度自分が理解する時間が必要になってしまう。まあ、だから主任は自分に来させたんだろうな、と、そこでも納得をした。違うのだけれど。
説明に、分かりやすいな、とつい引き込まれながら、ディランはくぎりがついたところで頷く。
「さすが、シオンの妹。頭の回転が違う」
「兄をご存知なのですか?」
不意に出て来た次兄の名に、さすがに驚いてリラは顔を上げる。
「学園でも、ここでも、同期だ」
魔法省にいる次兄を思い浮かべ、リラはほんのりと笑みを浮かべる。その笑顔にほう、と思った後で、寒気がしたディランはその原因を、もう、見たくはなかった。
「わたしと引き合いに出されては、兄が怒りそうですが。ありがとうございます。持ち帰るように言われているものでどこか邪魔にならない場所で待たせていただいてもよろしいでしょうか」
「あ、ああ。そちらにかけていてくれ。ローランド、すぐに終わらせるから、リラ嬢の話し相手をしていてくれ」
「そんな!お邪魔になるので!」
「承知しました。すぐにと言わず、しっかりと見てください」
リラの断りにかぶせるように言ってきた部下の言葉に、ディランはただただ、目を逸らす。これ、急がないといけない書類なんだが。本当に早くやれば怖い気がしてしかたなかった。
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