上 下
52 / 54

52

しおりを挟む

「それでレオノール、マリローズの事なんだけど」

「…うん」

「どうしたい?」

「…」

マリローズ。あれからどう出てくるかと思ったけど、まるで音沙汰がない。

今のところ、一国の王子がこんな大怪我を負っても尚、マリローズは罪に問われてはいないのだ。


きっと、これからランデルの父である陛下にも報告していく事にはなるだろうけど…。



「あの日、フレントと君と仲の良い…シャルティ嬢と言ったかな?その彼女から声をかけられた。君とマリローズの様子があまり良いものじゃなかったと聞いて、急いで探し回ったんだ。何だか嫌な予感がしたから」

そうだったんだ…シャルとフレント殿下には心配をかけたよね。


「少し、言い合いになったのよ。私も挑発するような事を言ったし…」

「マリローズは僕に気持ちがあったんだよね?」

「…?今更ね…誰がどう見てもそうだと思うけど…マリローズはあなたにべったりだったし」

アカデミーの生徒だったら、皆知ってたんじゃないかな?

「どうなのかな…昔から距離が変わらないから。今思い返すとそうだったかもと思う事もあるけど…ただ、最近僕とレオノールの事に口を出してきたから変だなとは思っていたんだ」

「…。ランデル、あなた少し鈍感すぎるわよ」

ふぅっ…と溜め息をつくと、じとっとした目で見つめてくるランデル。いや、これ睨まれてる??

…悪くない…推しからの睨み。


「君には言われたくない」

「うっ…」

「それに僕には君がいるから」

「…」

「誰かの想いには答えられない」

「うん…」



ドキドキとうるさい音に、頭がおかしくなりそう。

ぎゅっと目を瞑り、落ち着けと自分に言い聞かせる。

恥ずかしさと嬉しさに浮わついて、地に足がついていないようだ。

「照れてる」

「ええ…逃げ出したいわ」

「可愛い…逃げないで」

「…っ」

形の綺麗な指が私の長い髪を人束取って、静かにそこに口づける。

その仕草があまりに美しくて、神聖な儀式か何かのようで目を奪われる。




「レオノール」



そしてランデルの顔がゆっくり近付いて…今度は私の唇に優しく口づけた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!

神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう....... だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!? 全8話完結 完結保証!!

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

人の話を聞かない婚約者

夢草 蝶
恋愛
 私の婚約者は人の話を聞かない。

悪役令嬢はあらかじめ手を打つ

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしは公爵令嬢のアレクサンドラ。 どうやら悪役令嬢に転生したみたい。 でもゲーム開始したばかりなのに、ヒロインのアリスに対する攻略対象たちの好感度はMAX。 それっておかしすぎない? アルファポリス(以後敬称略)、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことが多いので、コメントなどの受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

処理中です...