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城に帰ろう
しおりを挟むうわっこれおじさんに良さそう!わわっ、これも!
これなんかクロエが好きそう…オレは次から次へと気になる物を買っていった。
あまり開く事のないオレの財布(袋)が、火を噴いたゼ!
「ふぅっ、アティカスごめんね、疲れたでしょ?」
「いや、大丈夫だ。良い買い物は出来たか?」
「うん!最高だね、この市場!なんでもあるんだもん」
美味しい物や、素敵な物、何だか分からない不思議で面白い物まで色々ある。
「どこか他に寄りたい所はあるか?」
「ううん、オレもう疲れちゃった…アティカスは?」
「オレも大丈夫だ。殿下もお待ちだろうから帰ろうか」
「はーい」
待ってもらっていた馬車に乗り込み、カタンカタンと心地よい揺れに、自然と瞼が降りてくる。
楽しかったけど、はしゃぎ過ぎて疲れちゃったな。
この馬車って王子専用らしくて、身体が全く痛くならない。
穏やかな揺れが更に睡魔が襲う。
オレは向かいに座るアティカスの横に座り直し、アティカスを見つめる。
苦笑いをこぼすアティカスが「いいぞ」と一言。オレはアティカスの膝にコロンした。
あったかい。
「そっち側…なのか」
オレはアティカスのお腹に顔を埋め、ぎゅっと抱きつく。ああ。良き…。
王子のお腹もしなやかでひきしまってて、良い匂いもするし良いんだけど、アティカスは腹筋が物凄く硬い!それぞれの良さがあり安心感を与えてくれる。
気付けばぐっすり寝ていた。
「ニナ、城に着いたぞ」
「…あいっ」
やっべ、アティカスのお腹にちょびっと涎こぼしたかも。…大丈夫っぽいな、セーフ!
オレはありがとうを込めて、膝をサスサスと撫でた。
「ありがとう、アティカス」
「ああ」
にっこり笑い返してくれるアティカス。優しいな。
ゆっくり馬車を降りる。わぁ身体がフラフラだ。
そういえば、馬車を操る御者のおじさんに、市場で買ったサンドイッチを差し入れしたんだけど、とっても喜んでもらえた。今、人気のお店なんだって。
オレはその人に向かってペコリと挨拶した。
「今日は、ありがとうございました」
「こちらこそ美味しいそうなサンドイッチを頂きありがとうございました。またお会い出来る日を楽しみにしております」
優しそうなおじさんだ。本当に、また会えるといいなあ。
あかん。フラフラする。
もたれるように、アティカスの手を握る。
「うっ…」
「ごめん、いや?」
城で手繋ぎなんて恥ずかしいよな。そっと手を離そうとするとぎゅっと握り返された。
「アティカス…へへっ」
「殿下の部屋までな」
俺達は顔を見合わせて微笑みう。
「おかえり」
バシュッ。いだっ!
急にオレの手を勢いよく離し、ささっと王子に跪くアティカスをジト目で見てしまう。
もう、びっくりするじゃん。まあ上司の前だしな。
「たっ…ただいま戻りました」(すまないニナ!私もまだ命が惜しいのだ!)
「…ご苦労」
いつもの涼しい目でアティカスを見下ろしながら、オレに向かって腕を広げる。オレはその腕の中にガバッと抱きつく。
「王子ぃ!ただいま、外まで迎えに来てくれたの?
今日は、アティカスに色々連れて行ってもらったよ!」
「窓から馬車が見えたんだ。そう、よかったね。お土産は買えた?」
「うん!たっくさん買った!!」
「殿下、こちらを。ニナは自らで得た薬の報酬で買い物をしましたので…」
アティカスが王子から渡されていたお金を返している。
「そうなの?これを使っても良かったんだよ?」
「大丈夫!お金はあんまり使わないから、こういう時使わなきゃね」
「それでは殿下、私は一度、鍛錬場に顔を出して参ります。ニナもまた明日」
そそくさと、鍛錬場に行こうとするアティカス。
「あっそうだ、アティカスちょっと待って!!」
「なっなんだ?」
「少しだけ中腰になって」
オレはアティカスの後ろに周り、少し長めのキレイな金色の髪を、ポケットから取り出した茶色の革紐で結ぶ。
「うんっ!カッコいい」
「髪紐か…?」
結ばれた髪や紐を触りながら、不思議そうな顔をする。
「今日、街へ連れて行ってくれたお礼だよ。
これね頑丈な革紐で作られてて、両端に年代物の格好いいコンチョが付いてるんだよ!」
アティカスに、凄く似合うと思ってたんだよね!
「ニナ…そんなのいいのに…でもありがとうな。大切に使わせてもらうよ」
「うん!またデートしようね!!」
なんちゃってな☆
「ひぃっ…ニナ!冗談でも言っちゃいけないっ!それでは今度こそまた明日!」
と手をあげて鍛錬場の方まで走って行く。
もー冗談通じないなあ。
でも本当に、今日は楽しかったなぁ、とアティカスの背中を見送ったのだった。
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