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謝罪
しおりを挟む「…王様、…王様はオレが王子の魔力を食べてしまう事を気味悪いと思いませんか?」
だってオレ、王様達人間からしたら王子の貴重な魔力を食べちゃっている訳で…。
表情を曇らせるオレに、王様が静かに口を開いた。
「この国には、あらゆる能力を持った者達がいるだろう。だが希に存在する魔力持ちの王族の能力や力には、到底及ばないと言われている。
それがどういう事か分かるだろうか?」
現段階で王子以上の能力者がこの国にはいない。
それは…。
「誰も息子を…ルイを止められないという事だ」
子供の頃から、異常な程の魔力量を持て余し苦しんできた王子。
「息子の魔力暴走は、城の魔術団が束でかかっても止める事が出来ない。
自身で魔力をコントロールするしかないのだ。幼い身で…身体が焦げ付く程の苦しみは、拷問に近かっただろう。
それなのに…途方もない孤独や苦しさを抱えた息子に、私は何もしてやれなかった」
表情にこそ出さないが、伝わってくる王様の王子への思い。
苦い後悔が今も尚、王様自身を責め続けているのもしれない。
「…王子はきっと王様や王妃様、そしてロイズ殿下の事を大切に思っています。
お城に着くまでの馬車の中、王子がオレに王様達のお話を沢山話してくれたんです。その目はとても懐かしむように、そして優しくて…。
だから、その、オレが言える立場じゃないけど…王様、あまり自分を責めないでください」
少しでも俺の緊張を和らげようと、馬車の中で色々と話してくれた王子。
語られる王様や王妃様、ロイズ殿下との思い出話はどれも暖かいものだった。王子は王様の事を何を考えているか分からないし、厳しい所もあるが尊敬出来る人だと言っていた。
「王子は…背負ってしまったモノや痛みや苦しみを…誰かのせいにする人じゃないから…」
うっ…何だか知ったような事を偉そうに言っちゃった。
でも…王様が王子の事で自分を責めてるなんて知ったら、きっと王子も悲しむと思うんだ…。
ふぅっと一息つく王様に、肩がびくつく。
「…あのように安らいだ表情を見たのはどれ位か…いや、初めてかもしれないな」
「え…」
「ニナと呼んでも?」
「は、はい」
「ニナ、これまでの無礼を許して欲しい。本当にすまなかった。一番に礼を言わねばならなかったのに」
王様がこちらに向き直り、頭を下げる。
いやいやいやいやっ!!!王様がそんな簡単に頭なんか下げていいの???だめじゃないっ??しかも相手オレだよ??
「やっやめてください!!もっ、もしオレ、っじゃない僕が人間で王様の立場だったらって思うと、王様の気持ちが痛い程分かりますからっ!」
もし自分が人間で、めちゃくちゃ愛してる可愛い子供がいて、その子がいきなり魔獣を結婚相手に連れてきたらそりゃオレだって戸惑うっ!!
しかも王族と、最近まで穴蔵に住んでいたホワイトタヌキだよ?
「あらニナさんっ!!目覚めたのね??」
突然ドアが開きそちらに目をやると、王妃様が戻ってきたようだ。何となく助かった!
「おっ王妃様」
「ニナさん、どこも痛くない?苦しくない?まあっ…あなた!まさかまたニナさんに失礼な事を??!!ニナさん涙目じゃないっ!!」
王子とよく似た顔の王妃様が、目を吊り上げて王様に詰め寄ろうとする。
美形が怒ると本当に怖い。
というかこの涙目は、王様が突然頭を下げるから驚いちゃったからなんですっ!!
「ちっ違いますぅっ!!王様はオ…僕に謝ってくれたんです!!仲直りしていたんです!ねっ!王様!そうですよねっ」
ねっ!て必死に王様に問うと、王様は柔らかい表情で少しだけ、ほんの僅かだけど微笑んでいた。
「…オレでいい」
「え?」
「自分の事をオレと呼ぶのだろう?」
「…失礼じゃないですか?」
「良い」
「あ、ありがとうございます…」
オレが何度も言い間違えているからかな?…と少しだけ恥ずかしがっていると、王妃様も私にもそうしてと言ってくれた。
有難い…。
でも、サラリーマンというか人間だった頃は、ちゃんと敬語とか話せていたはずなんだけどなぁ…?と思い出そうとするけど思い出せない。
うん。せめて、敬語だけはちゃんと使えるようになろう!!
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