もふもふホワイトタヌキに転生したオレ~ほら第二王子、もふもふしてもいいんだゼ☆

まと

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変態だけど良いヤツ

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出来上がった薬を、次々とアイテムボックスに収納していく。

庭に敷かれたビニールシートに寝そべり一息つく。
そうそう、いつも薬作りをする時はこんな風に植物に囲まれて、ビニールシートに座って作業をしている。

ちなみに可愛らしいカラフルなチェック柄シートは、ララウが用意してくれたんだ。

一度王子が庭に工房を建てようかと言ってくれたけど、滅相もないと断った。

なによりこのスタイルが好きだからな。ククタリの育てる沢山の植物に囲まれて、自然の空気を吸いながらのんびり作る薬はとても出来が良い。

まあこれからどんどん暑くなるから対策していこうねと王子に言われている。

あっ、もちろん王子がくれたひんやりバンダナは、今日もちゃんと首に巻いているので快適です。




「ふうっ…、後はギルドに薬を卸すだけだな。いつも新鮮で立派な薬草を育ててくれてありがとう、ククタリ」

「…どういたしまして。薬、かなり多めに用意したん…ですね」

「王都に行ったら、いつこっちに戻れるか分からないからなぁ。…ていうかククタリ、オレなんかに慣れない敬語なんて使わなくていいからっていつも言ってるじゃん。本当は様付けもしないで欲しい位なんだから」

「…殿下がお戻りになっている時位、ちゃんとしなさいって、ララウが…」

「いやぁ、気にしないと思うよ?」

「…じゃあニナ様」

「ん?」

「…ニナ様が王都に行っちゃったら寂しいな…」

「クッ…ククタリッ!!」

なんて良いヤツなの?

本当にそう思ってる?って位、無表情でダルそうな顔してるけど、オレ嬉しいよ。
イケメン滅びろとか、たまーに思っててごめんね。

「…可愛くて、真っ白で、もふもふなニナ様に当分触れなくなるなんて…」

「…ククタリ、その寂しさを色んなレディで埋めるのはやめてよね」

じっとりした目付きで、ククタリの事を睨み付けてやる。
本当に罪なホワイトタヌキだよね、オレってば。

ぼんやりとした切れ長の目を、少しだけ見開くククタリ。

「…ニナ様、嫉妬??」

「お馬鹿!そんな訳あるかいっ!オレには王子という大切なフィアンセがいるんだぞ」

「フィアンセ…大変そ…」

「…やっ、やっぱりククタリもそう思う??あー!!オレ、王様や王妃様にちゃんとご挨拶出来るかな?今、お茶や食事のマナーとか色々必死で練習してるんだけどさぁ、覚える事も一杯あってくじけちゃいそうなんだよ」

オレの恥は王子の恥だからな。多少のマナー位なら覚えておかないとなんだけど…人間のマナーって本当に難しい。
練習で出来ても、本番上手くやれるか不安でたまらない。

はあ…。





「…」

視線を感じて、見上げるようにククタリを見る。

「どしたの?」

「王都で嫌な事があったり、逃げ出したくなったらおれの所に来て」

「えっ?」

「おれがニナ様を隠してあげる」

「……ふはっ、ありがとう、ククタリ。そうならないようにオレ頑張ってくるよっ」

「…うん、頑張って」

ククタリなりにオレの事を心配してくれてるんだな。
にんまりとククタリに笑いかけると、うっすらと微笑み返してくれる。
おおっ、ククタリの笑った顔!レアだっ!



「ニナ」




呼ばれて振り返ると、少し離れた場所に王子がいた。


「あっ、王子だっ。おーいっ!」

オレは嬉しくなってジャンプしながら手を振る。

「じゃあククタリ、オレ行くね」

「うん」

走り出そうとした足を止め、ククタリの方へと振り返る。

「…あのさククタリ、余計なお世話かもしれないけどさ、オレ、ククタリが女の子に恨まれて背中をグサッと刺されちゃうのは嫌だからね」


「…」

「ククタリにもララウにも…そしてここにいるみんなには幸せになって貰いたいんだよ」

「…」

「…なんて、オレの勝手な思いなんだけどさっ」

本当に勝手なんだけどさ。いつもオレに良くしてくれるみんなには幸せでいて欲しい。

それでもククタリにはククタリの考えや生き方があるから、オレの思いを押し付けちゃだめだよな。

「ニナ様…」

「って、王都に行くのは来週なのにしんみりしちゃったな!」

へへへっと笑う。

「…うん、なるべく恨まれないように生きる」

「なんだよそれ…」

まあククタリらしい返事だ。

「それじゃあね!」

「ばいばいニナ様」

今度こそ王子の元へ走り、王子の胸に抱きつく。

「王子っ、迎えに来てくれたの?」

「うん。アーネラがニナとお茶をしたいと言ってたいたよ」

「本当?じゃあ待たせちゃ悪いね…ってどうしたの?」

王子が見つめるその先を見る。

「…庭師のククタリと言ったか…」

「うん、そうだよ。どんな難しい品種でも立派に育てあげちゃうガーデニング界の奇才だよ」

変態だけど。

振り返ると、オレンジや黄色といった色鮮やかなマリーゴールドの花々に囲まれたククタリが、こちらに向かって綺麗なお辞儀をしている。

意外だ。
オレも格好良くキマるお辞儀の練習をしておこう。


「ふぅん…」

「王子、行こう?」

「ああ」

自然と、どちらともなく手を繋ぎ屋敷の中へと歩き出す。

オレはもう一度ククタリの方へと振り返り、軽く手を振る。

ククタリも小さく手を振ってくれた。

さあ、今日のおやつは何だろなあ!
ルンルンと気分良くスキップするオレ。





妖艶にクスリと微笑み、何かを呟くククタリには気付かない。




「…ニナ様、恨まれずに生きるのは無理かもしれないな…」








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