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はじめまして

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「…つ…ついに、着いてしまった…」

少しだけ乗り慣れてきた馬車の窓から外を伺う。

ようやく辿り着いてしまった王都。

屋敷から1日かかるか、かからない程の近いようで遠い距離。オレは疲労感よりも緊張感に包まれていた。

賑やかな人の流れに合わせ、ゆるやかな速度で走る馬車の中、オレは疲労感よりも緊張感に包まれていた。

「疲れた?大丈夫?」

「疲れより、緊張の方がやばいよ王子」

「大丈夫。父は何考えてるか分からない人だけど、母はまあ…それなりに普通の人だから」


ナニソレ、全くだいじょばない。


実は王妃様、持病の喘息が悪化して王様と一緒に城を離れていたらしい。

普段は王都より空気の綺麗な土地でご静養されているらしいんだけど、今回はオレに会うためにお城へ戻ってきてくれたんだって。


以前オレがお城でお世話になった時も、お二人はお城にいなかったんだ。
オレの為にわざわざお城に戻ってもらって、何だか申し訳ないよね。



「ニナ、俺がついてるから大丈夫だよ」


ぐるぐると頭を悩ませていると、そっと肩を抱き寄せられる。

「王子…」

王子の肩にコテンと頭を預け、目を閉じる。
王子の良い匂いと、暖かいぬくもりが伝わって心地良い。

「うん、大丈夫だよね」



どうか、どーか、色々と失敗しませんよーにっ!!







そして。





「あの、はじめまして、ニナと申しますっ」



用意されていた椅子の前で、深々のお辞儀をする。

テーブルには豪華な料理が沢山並べられているけど、今日ばっかりは美味しそうー涎でるぅっひやっほーい!!とは思えない。

「ふふっ、まあまあなんて可愛らしいのかしら~どうぞ座って。ええっと、女の子のようだけど男の子で良いのよね?」

「はっ、はい!男の子ですっ!」

「長距離の馬車移動は疲れたでしょう?沢山召し上がってね」

「はい、頂きます!」

想像していたよりもお若い王妃様。そんでもってめっちゃくちゃ美人。雰囲気は王子のお兄さんのロイズ殿下に似ているけど、お顔は王子って感じ。

王子と王妃様が並ぶと、とっても麗しいキョウダイのようで眩しい。

二人が揃って穏やかに見つめてくる。
ああっ、神々しいよぅ。

「そんなに硬くならなくていいよ、ニナ。これ食べてみたら?美味しいよ」

と、王子が皿にご馳走を取り分けてくれる。

「う、うん」

ナイフとフォーク…。大丈夫、あんなに練習したんだから。

横から王子の大丈夫、落ち着いてという優しい視線を感じる。
王子は食事マナーの先生でもあるからね。

王妃様が「えっ誰??本当にあのルイなの??ニセモノじゃないわよね?」とか呟いている。

よしっ。

「いただきま…」


「魔獣だそうだな」



ガチャガチャーン!!!

「は…はひっ!!」

急に響きわたる低い声に話かけられたオレは、ナイフとフォークを床に落とした。


オワタ…と呆然としているうちに、テーブルの上にはすでに新しいナイフとフォークが用意されていた。
給仕さん、さすがです…。



王妃様がにこにこして「気にしないで」と言ってくれる。ううっ。



「魔獣で男…ルイ、お前は本気なのか?」

「私が冗談で、父上や母上に誰かを紹介した事をなどあったでしょうか?
すでに兄上からも、ニナとの事はお聞きしている筈です」

「紹介…なかったわね。むしろあなたから恋人を紹介される事なんて一生ないと思っていたし、まるで今も夢を見ているようよ。ふふっ、もちろんロイからも二人の馴れ初めは聞いているわ」

感慨深そうに、にこにこと王妃様がオレを見る。
あっ、王子と同じ菫色の瞳だ。

照れちゃうなぁ。

そして…やっぱりこうなっちゃうよね。
王子が魔獣と結婚。スムーズに行くわけない。

恐ろしくてあまり見れなかった王様を、おそるおそる見る。


うん、やっぱりすっごいダンディーなイケメン。でも威圧感やばい!

目で殺されるわ!!



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