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謝罪するしかない。
しおりを挟む屋敷の前に止まった馬車を見ながら、さてどうしようかと考えていた。
屋敷で飼われているペットとして振る舞うか、人の姿でご挨拶?もしくはククタリと、こそこそ庭の仕事でもしてた方がいいのか?
そもそもオレが出ていく事はないよな。
とことこと、ククタリがいるであろう庭園に向かう。
目立たないよう、少し遠回りしながら。
あっ、あの薔薇、めちゃくちゃ蕾つけてるじゃん!
隣国から友好の証にもらった珍しい品種の苗なんだって。
さすがククタリだな。
王族の屋敷の庭を任されているだけあって、ククタリの知識も植物への愛情も人一倍だ。
近づいて、枝から伸びる青い蕾をクンクンと匂う。まだあんまり匂わないけど、青い薔薇とか神秘的で素敵だな。
「ふふっ、気を付けないとトゲが刺さってしまいますわよ。可愛らしいタヌキさん」
えっ??
人の影が近づいて来たと思い振り向いた。
「みゃ~…」
びっくりして情けない声が出る。
ふわぁ~凄く綺麗な人…。
くすくすと笑いながら、優しい表情でオレの側に立つ。
佇まいも落ち着いていて、上品で…THEお嬢様って感じ。
「…もう少しで咲きそうですわね。私の暮らす城の庭にも、沢山の薔薇が青々と蕾をつけているのですよ。これから満開に咲く日を心待ちにしておりますの」
にこりとオレに笑いかける美女。この人多分だけど…婚約者候補さんだよな?
何でこんな所に一人で?
「アーネラ様!…はあっ、はあっ、こちらにいらっしゃいましたか…ってニナ様???」
アーネラ様…やはり王子の婚約候補さんだった。
走ってきたララウがアーネラ様とオレを見て驚く。
必死でアーネラ様を探していたのか息が苦しそうだ。
「ニナ…様?」
アーネラ様が、不思議そうにオレを見る。
それはそうだよな、獣に様付けだなんて…。
とりあえず、お座りスタイル。
「はい。殿下の大切になさっている、ホワイトタヌキのニナ様にございます」
う…確かに大切にされている自覚はあるけど、どうなの?その紹介の仕方。ちょっと恥ずかしいよ。
ちらりとアーネラ様を見ると、ぱちくりと目を瞬かせてオレを見る。
「あの…ルイが…?」
「あのアーネラ様、申し訳ございません。殿下は王都の城の方にいらっしゃいまして、こちらにはいつご滞在になるかまだ分からないのです」
「そう…タイミングが悪かったようね」
長い睫毛を伏せ、小さく溜め息をつく。
そんな姿も絵になるな、なんて思った。
初めて見る、王子の婚約者候補のお嬢様。
その中でも王子の事をルイと呼ぶ。
胸がちくりちくりと痛む事に、気付かないフリをした。
「全く…急に後宮に住まう婚約者候補達を解散させたり、私との婚約話もなかった事にしたいと言い出したり…困ったものね。
ようやく婚約者候補としての話しが進み、後宮入りする様にと準備をして参りましたのに…本当に勝手だわ…」
スッと視線をこちらに移し、じっとオレを見る。
「ホワイトタヌキのニナさん??あなた何か知ってらっしゃる?」
青い目に見つめられ、ダラダラと汗が流れる。
オレってば、今更ながらに絶対イケない事を王子としちゃってたよね?
じゃれあいの延長線みたいな感じでさ。
発情期を言い訳に、王子の事襲っちゃいましたけど?
激しめにチュッチュッして、首噛んじゃいました。
……………………。
とりあえずオレは、プルプルと震えながら、お座りスタイルでおでこを地面の土にめり込ませた。
ホワイトタヌキの土下座スタイルを、アーネラ様に捧げる為に。
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