39 / 54
39
しおりを挟む「レオノール、助けてくれてありがとう」
「マリローズ…大丈夫?」
ああ、可哀想に…。うるうるとパッチリとした目に涙を浮かべ、ほっとしたように微笑むマリーローズ。
暴力は振られてないみたいだけど、きっといつも私の知らないところで傷つけられて来たんだよね。
これからは私も警戒しておかないと。関わりたくないだなんて言っている場合じゃなかった。
マリローズが寄ってたかって虐められている姿なんて、もう見たくない。
「うん…大丈夫。…それよりいつこちらに戻ってきたの?水臭いわ、教えてくれたら良かったのに」
「戻ってきたのはここ最近なの。マリローズ、相変わらずの美少女であなただとすぐ分かったわ」
マリローズもランデルみたいに、ゲームの中からそのまま実写として出てきたみたいだ。
本当に、レオノールとは真反対の見た目だなぁ。
綺麗だと言われるけど、冷たくて意地悪そうなレオノールに対して、太陽のように明るく、人間や森中の動物や草花にまでも愛されてしまいそうなとっても美少女のマリローズ。
今は周囲のやっかみで虐められてしまうこともあるけれど…。
さすが主人公って感じで、キラキラと眩しい。
「なっ何を言っているの?恥ずかしいわ…でも、レオノールもとっても綺麗!身長もスラリと高くて羨ましいわ」
ふふふ、顔を赤らめて照れているマリローズが可愛い。
マリローズは少し小さめで、小動物のような雰囲気がまた庇護欲を掻き立てられちゃうんだよね。
ふとマリローズを見ると、しゅんとしてやはりなんだか元気がないみたいだ。
「マリローズ、大丈夫?やっぱり…」
「ちっ、違うの。そうじゃなくて…私、やっぱりランデルと過ごす時間を減らした方がいいわよね?」
「えっ、どうして?」
「だって、みんなが言うようにランデルにはレオノールというちゃんとした婚約者がいるのに、私なんかといると良くない噂が流れるでしょう?…ランデルはそんなの気にしなくて良いと言ってくれるけど…」
いやいやいや、そこでマリーローズが身を引いてランデルを避け出してしまうと、病みランデルが発動しちゃう!
それはレオノールにとって死につながる可能性が高くなるという事。
阻止!断固阻止せねば!!
「そうよ、周りの事なんて気にしてはだめ!あなた達は、幼い頃からずっと一緒だもの。それは私も分かっているし、ランデルもあなたが必要なのよマリローズ。
とっ、とりあえずランデルと距離を置くとかそんな事はしてはダメ!」
婚約者の私が良いって言ってんだから、頼むから周囲は黙っていて欲しい!
はぁはぁと息を切らす私に、目をぱちくりしているマリローズ。
…客観的に見ても、めちゃくちゃ取り乱してしまったのが分かる。
誰か見ていたら、明らかにレオノールがマリローズに怒鳴りつけているみたいだよね。
だって、マリローズがあまりにも恐ろしいことを言うから…。
「でもレオノール…レオノールは気にならないの?」
「え?私?」
「だってレオノールはランデルの事が好きなのでしょう?」
「…それは…」
何と言えばいいのだろう。大好きだけどそういった類の好きではないし、親同士が決めた婚約なのだといえば、面と向かかってプロポーズしてくれたランデルに失礼なのだろうか?
と、ぐるぐる考えていると。
「…そういえば、背中はもう大丈夫?」
気遣わしげな顔で、マリローズがそう聞いてきた。
「背中?うん、全く問題ないわ。運良く後遺症もないみたいだし、傷跡も今ではほとんど残っていないの」
安心させるよう、カラッと笑ってみせる。
「えっ?ほとんど残ってないって…」
「城の宮廷医師のお陰ね。事件後すぐの処置だったから…あの方達には感謝しかないわ。城で良くしてくれた人達にも」
「そう…そっかぁ…そうなんだ」
「マリローズ?」
「えっ?ううん、何でもない!本当に良かったわね、レオノール!私もずっと気にしていたの…レオノールが落ち込んでいないかって」
「マリローズ…心配してくれてありがとう」
優しい…まるで自分の事のように…。
急に太陽のような微笑みを向けられて、感動してしまう私。
「また昔の頃のように仲良くしましょう」
にこりと天使なマリローズが笑う。
「ええっもちろん」
16
お気に入りに追加
5,622
あなたにおすすめの小説
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!
神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう.......
だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!?
全8話完結 完結保証!!
悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。
ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。
小説家になろう様でも投稿しています。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
えっ、これってバッドエンドですか!?
黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。
卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。
あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!?
しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・?
よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
曰く、私は悪女らしいです
しーしび
恋愛
父の関心を得れず、継母との関係は最悪。
更には皆に愛される病弱な妹には婚約者を奪われ──
喪失感から逃げ出したベアトリーチェは新たな出会いを果たし、王都で妹達と再会する事となる。
******
よくある婚約破棄ものをちょこちょこいじったものです。
※誤字脱字報告大歓迎!
※ご都合主義、ゆる設定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる