貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと

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腹も満たされた昼下がり。

中庭のベンチに凭れ、真っ青な青空にぷかぷかと浮かぶ白い雲をぼんやりと眺める。



そしてひたすら悶々と考える。
オレには何があって何がないのか。

それは外見や内面の良さだったり、何か人より優れた能力や才能だったり…。

…あれ?オレなんも持ってなくない?だって、外見も内面も平凡だもの。
優れた能力や才能?これに至っては平凡を下回ってもはや足らないもの。

しかも爵位もないぎりっぎりの貴族の家の末っ子だ。

家柄も頼れない。



「…これじゃあまるでモテる気がしない。オレは一生孤独な人生を一人歩むのだろうか…」

「はあ?」

隣からの呆れた声の主をキッと睨む。

「黙れエル。お前にオレの気持ちは分からない」

「まだはあ?としか言ってないけど…急になんだよ。ごまつぶみたいな目して」

「ごっ、ごまつぶだと?!失礼なっ」

「ごめんな?」

自分では涼しげな切れ長の目で睨み付けてやったと思っていたのにごまつぶだと??!

「で?モテたいって?」

「…っ…。そうだよ、モテたいさ」

「なんで?」

「なんでってそりゃ…男なら誰だってモテたいだろう?」

「ふぅん?」

はい出ました。余裕の「ふぅん?」が。

そりゃあお前はこの国唯一の公爵家の跡取りだし?美形でスタイルも頭も良いしで?逆に持ってないものなんてないのだろう。

実際女子だけじゃなく男からもモテるしな。

いいな…オレだってモテたい。可愛い子とラブラブ(死語)したい。

「うざ…この高位貴族め。エルなんて滅してしまえ」

「ごめんな?完璧がすぎちゃって」

「図にのるな。お前の性格クソだからな?この猫かぶりやろう」

「その猫かぶりの取り巻きで得してるのは誰だっけ?」

「ぐ…ぐぬぬっ、」



面白そうに何も言い返せないオレの顔を見て、色素の薄い髪をふわふわと揺らす。

形の良い紅い唇も、すっとした綺麗な鼻も、涼しげな切れ長の目だって全部こいつのモノだ。

じりじりと穏やかではなくなってきた眩しい日差しに、この真っ白で滑らかな肌が焼けてしまわないか心配になる。


本当に心配になる位、儚げでいて神々しい。



そんな風に考えていると、申し訳なさそうな声でエルが呟いた。



「ごめんな?そんなに見つめられても…さすがにお前にはキス出来ない」


「前言撤回。つか誰がキスしてくれって頼んだ?こちらこそごめんな?だわ。そんでもってさっきから何回謝るの?」


全く…儚げで神々しいとか本当見た目だけだった。人は見かけによらんってこいつの事だ。お前のUV事情を心配して損した。


「なあエル、そろそろ暑くなってきたから君は食堂でお昼を食べなさい」

「ファヌは?」

あっ、ファヌってオレの事ね。

「いやオレは適当に涼しいとこ見つけて弁当食べる。ここのセレブリティ食堂めちゃ高いし」

空き教室とか探そうっと。

「じゃあオレの弁当は?」

「VIPはVIP席でVIPな飯を食べろ。そして立派に経済回しなさいよ」
 
「え~」

「え~じゃない。前からお前の弁当作るのプレッシャーだったんだから。もしお前が食中毒にでもなったら公爵様に殺されちゃうよ?うんオレがね」

まじでオレの弁当のせいでエルに何かあったら国の大損失だ。

「ちゃんとした衛生管理の元で作られた栄養満点なお昼ごはんをありがたーく頂いてきな」

そしてシェフに感謝するんだぞ。エルは育ちはいいからな。オレの弁当を食べる時もちゃんとお祈りして食べてるもんな。偉い偉い。

「昨日だってお前、具合悪そうな顔して…あれ?」

「…昨日?」

「いや、元気、だったな」

「うん目茶苦茶元気」

「うん、そうだ、元気に取り巻きの1人とデート楽しんでたもんね」

「うん、まあまあ気持ちよかった」

「なにがっ?!!」

「えっ、聞く?」

「えっ聞かねえよ?!絶対聞かねえからっ。君、唐突に破廉恥だよ?」

反射的になにがっ?!!とか聞いちゃったけど。…えーっと、確か昨日のデートのお相手はユリアンヌ嬢…ああ巨乳のあの子か…羨ましいな、なんて。



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