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第1章
ステラグラン侯爵
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旅の埃を落とす前に、早々に用件は済ませようというレオボルトの考えのもと、ルーイが客人の到着を伝えれば謁見の間に国王であるレオボルト、そして宰相のヴァルトが移動していく。
それを見送り、ルーイ、ルナ、グレンの3兄弟は、呆れたように顔を見合わせた。
動こうとしない3人を振り返り、レオボルトが目を細める。
「何をしているんだ。早く来い」
「いや、行かないし」
反射的にルナはさっくりと返す。その場に同行する意味がわからない。何の立場でそこにいさせるつもりだ。
が、レオボルトは呆れたような目を向ける。
「お前、俺の護衛だろう。俺の姿が見えるところにいて当たり前だ」
それはつまり、レオボルトからもルナが常に見えるということ。
その意図を思い浮かべもせず、ルナは渋々彼らの後に従った。
「ステラグラン侯爵、サー、シルヴィエイク・フォン・ステラグラン様」
呼び込む仰々しい声に、レオボルトが僅かに眉を上げる。その表情の変化に気づいたルナは、そっと目を逸らした。本当は、面倒だから執務室で挨拶を受けて終わらせるなどと言っていたのだ。
だが、爵位を継いだ報告の謁見をそれで済ませるなど許されるはずもなく。
ルナの記憶にあるよりも、かなり鍛えたのか体格が良く、凛々しい青年が堂々とした足取りで進んでくる。
琥珀色の髪はしっかりと整えて後ろに撫でつけられ、狼のような色素の薄い蒼い目は鋭く、何の表情も浮かべていない。
「お時間をいただき感謝いたします。この度爵位を継承したため、ご報告に罷り越しました」
「遠路ご苦労。家中も落ち着かぬ中、ここまで来て良かったのか」
「一通りのことは済ませてきておりますので」
レオボルトは、侯爵…辺境伯家への疑惑を暗に匂わせるが、さらりとそれを交わし、先代と嫡男の弔いを済ませてきたと応じる。
その無表情を見下ろし、レオボルトは皮肉なものだな、と歪な可笑しさを感じた。
あのとき、小娘の挑発にいとも簡単に乗った青年は、そこから感情を見せなくなり、そして、誰にも隙を見せなくなった。こんな場所で、こんなにわかりやすい挑発に乗るはずもない。
「時に、ステラグラン卿。滞在してもらう部屋は用意しているが、なにぶん人手が少なくてな。不自由をさせるかと思うが、困ったことがあれば言ってくれ。可能な範囲で対応する」
いやいやいや。対応するの、わたしでしょ?
思わず内心でつっこみながら、ルナは目眩がしそうになる。何が悲しくて、元婚約者の面倒を見ないといけないんだ。
だが、その内心の声が聞こえたかのようにルナが控える方に一瞥をくれたレオボルトの口元が僅かに上がる。楽しんでいるのを見て、ため息をこぼした。
わたし、何かしたかなぁ…。
宰相であるヴァルト自ら、客人を案内する。滞在場所が王の居住空間である以上、仕方のないことだった。ここに入ることができるものは非常に限られている。護衛も側仕えも必要ないと誰も寄せ付けなかったレオボルトがルナをおくまで、実際ここでレオボルトは一人で生活していたのだ。
「ご存知かとは思いますが、この城に使用人は極端に少ない。閣下の滞在中のお世話をする侍女が間もなく参りますので」
閣下、と、敬称で呼べば、嫌そうに目を細める。素直に受け取れるものでもないのだろう。
「数年前から侍女を置くようになったと噂に聞いたが、本当だったのか」
「社交の場に姿を見せない貴方の耳にも入っていましたか」
どう見ても文官には見えない武官上がりのヴァルトに丁寧に言われれば、シルヴィは不機嫌そうに目を眇めた。
その様子を見ながらヴァルトはやれやれ、と、息を吐く。氷の騎士などと呼ばれていても、不機嫌や苛立ちは表に随分と簡単に出る。全ての感情を押さえられるのでなければ、それはただの扱い辛い大貴族だ。
控え目に扉を叩く音に、ヴァルトが応じてルナが入ってくる。押してきたワゴンには軽食とお茶が用意され、ルナは抵抗し疲れて諦めたのか、侍女のお仕着せに身を包んでいる。
目を伏せたまま立ち止まり、頭を下げたルナをヴァルトが紹介した。
「閣下の身の回りの世話をします。御用の際はそちらのベルでお呼びください」
「…名は」
名を知らず呼べないのは不便だと思ったのか尋ねられ、ルナは困って僅かに息を飲む。
その間に、まったく躊躇うことなく、ヴァルトが答えていた。
「ルナと申す者です。若いですが、一通りのことは全てできますのでお気軽にお申し付けを」
「ルナ…?」
鸚鵡返しに呟いた声にルナは顔が上げられない。
確かに嘘を言っても仕方ないけど、心の準備!
