無責任でいいから

「責任?とってくださらなくて結構です」
 没落伯爵家の令嬢セシリア・ノードはたまたま助けた少年から、責任を取って君と結婚する、と言われる。が。責任を取ってもらうほどの怪我でもなく、そもそも望んでいないのに責任とか、嫌がらせ、としか思えない。長年、家族から醜い容貌だと言われ続けたセシリアにしてみれば、とにかくそっとしておいて欲しくてすっぱりと断るが、すると相手の少年が絶望的な顔をする。
「わたしの容貌で責任と言われても、嫌悪感を与えるよな。すまない」
 と、どこからどう見ても物語から出てきたような美しい容貌の人に謝罪されても意味がわからない。
 それが、あまり表に出てこない第一王子とわかり、厳しく叱責を受けたセシリアは、そのまま家から追い出される。
 一つだけ、持って出ることを許そうと言われ、ずっと近くにいてくれた侍従のアダンだけを連れて。
 セシリアに仕えるばかりに、このまま家に残すことに危惧を覚えたから。アダンは喜ぶけれど、少しだけ顔を曇らせる。
「シア様がわたしだけ連れて出たと聞けば、兄上が烈火の如く荒れそうですが」
「お兄様は…そうね。でも、いつお耳に入ることか」



 厄介払いを終えた伯爵家に、責任ではなく、感謝も伝えたいからと訪れた使者に「我が家への気遣いをいただけるのであれば、末娘が殿下に恋心を抱いております。どうか受け入れていただければ」と、伯爵は溺愛する娘を差し出そうとする。
 そのことで、伯爵家が不興を買ったことは、もう関係のないことなので無責任と言われようと、知りません。


 厄介な家からようやく解放された令嬢は、自由に生きたい。のだけど。「アダンも、わたしのことは放っておいて自由に生きていいのよ?」といえば、なぜか叱られ。
 そっとしておいてくれない人たちを追い払ってくれるから。本当は、アダンがいてくれて、よかったのだけれど。


 そうして今日も、セシリアはささやかな自由を満喫…したい。
24h.ポイント 0pt
0
小説 194,333 位 / 194,333件 恋愛 57,811 位 / 57,811件

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

[仮]シエラ・レイストン公爵令嬢は時期皇帝(幼なじみ)から逃げ切ってスロ―ライフを送りたい!!(←これ大事!!)

キル。
恋愛
「シエラ・レイストン公爵令嬢!貴様との婚約を破棄する!!」 そう叫んだのはこの国の第一王子。その傍らには男爵令嬢が王子にしなだれかかっている。 公爵令嬢 (うへぇ~やばいね。これはなんか痛いもの見せられちゃったよ) 皇帝あらわる。 「シエラ!俺の妃になってくれ!」 ……シエラは逃げきれるのか?? ――――――――――――― ……なにが!? ってかんじですよね? 雑な説明になってしまいすみません!!初めての投稿なので、至らぬ点も多いと思いますが、よろしくお願いします!! すみません!内容はうん、あの呼んでくださればわかります笑 シエラは逃げ切れるのか?笑 気楽に呼んで下されば幸いです!

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

【完結】ああ……婚約破棄なんて計画するんじゃなかった

岡崎 剛柔
恋愛
【あらすじ】 「シンシア・バートン。今日この場を借りてお前に告げる。お前との婚約は破棄だ。もちろん異論は認めない。お前はそれほどの重罪を犯したのだから」  シンシア・バートンは、父親が勝手に決めた伯爵令息のアール・ホリックに公衆の面前で婚約破棄される。  そしてシンシアが平然としていると、そこにシンシアの実妹であるソフィアが現れた。  アールはシンシアと婚約破棄した理由として、シンシアが婚約していながら別の男と逢瀬をしていたのが理由だと大広間に集まっていた貴族たちに説明した。  それだけではない。  アールはシンシアが不貞を働いていたことを証明する証人を呼んだり、そんなシンシアに嫌気が差してソフィアと新たに婚約することを宣言するなど好き勝手なことを始めた。  だが、一方の婚約破棄をされたシンシアは動じなかった。  そう、シンシアは驚きも悲しみもせずにまったく平然としていた。  なぜなら、この婚約破棄の騒動の裏には……。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

処理中です...