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「レオノール、助けてくれてありがとう」

「マリローズ…大丈夫?」

ああ、可哀想に…。うるうるとパッチリとした目に涙を浮かべ、ほっとしたように微笑むマリーローズ。

暴力は振られてないみたいだけど、きっといつも私の知らないところで傷つけられて来たんだよね。

これからは私も警戒しておかないと。関わりたくないだなんて言っている場合じゃなかった。

マリローズが寄ってたかって虐められている姿なんて、もう見たくない。

「うん…大丈夫。…それよりいつこちらに戻ってきたの?水臭いわ、教えてくれたら良かったのに」

「戻ってきたのはここ最近なの。マリローズ、相変わらずの美少女であなただとすぐ分かったわ」

マリローズもランデルみたいに、ゲームの中からそのまま実写として出てきたみたいだ。


本当に、レオノールとは真反対の見た目だなぁ。

綺麗だと言われるけど、冷たくて意地悪そうなレオノールに対して、太陽のように明るく、人間や森中の動物や草花にまでも愛されてしまいそうなとっても美少女のマリローズ。

今は周囲のやっかみで虐められてしまうこともあるけれど…。
さすが主人公って感じで、キラキラと眩しい。


「なっ何を言っているの?恥ずかしいわ…でも、レオノールもとっても綺麗!身長もスラリと高くて羨ましいわ」

ふふふ、顔を赤らめて照れているマリローズが可愛い。
マリローズは少し小さめで、小動物のような雰囲気がまた庇護欲を掻き立てられちゃうんだよね。


ふとマリローズを見ると、しゅんとしてやはりなんだか元気がないみたいだ。



「マリローズ、大丈夫?やっぱり…」

「ちっ、違うの。そうじゃなくて…私、やっぱりランデルと過ごす時間を減らした方がいいわよね?」

「えっ、どうして?」

「だって、みんなが言うようにランデルにはレオノールというちゃんとした婚約者がいるのに、私なんかといると良くない噂が流れるでしょう?…ランデルはそんなの気にしなくて良いと言ってくれるけど…」

いやいやいや、そこでマリーローズが身を引いてランデルを避け出してしまうと、病みランデルが発動しちゃう!
それはレオノールにとって死につながる可能性が高くなるという事。

阻止!断固阻止せねば!!

「そうよ、周りの事なんて気にしてはだめ!あなた達は、幼い頃からずっと一緒だもの。それは私も分かっているし、ランデルもあなたが必要なのよマリローズ。
 とっ、とりあえずランデルと距離を置くとかそんな事はしてはダメ!」

婚約者の私が良いって言ってんだから、頼むから周囲は黙っていて欲しい!

はぁはぁと息を切らす私に、目をぱちくりしているマリローズ。
…客観的に見ても、めちゃくちゃ取り乱してしまったのが分かる。

誰か見ていたら、明らかにレオノールがマリローズに怒鳴りつけているみたいだよね。
だって、マリローズがあまりにも恐ろしいことを言うから…。



「でもレオノール…レオノールは気にならないの?」

「え?私?」

「だってレオノールはランデルの事が好きなのでしょう?」

「…それは…」

何と言えばいいのだろう。大好きだけどそういった類の好きではないし、親同士が決めた婚約なのだといえば、面と向かかってプロポーズしてくれたランデルに失礼なのだろうか?

と、ぐるぐる考えていると。

「…そういえば、背中はもう大丈夫?」

気遣わしげな顔で、マリローズがそう聞いてきた。

「背中?うん、全く問題ないわ。運良く後遺症もないみたいだし、傷跡も今ではほとんど残っていないの」

安心させるよう、カラッと笑ってみせる。

「えっ?ほとんど残ってないって…」

「城の宮廷医師のお陰ね。事件後すぐの処置だったから…あの方達には感謝しかないわ。城で良くしてくれた人達にも」

「そう…そっかぁ…そうなんだ」

「マリローズ?」

「えっ?ううん、何でもない!本当に良かったわね、レオノール!私もずっと気にしていたの…レオノールが落ち込んでいないかって」

「マリローズ…心配してくれてありがとう」

優しい…まるで自分の事のように…。
急に太陽のような微笑みを向けられて、感動してしまう私。



「また昔の頃のように仲良くしましょう」

にこりと天使なマリローズが笑う。



「ええっもちろん」









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