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触りますか?

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「ニナさん、こちらも食べてみて?」

「はっはい!」

あの後すぐに朝食が運ばれてきた。

いかにも高級で上質な素材で作られただろう丸いテーブルに、王様と王妃様とオレで座る。

左を向けば王様。右を向けば王妃様。
初めはめちゃくちゃ緊張した。

けれど、お腹がMAXに減っていたオレは目の前に置かれた、それはまあ美味しそうな料理に飛びつきそうに…なった。…けど、王様と王妃様の前なのでゆっくりと頂いている。

せっかく王子から教わったマナーだからな。
それにしてもうんまいっ。


「そういえば…ルイの魔力なんか食べて、ニナさんの身体は大丈夫なの?」

王子とよく似たお顔の王妃様が、心配そうにオレを見る。

「えっと、大丈夫みたいです。身体も元気だし、オレの魔力量にもなんら変化はないみたいです」

昨日は黒い魔力で身体が驚いちゃったみたいだけど、いつもは多分…美味しくて幸せなんだと思う。
あんまり記憶がないけども。

ただ欲を言えば、食べた魔力がちょこっとだけ増えたらいいのに…とは思う。
ほらオレ、本当に魔力量が少ない弱小ホワイトタヌキだからさ。

一体あの魔力はどこ行ってんの?って感じだよ。全く身体に残らずスッキリ消化されてる感はある。


「…それなら良かったわ…けれど無理はしないでね」

「はい」

ふうっと  ため息をつき、物憂げな顔をする王妃様。

「あなたに何かあったらあの子が…きっとルイは壊れてしまうわ」

「え…」

「昨日のルイを見ていれば分かるの。蕩けるような甘さであなたに接し、親子喧嘩すら面倒臭がるルイが、あなたの為に陛下に刃を向けるのだもの。基本あの子ったら無表情というか気だるげというか…あんなにデレデレした顔も初めて見たし…」

「でっ…デレデレ…ですか…」

デレデレ??王子に全く似合わない言葉だけど…王妃様からするとそう見えるのかな?

そして少し照れてしまう…壊れてしまうは大袈裟だと思うけど、王子に甘やかされて大事にされているとは思うから。



あ、王子に会いたいなぁ。



「ルイにはニナさんしかいないわ。分かったでしょう?あなた」

厳しい表情をした王妃様が、向かい側に座る王様に問う。

「…分かっている。…ただ」

「はっ、はい」

思わず返事をしてしまうオレ。

「何をするにも色々とタイミングがあるだろう。今後の事はルイが目覚め落ち着いたら、改めて話し合いの場を作ろう」

それって、少しは認めて貰えたって事かな?

「…ありがとうございます」

「ふふっ、良かったわ。そうだ、朝食を終えたらルイの様子を見に行ってあげて欲しいの。眠っていてもルイの事だから、ニナさんの存在を感じたいと思っているとはずだわ」

「あ…はいっ!もちろんですっ、オレも会いたいです」

「あと…ニナさん、ニナさんは人化でいる時と、ホワイトタヌキの姿でいる時、どちらが楽なの?
やはり人化をしていては魔力を消費してしまうのでしょう?
意識を失って倒れてしまった時もホワイトタヌキ?の姿に戻っていたし…病み上がりだもの、楽なスタイルでいいのよ?ねっ?」


??そりゃまあ…オレの真の姿はホワイトタヌキだから、人化してる時より魔獣姿の方が楽チンだけども。


でも何だろう?
王妃様がめちゃくちゃキラキラした目でオレを見る。

あれ?これ人化解いた方が良い?
もしかして王妃様、もふもふしたいの?

「じゃあ、ホワイトタヌキに戻っても良いですか?」

「もっもちろん!!!ねえ、あなた」

急に話をふられた王様は、コホンと咳払いし「ああ」と小さく呟いた。

それではと、ほぽんとあっという間にホワイトタヌキの姿に戻るオレ。

「あらあらまあまあ…人間の姿のニナさんも素敵だけど…やはりホワイトタヌキの姿も恐ろしく愛らしいわね…」

王妃様の白くて綺麗な手がオレのもふもふに触れる。

ああ…良いですよ、もっと強めのもふりで。気持ちいいのでわしゃわしゃしてください。


「そっ、それはニナにたいして失礼な事ではないのか?いっ、犬や猫ではないのだから…」

「まあ…!そうよね、あなた…。私ったらつい…ごめんなさい!ニナさん」

いや、良いのですよ。甘やかされるのが本業ですからオレ。

ごめんなさいと言いつつも、もふもふから離さない王妃様の手に頭をスリスリとすりつけた。

「いっいいの?ニナさん」

オレはコクンと頷いてみせた。そしてきゃっきゃと王妃様にひとしきり撫でてもらった後、ちらりと王様を見る。

ごくりと喉を鳴らし、何か伺うような横目でオレを見ているじゃないか。…ナルホド。

オレはふわもこボディを王様に向けた。そして首を傾け、きゅるるんおめめで王様を見つめる。


「…っっっ!!」






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