詰りたくても、口を開くわけにも行かない。
いつもの、好き勝手に言わせてくれる人たちではない者がいるのだから。
「なにか?」
「いや…顔を見せろ」
命じるように言われ、ためらえば疑われるとルナは途中まで顔を上げた。直接目を合わせることは不敬にあたるため、上げきらないところで目を伏せる。
シルヴィが何かいう前に、ヴァルトがようやくルナに助け舟を出した。
「何を運んできたんだ?」
「お疲れのところそのまま謁見に入られたと聞きましたので軽食とお茶を。それが済みましたら、浴場の支度も整っております」
「一通り、な…」
不意にシルヴィが呟いた。
「そういう世話も言いつければ良いのか?」
思わずきょとんとするルナを尻目に、ヴァルトの纏う空気が一気に冷え込んだ。それと裏腹にアイスブルーの瞳はゆらりと炎が揺らめくように不穏な光を孕む。
「陛下のお身内とはいえ、随分と不躾な。それとも、辺境伯家では侍女はそのような言動に晒しても差し支えないとされているので?」
不意に目の前で交わされる不穏な空気に、ルナは困った顔で顔を見比べた。
ヴァルトの怒りで、ようやく何を揶揄されたのかは察したけれど、そんな下世話なことを誰にでも口にするとは思えず。気づいてるのかいないのか知らないが、とにかく、この名前が気に食わなかったのだろうと、そこに落とし所を見つけてため息をついた。
そしらぬ顔でお茶を入れ、その目をあえて無邪気に屈託なく、ヴァルトに向ける。
「閣下はどうされますか?」
「…喉が渇いた。もらっていこう」
要するに、見張るのね?
そう思って遠い目をしてから、ヴァルトの分もお茶を注ぎ、テーブルに置いていく。
「晩餐は陛下が一緒に召し上がるそうです。終わられましたら、ベルでお呼びください。片付けにあがります。浴場へのご案内もその際にご希望でしたらいたしますので」
「そのまま、そこにいろ」
「…」
給仕しろってことかな?と思いながら、ルナは目立たぬように控える。
様子を見ながらお茶を足し、軽食を口にするシルヴィの手伝いをする。
本当は、一度この部屋から出たかったのだけれど。これもまた少ない人数で晩餐の支度をしている厨房の手伝いに行きたい。卵料理一つで姉弟喧嘩になるけれど、別に料理ができないわけではない。ちょっと、だいぶおおらかなだけだ。
ここでは自分のことは極力自分でやるのが当たり前で、そもそもが騎士上がりのヴァルトにしてみたらそれはなおさらのことで。騎士と呼ばれながら当たり前のようにルナを使うシルヴィをもの言いたげな眼差しで眺める。それを口にしないでいられるようになったのも、多少なりとも宰相という立場を理解するようになったからかもしれない。
軽食を終えれば、長旅の後のシルヴィは当然、風呂に入りたがった。
案内して出ていこうとすれば、感情の読めない声で呼び止められる。
「ルナ、背は流してもらえないのか」
「そういった業務はおこなっておりません」
「陛下だけ、か」
「陛下からそのようなお申し付けがあったこともありませんが」
思わずすっぱりと切り返せば、何が面白くないのか、ふん、と不愉快そうに鼻を鳴らされた。
「その気にもなれないということか」
大概失礼なことを言われている気はするが、その気になられても困るし、自分もそう思う。むしろ、その気になる人間の趣味を疑う。
ただ、さすがに言われっぱなしに苛ついて、思わずにっこりと微笑んでいた。
いや、すぐに気づいて、侍女らしい控え目な視線の向きと微笑みに変えて見せたけれど。
「閣下は感情が表に出ないと噂を聞いておりましたが。負の感情が随分と、わかりやすくていらっしゃる」
「!!」
言い返されると思っていなかったのか、そもそも言い返されることに慣れていないのか。
驚いて目を見開いたシルヴィに、ルナは一礼して踵を返した。
それを見送り、ルーイ、ルナ、グレンの3兄弟は、呆れたように顔を見合わせた。
動こうとしない3人を振り返り、レオボルトが目を細める。
「何をしているんだ。早く来い」
「いや、行かないし」
