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ニナの叫び

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「婚約者候補…」

ポツリとニナが呟く。



「そう。俺の正妃候補と側妃候補が、この城の後宮に集められている」

「集められてる…」

「10名もいないよ」

「10名も…」

「16~20歳位だったかな」

「じゅっ…16~20…」

ロイズはゴクリと息を飲む。
顔は動かさずに、目だけで二人の会話を追った。

そして急に大きな声でニナが叫んだ。



「おっ…王子のエッチィッー!!!!!!!」



チィッー…チィッー…チイッー…と庭園にエコーが響く。



ロイズはまさかの言葉に一瞬ぽかんとしたが、はっと我に帰り声をかける。

「ニッニナ、どうした??」

と、おろおろとニナを気にかけながらもルイの方もちらりみる。

ルイといえば静かにニナを見つめているし、ニナはというと真っ赤になった顔を両手で隠し、ぷるぷると身悶えている。

「だっだって王子ってば色気が物凄いし?軽くちゅっちゅとじゃれあってるだけなのに、いつの間にか身体くてんくてんにされちゃう程のキスしてくるじゃん?」

ロイズナードはぎょっとした。

なっなんの話をしているのだ、この子は。私の存在忘れてる?

「そっそりゃ、そんなハーレムがあればさぁ、あれもこれも上手になっちゃうんだろうけどさぁ、エロいよ!エロ過ぎだよ…全く。
もー…王子とハーレム女子の絡み、想像しちゃったじゃん!しかも外の女子とも?…うっ、羨ましいとか思ってないんだからぁっ!」

うわーんと王子の膝に抱きつく。

「ニナ、落ち着いて」

「おっ、落ち着ける訳がないよ!オレだって男なのに、この差って何?…しかも何だか胸がツキリと痛いんだ…」

「…どうして胸が痛いの?」

「分からない。急に情緒がおかしくなっちゃった」

ニナがうるっと王子を見つめる。

「嘘、分からないのは嘘だよ…王子が他の人とあんなキスするのかと思ったら、嫌な気持ちになっちゃった。変だよね、オレ男なのに」

王子がぎゅっとニナを抱き締める。 

「変じゃないよ。俺からしたら、やっと1歩進めた感じだ」

「オレ…甘えたで寂しがりで、焼きもちやきなんてダメダメだね。王子の大事な婚約者達なのに…」

「父上や周りが勝手に決めた事だ。一度も関係を持ったこともない。それに時期が来たら、後宮も解散させようと思っているんだ。彼女達も自由にしてやりたい」

「そう…なの?」

「うん。オレは心から愛する者と、ずっと一緒にいたいと思っているしね」

ルイは優しくニナを見つめ、ニナは目をぽぉっとさせてルイを見る。

「あっあの二人とも、私の存在覚えてる?兄上はここにいるよ?」

ルイがスッとロイズを見る。
ロイズの肩がビクゥッと震え上がる。

「兄上、この度の事は許します。ですが次は気をつけてくださいね」

にこり。
ルイが、ロイズに笑顔を向ける。
…が、目は笑っていない。

「はっ…は~い…」

ニナを抱き上げ、ルイは失礼しますとその場を去った。

と思ったら、ニナだけが走って戻ってきた。

「殿下あの、これっ、この間街に行った時のお土産です!高価なモノじゃないんだけど、良かったら使ってね」

えへへっと笑って箱を渡し、ぺこりと頭を下げてルイの所へ戻っていく。

箱を開けると、美しく品のある万年筆が入っていた。よく見ると小さくロイズの名が掘られている。

顔を上げると仲良く手を繋いで歩く、二人の後ろ姿があった。

この二人の関係は、きっとゆっくり進んでいるのだろう。
大切だからこそルイはニナを待っている。焦らずゆっくりと。



ロイズは小さく息をつく。



良かったぁ…殺されないで…。





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