閉鎖都市

世界の真実

２５

　
それに何故なぜか息苦しさを覚え僕は、
人形の様ように硬直こうちょくしたままの彼女を抱かかえ、
立ち上がった。

前方からナビがストラムの下を潜くぐり抜け、
此方こちらに駆けて来る所だった。

少女もそれに気付き僕から離れ、
ナビを迎むかえる。

『ナビ！』

ナビはそんな少女の胸に飛び込んだ。

少女はそんなナビを、
両手でしっかり抱き止め、
安堵あんどした様ように呟つぶやく。


『大丈夫だいじょうぶだった、ナビ』

ナビは無表情に頷うなづいた。


「こちらは心配ない。
　それよりそっちは大丈夫だいじょうぶか？」


ちらりとナビがこちらを見た気がした。

少女は顔を強張こわばらせぎこちなく頷うなづく。


『うん』

そんなのんびりした会話に割って入った。


「それよりナビ囲かこまれてる。
　 速く逃げないと 」

ナビは白々しらじらしく耳を上げると、
無感情に呟つぷやいた。


「でっプランはあるの？」

僕は一瞬口ごもり提案ていあんをだす。


「とりあえず外に出て、パイプの中を
　  逃げるしかないんじゃない？ 」

見回すと車両の外を覆おおう、
透明なパイプラインの中には、
ストラムはいなかった。


「それはやめた方がいい」

ナビはあっさりとその提案ていあんを却下きゃっかした。


「パイプラインの中は、
　軟化なんかエアロジェルと言う、
　液体の様な特殊とくしゅガスで満みたされている。

　息が出来たとしても、
　すぐに酸欠さんけつで窒息ちっそくするだろう」


ナビがそう言い終わる前に、
その上空には不気味ぶきみな影が滞空たいくうしていた。