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ギルドで稼ごう
しおりを挟む変なのと涙を拭う。
急いでおじさんの匂いを辿り、一軒のパン屋を見つけた。今日は定休日みたいだ。その2階からは人の気配と声が聞こえる。おじさんとその家族が住んでいるのだろうか。
オレはまたおじさんに会いたかったし、その家族にも会ってみたくなった。そしてあの美味しいパンが食べたかった。
そう、それにはお金がいる。
一度村から離れ、おれはその足でギルドに向かった。
緊張しながらも、村人にギルドの場所を訪ねたのだ。
どうしてこんな子供が?という顔をされたが親切に教えてくれた。
森にはよく冒険者が来る。毎日暇なオレは、こっそり聞き耳をたて、ギルドの話しを聞いていた。
オレは前世でファンタジーもののゲームはよくしていたし、その手のアニメも沢山観ていた。
この世界にもギルドが存在するとは!と興奮したものだ。
はじめてギルドに足を踏み入れた時は、ガチガチに緊張した。想像通りのガチムチで強面な男たちが沢山いて、本当にこわかった。
だが見極めの能力を使ってみると、戦闘態勢じゃないからか、オレに危害を向けそうなやつはいそうになかった。
まあその時は人間の子供の姿だからな。
何でこんな所にガキが?みたいな目では見られていたけれど。
緊張がとけないまま、受付けのセクシーなお姉さんに何か仕事はないかと聞いてみた。
オレを見たセクシーなお姉さん改めクロエは、何アンタ!超可愛いんですけど!と頭をギュッと抱きしめてきた。
大きくて柔らかい胸に抱きしめられた時、何故もっと早く人化しなかったのかと後悔した。
だが子供のオレには森でハントするのは危険すぎる、やめた方が良いと強く言われた。
それは激弱のオレには分かっていた事だったし、例え力があっても倒したりする事は出来ない。
オレはモンスターでもあるし、モンスターのことも大好きだったからだ。
もちろんモンスターも人間と一緒で、オレに危害を与えようとするモンスターもいる。だが大半は可愛いがってくれるし、仲良くしてくれる。
オレはクロエに薬草の知識がある事を伝えた。何せ森で暮らしているのだ。よく知られている薬草から、かなりレアな薬草が生えている場所まで知っている。もちろんそれは言わない。
それだったらその薬草を塗り薬にして、ここで売ったらいいと言ってくれた。
効果があれば金になる。ここは冒険者が毎日のようにキズや痛みを抱えて帰ってくる場所なんだから、と。
おれは簡単な塗り薬の作り方を教えてもらい、その塗り薬を入れる清潔な瓶をもらった。とりあえずはテストで簡単な塗り薬を作ってこいと言われたのだ。
帰る間際、
「あんた名前は??」
「名前…?名前はない」
「…。」
「名前、ないとだめ?」
「ここでモノを売るなら登録しないといけないからね」
「そう…。」
「仕方ないね…。ここは訳ありの冒険者が集う所でもあるから深くは聞かない。そう…ニナ、アンタの名前はニナってのはどう?」
「ニナ??」
「真っ白で愛らしい、冬にだけ咲く花の名前だよ。私の故郷の山で咲く花なんだ」
故郷に想いを馳せるように、優しい顔をオレに向けた。
「ニナ…。オレの名前はニナ」
「ふふっ…。気に入った?」
「うん、凄く!クロエ、ありがとう。素敵な名前をつけてくれて」
と、オレはペコリと頭を下げた。
ぱちくりと目を瞬かせたクロエはくしゃりと笑い、がんばんなっとオレの背中を軽く叩いた。
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