反射的にルナはさっくりと返す。その場に同行する意味がわからない。何の立場でそこにいさせるつもりだ。
が、レオボルトは呆れたような目を向ける。
「お前、俺の護衛だろう。俺の姿が見えるところにいて当たり前だ」
それはつまり、レオボルトからもルナが常に見えるということ。
その意図を思い浮かべもせず、ルナは渋々彼らの後に従った。
「ステラグラン侯爵、サー、シルヴィエイク・フォン・ステラグラン様」
呼び込む仰々しい声に、レオボルトが僅かに眉を上げる。その表情の変化に気づいたルナは、そっと目を逸らした。本当は、面倒だから執務室で挨拶を受けて終わらせるなどと言っていたのだ。
だが、爵位を継いだ報告の謁見をそれで済ませるなど許されるはずもなく。
ルナの記憶にあるよりも、かなり鍛えたのか体格が良く、凛々しい青年が堂々とした足取りで進んでくる。
琥珀色の髪はしっかりと整えて後ろに撫でつけられ、狼のような色素の薄い蒼い目は鋭く、何の表情も浮かべていない。
「お時間をいただき感謝いたします。この度爵位を継承したため、ご報告に罷り越しました」
「遠路ご苦労。家中も落ち着かぬ中、ここまで来て良かったのか」
「一通りのことは済ませてきておりますので」
レオボルトは、侯爵…辺境伯家への疑惑を暗に匂わせるが、さらりとそれを交わし、先代と嫡男の弔いを済ませてきたと応じる。
その無表情を見下ろし、レオボルトは皮肉なものだな、と歪な可笑しさを感じた。
あのとき、小娘の挑発にいとも簡単に乗った青年は、そこから感情を見せなくなり、そして、誰にも隙を見せなくなった。こんな場所で、こんなにわかりやすい挑発に乗るはずもない。
「時に、ステラグラン卿。滞在してもらう部屋は用意しているが、なにぶん人手が少なくてな。不自由をさせるかと思うが、困ったことがあれば言ってくれ。可能な範囲で対応する」
いやいやいや。対応するの、わたしでしょ?
思わず内心でつっこみながら、ルナは目眩がしそうになる。何が悲しくて、元婚約者の面倒を見ないといけないんだ。
だが、その内心の声が聞こえたかのようにルナが控える方に一瞥をくれたレオボルトの口元が僅かに上がる。楽しんでいるのを見て、ため息をこぼした。
わたし、何かしたかなぁ…。
宰相であるヴァルト自ら、客人を案内する。滞在場所が王の居住空間である以上、仕方のないことだった。ここに入ることができるものは非常に限られている。護衛も側仕えも必要ないと誰も寄せ付けなかったレオボルトがルナをおくまで、実際ここでレオボルトは一人で生活していたのだ。
「ご存知かとは思いますが、この城に使用人は極端に少ない。閣下の滞在中のお世話をする侍女が間もなく参りますので」
閣下、と、敬称で呼べば、嫌そうに目を細める。素直に受け取れるものでもないのだろう。
「数年前から侍女を置くようになったと噂に聞いたが、本当だったのか」
「社交の場に姿を見せない貴方の耳にも入っていましたか」
どう見ても文官には見えない武官上がりのヴァルトに丁寧に言われれば、シルヴィは不機嫌そうに目を眇めた。
その様子を見ながらヴァルトはやれやれ、と、息を吐く。氷の騎士などと呼ばれていても、不機嫌や苛立ちは表に随分と簡単に出る。全ての感情を押さえられるのでなければ、それはただの扱い辛い大貴族だ。
控え目に扉を叩く音に、ヴァルトが応じてルナが入ってくる。押してきたワゴンには軽食とお茶が用意され、ルナは抵抗し疲れて諦めたのか、侍女のお仕着せに身を包んでいる。
目を伏せたまま立ち止まり、頭を下げたルナをヴァルトが紹介した。
「閣下の身の回りの世話をします。御用の際はそちらのベルでお呼びください」
「…名は」
名を知らず呼べないのは不便だと思ったのか尋ねられ、ルナは困って僅かに息を飲む。
その間に、まったく躊躇うことなく、ヴァルトが答えていた。
「ルナと申す者です。若いですが、一通りのことは全てできますのでお気軽にお申し付けを」
「ルナ…?」
鸚鵡返しに呟いた声にルナは顔が上げられない。
確かに嘘を言っても仕方ないけど、心の準備!
