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贈り物
しおりを挟む「…後宮も解散させたそうだな?」
「兄上の協力のもと、あちら側にも損がないように話しは全てついています。解散させて間もないので、まだ後宮に住まう者もいますが」
「子はどうするのだ」
「どうするも何もすでに世継ぎの心配はない筈です。義姉上も2人目をご懐妊されたそうですし、生まれてくる子供もおそらく男でしょう。
それに子を成すのが王族の義務だとするならば、それ以上に私はこの国に貢献しております」
「あらやだルイ。また勝手に魔力で性別なんか見て…失礼だわ。本当に男ってデリカシーもなければロマンもないんだから」
王妃様凄い…。この現状を把握して空気を変えようとしているのか、それとも天然さんなのか…険悪なトークの中に平然とグイグイ入っていく。
王様も王子も表情を変えずに、淡々と言い合っているのも怖いし…。
「世継ぎがどうとかそういう事を言っているのではない。お前は我が子を腕に抱きたいとは思わないのか?」
「私には必要ありません。そしてこれからも一番大切なモノを見失う事はないでしょう。ですのでこういった質問はこれで最後にして頂きたいですね」
「魔獣との婚姻、それを周囲や民が許すと思うか?」
「私の性格をご存知でしょう?」
「脅しか?」
「私が王族として相応しくないと言われるのであれば、身を引くしかないという事です」
「ふん、執着はこの魔獣にしかないという訳か」
「先程から私のニナに、魔獣魔獣と不愉快なのですが?」
「なぜだ?魔獣に間違いないのだろう?そこに拘るお前こそがこの者を見下しているんじゃないのか?」
「見下しているのならここには連れてきてないでしょう。…まあ既に違った意味で連れて来た事を後悔していますが」
やばいやばいやばい。険悪が止まらない!何か、何か気の利いた言葉を!!
すると王妃様が申し訳なさそうに耳打ちしてきた。
「ニナさん、気分を害させてしまってごめんなさいね。こうなったら私にもどうしようも出来なくて…」
やれやれといった感じで首を横に振るう。
よく…あるのかな?この二人の言い合いとかって…。
王子が大きく溜め息をつく。
「これ以上ここに居ても、お互いに気分は良くないでしょう。今日は失礼します。ニナ、行こう」
「えっ…でも…」
何とも言えない顔で苦笑いをしてみせる王子。オレにごめんねと気遣っているようだ。
そんなの何も気の利いた事も言えずに、ただオロオロしているだけだったオレの方が謝りたい。
「…はい」
今は引いた方が良さそうだよな。
オレは椅子から立ち上がり、ぺこりとお辞儀する。そしてアイテムボックスから可愛らしく包装された袋を取り出す。
「あっ、あの王妃様…良かったら、これを飲んでみてください」
なにかしら?と目をキラキラと輝かせながら包みを広げていく。
「まあ、綺麗な色…」
出てきた硝子瓶の中にはトロリとした黄金色の液体が入っている。
「喘息の治療に効果があると言われている植物を、ドライにしてフルーツと一緒にシロップにしたものです。
…気休めかもしれないけど…良かったら飲んでみてください」
王子から王妃様が喘息持ちだと聞いて、作ってみた甘いハーブティのような物。
ククタリにも相談して、喘息を和らげるであろうハーブをいくつかブレンドしてみた。可愛らしい包装やリボンはララウが用意してくれたモノだ。
まあ魔獣が作ったモノを口にしてくれるか分からないけど、これはオレの気持ちだ。
「母上、ニナの薬はよく効くととても人気なんですよ。ニナの癒しの力も込められていますからね」
オレの頭を優しく撫でながら王子が言う。
「そうそう、薬を作っていると聞いていたわ。凄いのね、このようなモノも作れるなんて!
ありがとうニナさん、大切に頂くわね」
「えっと、ハーブは王子のお屋敷の天才庭師が育てたモノなので、香りも味も最高だと思います!」
オレは両手をぎゅっと握り、怪しい飲み物じゃない事を必死に伝える。
「ふふふ、天才庭師?それは楽しみね」
朗らかに笑い
「あの…お身体、大事にして下さい」
「ええ、ありがとう。まだこちらにはいるのでしょう?またゆっくりお茶でもしながらお話ししたいわ」
「…はい、喜んで」
王妃さまの朗らかな微笑みと、優しい言葉にホッとする。
渡せて良かった。
オレは勇気を出して王様に向き直る。
「あ、あの、王様にも…」
「魔獣にしては媚びるのが上手いな」
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