もふもふホワイトタヌキに転生したオレ~ほら第二王子、もふもふしてもいいんだゼ☆

まと

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ニナとパン

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「ちょっと前に、森の西側に大きな屋敷が建っただろう」

「あぁ、大きな湖があるところかい」
      
「実はちょっと訳ありらしい」

「訳あり?どこぞのお貴族様のお屋敷じゃないのかい?」

「それがそうでもないらしいんだ。まあ噂なんだけどな」

「なんだい勿体ぶって」

「いやぁ…。はっきりとは分かんねえんだが、どうもこの国の第二王子が、ご静養する為に作られた屋敷らしい」

「第二王子って…あの冷酷非道って噂の?なんでまた」

「そりゃ知らねえけどよ、とにかく森の方には近寄らない方がいいな」

「本当だねぇ…何かあって不敬罪にでも問われでもしたら大変だ…あっいらっしゃいニナ!こらっディル!
またニナに抱っこさせて!…ニナも重たいだろうにすまないねえ」

森から抜けたとある場所に、小さな村がある。
そこには仲の良い夫婦が営む、人気のパン屋があった。
焼きたてのパンの香りがふんわりと漂い、食欲を掻き立てる。

艶々に仕上がった丸いパンを、慣れた手つきで商品棚に並べていくのは妻のハンナ。

「全然大丈夫だよ。それよりおばさん、良かったらこれディルの足首に塗ってあげて。この間転んで痛めたんでしょう?」

そう言ってディルをあやしながら、薬の入った瓶をカウンターに置く。

パン屋の1人息子のディルはまだ幼く、ニナがパン屋に現れると抱っこして、と可愛く甘えてくるのだ。

そんなディルが足を痛めたと聞いて、塗り薬を作ってきたのだ。


「ニナ、いつも助かるよ。お前が作る薬は本当に良く効くからなぁ」

夫のハイツもパン屋という職業柄、腰を痛めやすい。それを知ったニナが、腰痛に効く塗り薬を作りプレゼントしたのだ。それがとてもよく効くと喜んで貰い、ニナも嬉しかった。

「ううん、オレの方こそいつも美味しいパンをありがとう。この間のおまけのパン、すっごく美味しかったな~。栗のクリームが入ったやつ」

「あれは今季の新作なんだ。店でも人気でな。
そうだ今日はイチジクのパイを入れておいてやる。これもウマいぞ!」


ニナがいつも買うのは、穀物とドライフルーツがたっぷり入ったカンパーニュだ。それにイチジクのパイと、さっき焼き上がったばかりのクルミパンを袋に入れてくれる。

「うわぁ~絶対美味しいやつじゃん!ありがとう。おじさん」

ニナはもらった袋を大事そうに両手に抱えた。

「ニナ、アンタもさっき聞いただろう?当分森には近づいちゃあいけないよ!第二王子はそれは恐ろしい方らしいから…。本当、第一王子は爽やかで穏やかな方なのにねえ」

「ふーん、そうなんだ?…うん、気をつけるよ!
それじゃあまた来るね!」

「あぁ!またな!」

「ディルもまたね!」

「ばいばい」

舌たらずの声で挨拶をしてくれる可愛らしいディル。
そのまあるい頬に、チュッとキスをして店をでる。


「そういやぁニナってどこの子なんだ?」

「さあねえ。あんまり自分の事を話さない子だから」

店に訪れた当初は驚いた。キラキラと新雪を思わせる真っ白な髪に真っ白な肌。宝石のように赤く輝く瞳。

愛らしいビスクドールのような美少年がこの店のパンを買いにきたと言うのだ。

はじめは貴族の息子かと思って緊張したが、少し話してみると何の気取りもない天真爛漫な少年だった。
今では馴染みの常連だ。
それでも。。



「謎だなあ、あいつは」







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