貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと

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うわっ、過去の嫌な感情を思い出した。

さっ封印封印、封印しましょっ。気持ちを切り替えて楽しい昼飯タイムとしよう。

ぼっち飯だけど…別に寂しくないもんねー。



「はあ、今日も暑いなー…アイス食べたい~」

なんて言いながらいつものように空き教室を求め、ランチボックス片手にふらふらと学園をさ迷う。


「今日も美術教室空いてるかな」



あれからエルとは会っていない。そもそもクラスも違うし帰り道も方向が真逆な為、まじで会わない見かけない。

それでも取り巻きになった最初の頃はなんとか頑張ってエルといようとした。だってこの学園に来たのはエルの為。エルに大きな借りが出来てしまったから、エルの側にいようとした。

エルという人間を取り巻くひとりとして。

それも取り巻きの階級があるとしたら一番下っ端レベルの働きをオレはこなした。

エルのスケジュールをエルより先に把握し、飲み物やおやつを事前に用意したり、椅子を引いたり、ちょいと妄想激しめのファンからエルをガードしたり。

とにかく取り巻きとして徹した。

だけどそんな風に頑張れば頑張る程、エルは不機嫌になっていく。


「ファヌ、どうして取り巻き連中とばかりつるむの?なんでいつも僕の隣じゃなく、後ろばかりを歩くの?」

「別に取り巻き連中と仲良くつるんでいる訳じゃない。お前が過ごしやすいよう段取りを組んでるんだよ。打ち合わせだ、打ち合わせ。

あと歩く場所についてはだな、今週の割り当てが時計でいう1時のポイントだったんだよ。正しく言うと、お前の斜め後ろな?」


「…?何でファヌがそんな事するの?」

「そりゃするだろ」

「ファヌ…僕達16歳だよ?ガードマンごっことかやめなよ。…どうしてもしたいならお祖父様の領地に戻った時にでも…」

「いやオレお前の取り巻きのひとりだからっ!遊んでる訳じゃないの!取り巻いてんのっ、お・ま・えをっ」

誰がガードマンごっこだ、馬鹿にしやがって!

………いやでもプロでもなんでもないから、オレ達のやっている事はただの「ごっこ」なのかもしれない。


「本当に意味が分からないんだけど」


と、困惑と少しの怒りを混ぜ込んだような声に少しだけイラついた。

そこは分かってくれよって。

オレみたいなのがいきなりお前の隣でのんきに友達面なんてしてみろ。取り巻き、いや全校生徒から大ブーイングといやがらせの嵐だ。

実際そうだったのだから。

田舎者のオレは頭では分かっていながらも、なーんにも分かっていなかった。
転入して早々、オレはいつも通りに気安くエルに接していた。

でもそれが大きな間違いないだったのだ。

エルは公爵家の次期後継者。
この国では王族の次に権力を持ち、敬われるべき一族の一人。

正直引く程の友情格差をこの学園に来てようやく思い知った。

そして周囲からの嫉妬や悪意をおもいきり肌で感じ、こりゃやばいわと友達から取り巻きへとすぐさま軌道修正したのだ。


「そんな事して、何かファヌに得でもあるの?」

「…は…?」

「僕を取り巻く人間なんてそれしか考えてないから」

「な…」


何言ってんだ?こいつ。







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