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ごめんなさい
しおりを挟む「おーいっ、ニナッ!こっちだ!こっちっ」
あっ、あれはアティカス!やっぱり探してくれていたんだ!
駆け寄りながら人化して、アティカスの元へ。
「アティカスー!!ごめんさい!!はぁっはぁっ…調子に乗っちゃった!」
少しだけ息の上がったオレの背中を、優しく撫でてくれるアティカス。やっ、優しい…!!
「心配したぞ…まあ、無理もないよな。長距離の馬車移動に、緊張状態が続いていたんだろうから。どうだ?少しはリフレッシュ出来たのか?」
「うん!気持ち良かった!あ…でも」
「どうした?何かあったのか?」
「うん…オレ、多分入っちゃいけないとこに入っちゃったかも…」
あの美しくも洗練された庭で、可憐に微笑みながら佇むルォラン様とその従者を思い出す。
「まさか…」
「うん…後宮…」
ふぅ…と息をつき、悩ましげな顔でオレを見つめるアティカス。
やっぱだめだったよな。きっとオレの存在は、後宮のお姫様達を戸惑わせるだけだ。最悪、トラブルが起きてもおかしくない。
「…そうか、あの短時間であの距離まで…ニナなら可能か…。
いや、なにもかも言わなかった俺が悪い。すまなかった、何事もなかったか?」
「ううん、オレが悪い…ごめんねアティカス。あと…何事もなかったと言いたい所なんだけど、少しだけルォラン様って言うお姫様とお話しちゃった…」
「ルォラン様…ああ、確かリビニヌアの…何か言われたか?」
「ううん。とっても綺麗で優しい人だった。お姫様達からしたら、オレみたいなのがのこのこと後宮に立ち入って無神経でしかないだろうに…」
しかも獣姿で…うぅ…自己嫌悪。考えれば考える程、オレって最低。
「ニナ…、仕方ないさ。ここは広すぎるからな。それにこんなに反省してるし、問題もなかったんだ。次からは気をつけよう」
「…はい、気をつけます。あの…さ、やっぱりオレが王子の婚約者だって事、城中知れ渡っているものなの?」
少し思案するような顔をして、
「まあ…そうだな」
と答えたアティカス。
だよな…あんな騒ぎにもなったし、騎士や従者、メイドも沢山いた。そもそも王子もオレの事を隠す気ゼロだったし…。
「気になるか?」
「う、ううん!大丈夫!」
とにかく今は切り替えよう。アティカスも心配そうにしているし、王子の様子も知りたい。
「そうか…何か心配事があれば言うんだぞ?…それでは殿下の元へ向かおうか」
「はい!宜しくお願いします!」
もう一度、ごめんなさいの意味も込めてぺこり頭を下げたオレに、ははっとアティカスが笑ってくれた。
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