詰りたくても、口を開くわけにも行かない。
いつもの、好き勝手に言わせてくれる人たちではない者がいるのだから。
「なにか?」
「いや…顔を見せろ」
命じるように言われ、ためらえば疑われるとルナは途中まで顔を上げた。直接目を合わせることは不敬にあたるため、上げきらないところで目を伏せる。
シルヴィが何かいう前に、ヴァルトがようやくルナに助け舟を出した。
「何を運んできたんだ?」
「お疲れのところそのまま謁見に入られたと聞きましたので軽食とお茶を。それが済みましたら、浴場の支度も整っております」
「一通り、な…」
不意にシルヴィが呟いた。
「そういう世話も言いつければ良いのか?」
思わずきょとんとするルナを尻目に、ヴァルトの纏う空気が一気に冷え込んだ。それと裏腹にアイスブルーの瞳はゆらりと炎が揺らめくように不穏な光を孕む。
「陛下のお身内とはいえ、随分と不躾な。それとも、辺境伯家では侍女はそのような言動に晒しても差し支えないとされているので?」
不意に目の前で交わされる不穏な空気に、ルナは困った顔で顔を見比べた。
ヴァルトの怒りで、ようやく何を揶揄されたのかは察したけれど、そんな下世話なことを誰にでも口にするとは思えず。気づいてるのかいないのか知らないが、とにかく、この名前が気に食わなかったのだろうと、そこに落とし所を見つけてため息をついた。
そしらぬ顔でお茶を入れ、その目をあえて無邪気に屈託なく、ヴァルトに向ける。
「閣下はどうされますか?」
「…喉が渇いた。もらっていこう」
要するに、見張るのね?
そう思って遠い目をしてから、ヴァルトの分もお茶を注ぎ、テーブルに置いていく。
「晩餐は陛下が一緒に召し上がるそうです。終わられましたら、ベルでお呼びください。片付けにあがります。浴場へのご案内もその際にご希望でしたらいたしますので」
「そのまま、そこにいろ」
「…」
給仕しろってことかな?と思いながら、ルナは目立たぬように控える。
様子を見ながらお茶を足し、軽食を口にするシルヴィの手伝いをする。
本当は、一度この部屋から出たかったのだけれど。これもまた少ない人数で晩餐の支度をしている厨房の手伝いに行きたい。卵料理一つで姉弟喧嘩になるけれど、別に料理ができないわけではない。ちょっと、だいぶおおらかなだけだ。
ここでは自分のことは極力自分でやるのが当たり前で、そもそもが騎士上がりのヴァルトにしてみたらそれはなおさらのことで。騎士と呼ばれながら当たり前のようにルナを使うシルヴィをもの言いたげな眼差しで眺める。それを口にしないでいられるようになったのも、多少なりとも宰相という立場を理解するようになったからかもしれない。
軽食を終えれば、長旅の後のシルヴィは当然、風呂に入りたがった。
案内して出ていこうとすれば、感情の読めない声で呼び止められる。
「ルナ、背は流してもらえないのか」
「そういった業務はおこなっておりません」
「陛下だけ、か」
「陛下からそのようなお申し付けがあったこともありませんが」
思わずすっぱりと切り返せば、何が面白くないのか、ふん、と不愉快そうに鼻を鳴らされた。
「その気にもなれないということか」
大概失礼なことを言われている気はするが、その気になられても困るし、自分もそう思う。むしろ、その気になる人間の趣味を疑う。
ただ、さすがに言われっぱなしに苛ついて、思わずにっこりと微笑んでいた。
いや、すぐに気づいて、侍女らしい控え目な視線の向きと微笑みに変えて見せたけれど。
「閣下は感情が表に出ないと噂を聞いておりましたが。負の感情が随分と、わかりやすくていらっしゃる」
「!!」
言い返されると思っていなかったのか、そもそも言い返されることに慣れていないのか。
驚いて目を見開いたシルヴィに、ルナは一礼して踵を返した。
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